森永製菓「おかしプリント」が取り組むCX(顧客体験)戦略。顧客とともにカスタマーサクセスを生み出す

森永製菓株式会社。1899年の創業以来、日本の子供たちに栄養価のあるおいしいお菓子を届けたいという大きな夢を抱き、100年を越える歴史を積み重ねてきた企業。
今回は、新領域創造事業部 おかしプリント事業 カスタマーサクセス・マーケティング担当 平野 智也氏にお話を伺いました。
リピート利用も増え、LTVも向上している「おかしプリント」。どのようにサービスと顧客体験(CX)を作り込んでいるのでしょうか。
インタビューイーについて

森永製菓株式会社 新領域創造事業部 おかしプリント事業 カスタマーサクセス・マーケティング担当 平野智也氏。
スポーツサプリメント営業、総務・法務部門、商品開発・マーケティング部門を経て、2020年4月より現職。
ビジネスコミュニケーションに美味しい一手を
まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

【おかしプリント】は、「ビジネスコミュニケーションに、美味しい一手を」を掲げ、有名ブランドのお菓子・食品をオリジナルパッケージでデザインいただける法人様向けノベルティサービスです。
誰もが見たことのある慣れ親しんだブランドアイテム・知名度バツグンの食品をお渡しいただくことで、お客様や自社の社員など、大切な方とのコミュニケーションがより豊かになると考えております。
現在の普及状況についてお聞かせください。


ビジネスコミュニケーション全般でご活用いただいており、累計出荷数250万セット超の実績、利用企業数は1,800社を突破しました。
某大手有名ホームセンター様にて、新規出店の際のノベルティとして、ハイチュウをご活用頂くなど、リピーター企業様も増えてきています。
業種・業態・会社規模・法⼈個⼈問わず、幅広く導入いただいておりますが、法人様の利用部署について見ていくと、社外利用では、マーケティング部門・販促部門、カスタマーサクセス部門等に所属されている方のご利用が多いです。
社内利用では、全社でのご利用として、経営企画部門、人事部門、総務部門の方に、また周年記念行事、表彰等の景品としてもご愛顧頂いていおり、営業戦略部門でのご利用も多いです。
コロナの影響により、ビジネスコミュニケーションに変化は起きていますか?
【おかしプリント】は、昨年度までは「販促」「足止めツール」の用途をメインにしておりました。
ノベルティ業界の中で、このような用途での食品のご利用が伸びてきているように見ていた矢先、ウィズコロナの暮らしが始まり、主戦場である展示会は軒並み中止となり、販促イベントの機会も減りました。
さらに、在宅勤務・オンライン商談が普及し、ビジネスにおけるコミュニケーションに変化が起きています。
その中で【おかしプリント】のご利用シーンも多様化してきています。
一例をお話しますと、出社しないといけないスタッフに向けた感謝・慰労の想いを伝えるべく【おかしプリント】にメッセージを乗せて、配布をはじめる社長さん、工場長さんなどがいらっしゃいます。
オンラインが日常になったからこそ、オフラインで会うことがプレミアムな機会だと位置付けられつつあり、新たな【おかしプリント】の活用が生まれているように感じています。
こちらも最近の事例ですが、会食などが禁止になる中で【おかしプリント】のお菓子の詰め合わせをユーザーの会社やご自宅にお送られて、オンラインでユーザー会を実施されたお客様もいらっしゃるなど、オンラインと融合した取り入れ方も生まれはじめています。
特別な日や非日常を演出できるお菓子
なぜ現在の取り組みを始められましたか?

サービスを始めた理由は2つです。
一つは、当社のアンテナショップ運営の中で「同じ中身」でも「シーン」や「パッケージデザインが変わること」で特別な日・非日常を演出でき、多少価格が高くなっても、購入いただけることが見えたことです。
慣れ親しんだものが「こんな形に!?」ということで驚きが生まれ、新鮮なものに映る体験です。
つまり、スーパーやコンビニで手に取ることができる商品でありながら、新しい価値をつけることができ、より記憶に残るものとしてお届けできるという発見です。
もう一つは、発注単位が小さくとも、お客様のご要望に一つ一つお応えし、さらに小ロットでも受注可能な仕組みを整えることで、ビジネスとしても成立するという確信、信念を持てたことです。
事業立ち上げにあたっては、脈々と受け継がれている森永製菓の「各ブランドイメージをどこまで守れるか?」、森永製菓が従来より大切にしている品質を守るために「輸送時の割れ欠けをどのように防ぐか?」などの仕組みづくりを慎重に重ねました。
誰もが手軽に「オリジナル食品を作って配る」体験を届けたい
現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?

少しでも興味を持ってくださった方に、気軽にオリジナル食品を作る体験をお届けしたいという想いから「50個/1万円代」からのご注文を承っています。
4年目を迎えた今年からは、さらに幅広いお客様のお声にお答えできるよう、ラインナップにミネラルウォーター等、森永製菓以外の商品を追加しました。
ミネラルウォーターで言いますと、新製品発表会のプレス向けや来客時の飲料として導入いただいております。
お客様からすると「森永製菓」以外のお菓子や食品でも、知っている・馴染み深い『ビックネームのお菓子や食品』がラインナップにあることは嬉しいことです。
そこで、現在は、積極的に他社ブランドをラインアップに追加するよう努めています。
オリジナルデザインの自由度についてお聞かせください。

まず、我々の想いとしては、できる限りお客様の目的にあった自由なデザインを実現できるように努めています。
そのために、食品ということもあり、薬機法などに抵触しないかなどの確認はありますので、お客様には「何がOKで何がNGか?」が一目でわかる資料を事前に共有させて頂いております。
また、オリジナルデザインでありながら、元々のブランド商品であることも表現したいというお客様も多くいらっしゃいます。
そこで、各商品で多少レギュレーションは異なりますが、可能な限りロゴデータ等をご提供し、自由にお使い頂けるようにしています。
さらに、誰もが手軽にデザイン入稿できる仕組みも整えています。
オリジナルパッケージとなると、Illustrator等のデザインソフトでの作成が一般的です。
「illustratorは使用したことがないが、PowerPointなら使える!」といったお声が多いことから、【おかしプリント】では、Illustratorのテンプレート以外に、PowerPointのテンプレートも全商品で対応しております。
校正サンプルについても、1回目は無料サービスとしてお届けしており、「想定通りのデザインになるのか?」といった部分では、安心してサービスをご利用頂けるようサポートしております。
お客様のリアルな声から未来を描く
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

【おかしプリント】を立ち上げてから、お蔭様で多くの方にご利用頂いております。
この4年間、直接ご要望を頂いたり、私たちが考えうる中で、サービス改善を行って参りました。
今後は「お問い合わせを頂いてから対応するビジネス」から、もっとお客さま一人一人に着目し【お客さまのイベントにあった商品をご提案できるビジネス】として成り立つよう、お客様のリアルな声から「お菓子プリントとお客様」の未来を描いていきたいと考えています。
ビジネスコミュニケーションの中で、伝えたいメッセージを「おかしプリント」に乗せて、届けて頂く。
それによって、従業員のモチベーションUPにつながる・商談がうまくいく・新商品の宣伝がうまくいくなど、【ビジネスの成長につながっている】という実感を持てる体験をつくることを目指しています。
配ったその先にある体験を一緒につくる
それでは最後に、平野様の「おかしプリント」事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。

”知っているあのお菓子”をオリジナルパッケージにして「伝えたいメッセージ」を乗せて配布することができるのは、他社サービスでは中々できない体験だと見ています。
【おかしプリント】の役割としては、配ることがゴールではないと考えています。
配ったその先にある「ワクワク感」→「記憶に残る」→「アクションが生まれる」といった【配ったその先にある顧客体験】を一緒に生み出していくことで、お客様のお役に立つ存在であり続けたいと思っています。
さまざまなビジネスコミュニケーションの中で『美味しい一手だね』と思って頂けるよう、これからも【配ったその先にある顧客体験】を共につくっていきたいですね。
編集後記
オンラインでの打ち合わせ、商談が普及したいま【リアルで会うこと】の特別感が増しています。
その中で、母校のOB会から、医療従事者に向けた応援・感謝のメッセージが【おかしプリント】に乗せられ、配られるシーンも生まれているようです。
今後も、記憶に残るノベルティ【おかしプリント】が生み出す顧客体験から目が離せません。
平野様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
-
前の記事
小中高校生の家庭学習を応援する「まなぶてらす」が取り組むCX(顧客体験) 2020.10.10
-
次の記事
家事代行サービス「CaSy」が取り組むCX(顧客体験)。原点は「Omotenashi × Technology」 2020.10.14