家事代行サービス「CaSy」が取り組むCX(顧客体験)。原点は「Omotenashi × Technology」

株式会社CaSyは、お客様と働き手であるスタッフとのマッチングをITで自動化した家事代行サービス「CaSy」を提供している企業です。
これまで人手をかけてマッチングを行い、サービススタートまで1~2週間程度がかかっていた高価格の家事代行サービスを、ITを活用することで手軽に、すぐ利用できるサービスへと変えたのが「CaSy」です。
今回は、同社代表取締役CEOの加茂雄一さんに、「CaSy」が誕生したきっかけやCXについてどのように考えているのかなどについて、お伺いしました。
インタビューイーについて
株式会社CaSy 代表取締役CEO 加茂雄一 様
1982年埼玉県生まれ、早稲田大学卒業。
大手監査法人に入所し公認会計士として勤務。100社以上のベンチャー企業と関わり、株式公開などを手掛ける。
仕事を続けるかたわらグロービス経営大学に入学。同大学院同期の池田裕樹氏(現・株式会社CaSy代表取締役CFO)らとビジネスプランをまとめ、2014年1月に株式会社CaSyを設立し現職。
「Omotenashi × Technology」で「大切なことを、大切にできる時間を創る。」というミッションの実現化を目指している。
「富裕層のためのサービス」を、低価格ですぐ手軽に使えるサービスへ変えた「CaSy」
まず、貴社のサービスの概要や特徴を教えてください。

弊社で提供しているのは、お客様とスタッフとのマッチングをITで自動化した家事代行サービス「CaSy」です。
個人宅のお掃除やお料理を代行する家事代行サービス自体は20年以上前から存在していました。
ただし、サービスを利用するお客様と家事を提供するスタッフのマッチングを図るためには、コーディネーターと呼ばれる営業担当者がお客様に対してヒアリングを行うなど人手をかけていました。
その結果、価格的には比較的高額となり、サービスをスタートするまでの日数もかかっていました。
当社を立ち上げる前の一般的な家事代行サービスは、依頼から実施までの間に、このような利用者からのヒアリングや適合したスタッフのマッチングなどには1~2週間程度がかかっており、「富裕層のためのサービス」という側面が強いものでした。
「CaSy」はこのような固定概念を打ち破った家事代行サービスです。
「CaSy」ではお客様と働き手であるキャスト(「CaSy」では働き手であるスタッフのことをキャストと呼んでいます)のマッチングをITで自動化することにより、大幅に省コストを実現しました。
そのため、家事代行サービスの市場平均の約半分である1時間2,190円からという価格を実現しています。
また「CaSy」では、必要なときだけ利用する「スポット」であれば、依頼当日の3時間前までの依頼が可能となっています。
妻の妊娠をきっかけに家事代行サービスを利用したことがビジネスプランの立案に繋がる。
なぜ現在の取り組みを始められたのでしょうか?

前職では公認会計士として多くのIPOに携わっていたことから、多くのベンチャー企業の社長さんとお目に掛かる機会が多くありました。
ベンチャー企業の社長さんの「こういう人を助けるために今の事業を立ち上げた」と熱く語っている姿を見ているうち、その考え方を学びたくなりグロービス経営大学院に入学したのです。
そこに在籍していたときの最後のクラスで「ビジネスプランを3カ月間で作成する」という課題に取り組んでいました。
ちょうどその頃、妻が妊娠し家事代行サービスを利用したことが「CaSy」起ち上げのきっかけでした。
家事代行サービスを利用してみてとても良いと感じましたので、「家事代行がもっと広がることで世の中の家族の笑顔が増えるのではないか」と考え、ビジネスプランとして落とし込んでいったのです。
2013年9月に提出したビジネスプランに対して評価をいただき、共働き家庭の増加や女性の労働率をあらわすM字カーブ解消の観点からも「ITによる手軽で安価な家事代行」にニーズがあると見込んだわけです。
お客様のCX(カスタマーエクスペリエンス)とキャストのCX(キャストエクスペリエンス)の両方向に取り組む。
それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在CXを上げるためにどのような取り組みをされていますか?

「CaSy」が取り組むCXには大きくわけて2つあります。
1つは、お客様の利便性や顧客体験の向上を目指す「カスタマーエクスペリエンス」です。
そのためには、依頼のしやすさ、わかりやすさや依頼の手間を削減するためにCaSy専用アプリのUI/Xの向上を図っています。
また、お客様のニーズに合致した新規プラン(お料理代行であれば、お弁当つくりおきプラン、初回限定お試しプラン、ご飯に乗せるだけプランなど)の開発を行っています。
そのほか、不在時でも利用できるようスマートロックとの連携など、他事業者との連携も行っています。
家事代行サービスは、お客様の家の中に入るサービスですので、家財道具の破損や盗難への不安を払拭するためにも、より「品質」が重要となるサービスです。
そこで研修をきっちりと行い審査を通過したキャストしかお客様宅にお伺いできないシステムを取っています。
もう1つのCXを上げるための取り組みは、働き手であるキャスト視点での利便性や顧客体験の向上を目指した「キャストエクスペリエンス」です。
そのためにはキャスト応募のしやすさを目指したCaSy専用アプリのUI/UXの向上のほか、「CaSyだから働き続けたい」と思っていただくためのエンゲージメント施策(オンラインカジーサロンの開催、キャストセッションの開催、月間キャストMVP、キャストランク)を行っています。
キャストに対しては、採用後も日報返信やトレーニングなどによるフォロー体制をとっています。
キャストが弊社で働くにあたりサービス報酬は気になるところです。
そこで、コーディネーターを無くし浮いた人件費分をサービス料金の引き下げにだけ使うだけでなく、キャストのサービス報酬(最低1時間1450円~)にも反映させています。
それに加えて、仕事に対する「やりがい」についてもキャストに提供したいと考えています。
家事代行サービスはお客様宅へ直行直帰でお伺いしますので、CaSyへの帰属意識や「一人だけでなく皆で頑張っている」という意識が少なく、「少し寂しいときがあります」という意見を聞くこともります。
その点も含め「やりがい」という部分をCaSy一丸となって進めており、トップキャスト13名が自分たちの思いを言語化した「CaSyキャストクレド~6つのギフト~」も制定しています。
お客様やキャストの声をリーンに吸い上げ、プロダクトに反映できる仕組みを向上させていきたい。
今後、どのような取り組みをしていきたいですか?

弊社は創業当時からお客様やキャストの声をリーンに吸い上げて、それをプロダクトに反映できるような仕組みを研究しながら登録ユーザー数11万人、登録キャスト数9000人まで成長することができました。
今後も、お客様やキャストが何を求めているかを恒常的に把握していき、システムプロダクトや現場のサービスに反映できる仕組みを向上させていきたいと考えています。
そのためにも、弊社ではエンジニアは外部ではなく社内に置いて、スピーディーに仕組み化できるような体制を整えています。
お客様に対する取り組みについては、「価格」と「品質」は一定の水準を実現していると思います。そのため、弊社サービスのもう1つの購買決定要因である「手間」の軽減にフォーカスしていきたいと思います。
キャストに対する取り組みについては、「サービス報酬」は一定の実現をしていますので、次は「(仕事の)やりがい」が重要だと考えています。
その具体的な実現方法については、お客様とキャスト双方の意見を取り入れながら対応していきたいですね。
「不在時に家事代行サービスを利用する」ことが当たり前になるようサービス連携を広めていきたい。
それでは最後に、加茂様が「CaSy」の事業を通じて実現したい想いについてお聞かせください。

弊社では、「大切なことを、大切にできる時間を創る。」をミッションに掲げています。
日本には約1億2000万の人がいますので、その人口の多くが1人1時間分の時間を創出することで1億時間分のご利用いただける規模にすることが「CaSy」の目標です。
2020年6月からスマートロックとの連携をスタートしてから、不在時に家事代行サービスを使われるお客様も増えてきています。
それを広めていくことで、「不在時に家事代行を依頼することが当たり前」というところまで実現できればと考えています。
編集後記
家事が苦手だったという加茂様が、たまたま利用した家事代行サービスに感銘を受け事業を立ち上げたという「CaSy」。
「富裕層のためのサービス」だった家事代行を、ITによるマッチングにより、手軽に低価格で利用できるようなサービスへと変えたことで、多くのユーザーに支持されるようになりました。
「CaSy」の成功要因には、お客様のCXを向上させているだけでなく、家事代行の働き手であるキャストのCX向上を重視していることが挙げられます。
お客様も働き手もWin-Winになる素晴らしい取り組みだと感じました。
加茂様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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