サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)

株式会社ホワイトプラス

自宅にいたままクリーニング「Lenet(以下、リネット)」を主力事業とする企業。「新しい日常をつくる」をビジョンに掲げ、「テクノロジー × リアル(生活)」を軸に、生活領域に特化したサービスを展開。世の中に新しい価値を提供し、人々のライフスタイルをより豊かにすることを目指す。日本サブスクリプションビジネス大賞2019 Paidy賞。

インタビューイーについて

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_インタビューイー

株式会社ホワイトプラス 取締役 / 共同創業者 齋藤亮介氏。

慶應義塾大学経済学部卒業。大学時代にオプトにて法人営業を経験、ベンチャー立上げに参画。2007年 ネット系ベンチャー企業に入社し、WEBマーケティングの法人営業、大手金融機関のWEBコンサルティングに従事。2009年にホワイトプラスを共同創業。創業時はマーケティング全般を担当し、現在はリネットの生産開発およびカスタマーサクセス領域、HR領域を管掌。2021年に日本サブスクリプションビジネス振興会の公認サブスクアンバサダーに就任。

累計会員数45万人*のサブスク型宅配クリーニング

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_サービス概要

当社はアプリやWebから注文し、自宅にいたままクリーニングを出せる宅配クリーニングサービス「リネット」をメイン事業として展開しています。リネットと従来のクリーニングの大きな違いは、家にいながら好きな時に、取りに来てほしい日と届けてほしい日を設定するだけで、家から一歩も出ずにクリーニングが完結することです。エリアは日本全国対応。忙しい共働き世帯の30〜40代の女性を中心にたくさんのご利用をいただき、2021年には累計会員数は45万人*を突破しました。(*2021年7月時点、同社調べ)

テクノロジーでもっと顧客提供価値を高められる

なぜ現在の事業を始められましたか?

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_お届け

当社は代表の井下、取締役CTOの森谷、私の3名で2009年に創業した会社です。創業メンバーの共通の想いは「ビジネスとして儲かるだけではなく、大きなイノベーションを起こすことで、世の中が良くなったと誇れるサービスをはじめること」でした。

そこで、実際に生活するうえで不便だと感じた経験のあるものから150以上の事業アイディアを出し、その中からクリーニングに注目しました。
当時のクリーニングといえば、早朝深夜に営業している店がなく、土日は混雑しており、1人の生活者として非常に不便を感じるものでした。

とくにクリーニング業界でテクノロジーによるイノベーションが起きていないことに注目しました。
創業当時は、スマホが普及し始めた時代で、モノを買うためのネット通販はあっても、AirbnbやUber Eatsのようなサービス産業のネット化はまだ日本では実現しておらず「時間の問題で誰かがやるだろう。それなら自分たちが始めよう」と考えました。

クリーニング業界が抱えていた課題とは?

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_インタビュー風景①

クリーニング市場は1990年代をピークに右肩下がりになっています。
要因としては、服装のカジュアル化、洗濯機の性能向上など外的要因に加え、安売りや店舗拡大を中心とするクリーニング店が多く「顧客提供価値を高めていこう」という機運が起こらなかったという内的要因もあったと見ています。努力して高い品質を保っているクリーニング店も中にはありましたが、職人気質で価値を伝えていく力がないところも多かったのではないでしょうか。

このようなクリーニング業界が抱える課題に気づき「もっとテクノロジーをうまく使えば、顧客提供価値を高められるのではないか」とビジネスの可能性を感じました。

非対面だからこそ心遣いを。職人とテクノロジーは融合できる

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。CXにおける課題、気づきはどのように得たのでしょうか?

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_タグ

事業をはじめた頃、何十社ものクリーニング会社を訪問しました。
クリーニング業界の多くの先輩方から「クリーニングは接客業だ。ネット化はうまくいかない。店舗の対面接客がないと成り立たない。」と反対されました。
「クリーニングは店舗の受付が重要で、受付担当が変わるだけで売上が半分になることもあれば2倍になることもある。そのくらい接客が大事なんだ。」とアドバイスをくださる方もいました。

実際に事業をはじめると「接客」の重要性をどんどん実感していきました。たとえば、どうしても落ちないシミや汚れがあったとき「なぜ、シミが落ちなかったのか」を丁寧に説明することはとても大切です。
丁寧な説明(=接客)によってお客様は納得し、それがリピートにつながります。
接客(=お客様とのコミュニケーション)は顧客満足度に直結します。

創業後、クリーニング事業で顧客体験を高めるには「きれいに洗浄する」という品質の安定とお客様とのコミュニケーションの両方が欠かせないことを実感し、今ではこの両輪をまわすことで、顧客満足度は上がっていくことがデータからも見て取れるようになりました。

NPS®(顧客ロイヤルティを測る指標)でプラス数値**を達成

どのようなCXを上げる取り組みを実践し、どのような結果につながったのでしょうか?

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_NPS

「対面接客がないことによる漠然とした不安」この課題に対し、どのような方法で向き合っていくかが、私たちの挑戦でした。

クリーニング業界はどの企業もNPS®(顧客ロイヤルティを測る指標)がマイナスになっていることが多く、当社もマイナス15前後でした。とにかく圧倒的な顧客満足度の高いサービスにするために、品質や安心面への取り組みの強化に向けて動きました。

創業から4〜5年経った2014年頃からは、お客様の声を定量的に可視化する取り組みをはじめました。現在は当社と提携先の工場において、リアルタイムでお客様の声を見られる仕組みを採用しています。内容によってはカスタマーサクセスチームがすぐに対応できる体制にしています。

お客様の声はネガティブな内容だけではなく、ポジティブな内容も届くため、社員やスタッフのモチベーションアップにもつながっています。
また、提携先の工場は毎月1回の品質監査以外にも、日々、定量的に可視化されたお客様の声に触れる環境をつくることで、品質向上につなげています。

リネットは非対面でありながら、電話やメールでの「接客の品質」をとことん追求した結果、マイナス15前後だったNPS®(顧客ロイヤルティを測る指標)は、2021年にプラス10を達成**。
他業界と比べても「人におすすめしたいサービス」と感じる方が多いブランドに成長しました。
(**2021年12月時点、同社調べ)

リネットのお客様の2人に1人は友人や家族にリネットを口コミで勧めたことがあると回答いただいています。「累計会員数は45万人*」は、地道な接客と品質向上を続け、リピーターが増えていった結果だと思っています。

「クリーニング」と「接客」二軸の品質向上が鍵

お取り組み内容について、さらに詳しくお聞かせください。

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_品質可視化

クリーニング品質と接客品質の強化、改善はずっと続いています。
定量的には「キレイさ」「シワのなさ」「ニオイのなさ」を5段階評価***の数値をもとにクリーニング品質の可視化し、改善を重ねます。
(***クリーニング利用後2~3日後に送付するお客様アンケートによる評価)
クリーニングではドライクリーニング特有のニオイを不快に感じる方もいるため「ニオイのなさ」という項目も重要なポイントになってきます。

あわせて接客品質の向上も欠かせません。次の6つの指標をもとに改善を繰り返します。

(1)受電率(電話がすぐつながるかどうか)
(2)メールリードタイム(数時間単位で返信できるように)
(3)問い合わせ率(問い合わせ数/受注数)
(4)再利用意向率(また使いたいかどうか)
(5)接客品質スコア(接客の対応)
(6)アドバイス率(クレームではなく「アドバイス」と捉えて対応)

クリーニング業界は繁忙期と閑散期の波が激しく、繁忙期はとくに(1)~(3)をいかに改善するかは時間もかかり、苦労した部分です。

定性的には、定期的な顧客アンケートや顧客インタビューを実施しています。早朝・深夜集配や翌日届け対応する「プレミアム便」は、お客様の声から生まれたサービスです。

現在のお取組みを今後どのように発展させていきたいですか?

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_感謝

私たちはリネットの世界観、体験を大切にしています。
クリーニングしたお洋服を届ける箱は、創業時から外側だけでなく内側まで真っ白なデザインを採用しています。コストはかかりますが、箱を開けた瞬間のお客様の気持ちを想像して、そこの体験を何よりも大事にしています。少しでも気持ちが上がるようにオリジナルの感謝カバー、アフターケアのガイドブックを同封するなどの工夫も重ねています。

2021年からは衣類を1着単位で預けられる保管サービス「リネットクローク」を始めました。長く着続けるためにプロによる丁寧なクリーニングを施したあと、空調管理された倉庫での保管を提供するサービスです。
今後は、アプリでタップするだけでリネットクロークからそのまま洋服を販売、寄付できる仕組みを整え、衣類が循環できる事業展開につなげることを目指しています。

また、リネットの世界観に共感してくださるユーザーのみなさんに、暮らしがもっと豊かになるよう、インテリアとしても満足できるデザイン性を重視した衣類のアフターケアグッズの販売もはじめました。
今後は、オリジナルのハンガーなどの付加価値サービスを増やしていきたいと考えています。

顧客の声から気づいた本質的な価値。循環型社会でも「心のインフラ」であり続けるために

最後に齋藤様が事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。

サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)_インタビュー風景②

創業から数年経った頃、家で洗えるようなジーンズやパーカーもクリーニングに出してくださるお客様に出会いました。その方に「なぜリネットでいろんなものを出してくれるのですか?」と尋ねると「自宅でも洗えるけれど、リネットを使うと長く着られるし、届いたときや着ているときの気分がちがう」という言葉が返ってきました。

リネットが提供している本質的な価値とは「汚れたものをキレイにする」「ネットで便利な体験を届ける」といった単純なものではなく、届いたときの体験、ブランドとしての世界観にこそ本質的な価値があるのではないかと気づきました。そこからUIUXも含め、ブランディング、世界観の統一をより一層意識し始めました。お客様の声はサービス拡充からブランドの世界観まですべてにつながっています。

クリーニング事業は「大切なものを長く着る」というサスティナブルな事業だと思っています。循環型社会では、クリーニング以外にもリペア、リユース、リサイクルなど衣類を循環させることが求められるのではないでしょうか。将来的には、アパレル業界との共創により「長く着られる生地」を開発するなど、服のケアに限らず生活者をもっと豊かにする「心のインフラ」を届けていくことができれば嬉しいです。

編集後記

「新しい日常をつくる」をビジョンに掲げ、「テクノロジー × リアル(生活)」を軸に、生活領域に特化したサービスを展開するホワイトプラス。

「クリーニング事業は大切なものを長く着るサスティナブルな事業だと思っています」という齋藤さんの言葉が印象的でした。

累計会員数45万人*そしてNPS®でプラス数値**を達成した背景には、価格競争による新規顧客の奪い合いではなく、クリーニング品質と接客品質の二軸で顧客体験を高めながら、ブランドの世界観とユーザーを大切してきた地道な積み重ねがあったのではないでしょうか。

今後も、サブスク型宅配クリーニング「リネット」から届く”心のインフラ”とCX(顧客体験)から目が離せません。

齋藤様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

 

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