「価値の非対称」にフォーカスし続ける。WED株式会社によるCX(顧客体験)向上の秘訣とは

当時17歳の若手起業家がリリースしたことで、大きな話題を集めたレシート画像買取アプリ「ONE」。
リリース直後に想定を超えるユーザーが登録したことにより、事業を一時中断せざるを得ない状況から見事に事業を軌道に乗せ、2020年8月時点で90万弱ものダウンロード数を獲得しています。
ユーザーとクライアント企業両面でのCX(顧客体験)向上について、どんな工夫をしているのかお伺いしました。
インタビューイーについて

WED株式会社 CRO 山口喬志様
営業を中心に、組織・事業開発など幅広い業種を経験したのち、WED株式会社にジョイン。
現在はCROとして売上管理・CX・顧客対応などを行う。
オフラインでの顧客行動を収集する「ONE」
まず、貴社のサービスの概要を教えてください。
画像買取アプリ「ONE」は、レシートをはじめとする様々な画像をユーザーさんから買い取るサービスです。
アプリのユーザーさんは日々の生活のなかで出てくるものをお金に変えることができます。
一方クライアント企業さんはそれらの情報をもとに市場調査を行ったり、特定のユーザーさんに刺さる広告をアプリ上で打ち出したり、というメリットがあります。

レシートを扱うという要素では一般的な家計簿アプリと同じですが、「ONE」にはお金の流れを明確にしたり、支出と収入の管理をしたりといった機能はありません。
あくまでもオフラインの情報を集めるという機能が特徴になっており、レシートの他にも「保険証書」や「引越しの見積書」などをキャンペーンの一貫として買い取ったこともあります。
どんな方が利用されているのでしょうか?
10代〜40代の男女を中心に、幅広い方に満遍なくご利用いただいており、男女比も半々ぐらいですね。
2020年8月時点での総ダウンロード数は90万弱程度で、ほぼ毎日利用されているユーザーはだいたい60%です。

レシートの画像をアップすれば1~10円までランダムで付与される仕組みではありますが、お小遣い稼ぎをしたいというよりもゲーム感覚で楽しんでいただいているケースが多いようです。
一方、クライアント企業さんも飲食・メーカー・通信等、業界問わずスタートアップから大手企業まで幅広くお付き合いさせていただいています。
「ONE」内に表示される広告のCTRが平均で30%程度と高い数値が出ており、ユーザーの方々の日々の生活に深く結び付けられているのではないかと分析しています。
「価値の非対称性」に目をつけ、事業に参入
なぜ現在の取り組みを始められたのでしょうか?
元々、当社CEOの山内が「ある人にとっては価値が低いけれど、特定の人にとっては価値が高いもの」を取り扱うビジネスに着目して始めたのが「ONE」というサービスです。
当時は「レシートの画像を買い取る」という機能のみのサービスで、メディアやSNSなどで取り上げられたこともあり短期間で想定を大幅に超える画像登録がありました。
ユーザーからの反響が大きく、多くのダウンロードをいただいたにも関わらず体制が整っていなかったため、一時的にサービスを中断せざるを得なかった経緯があります。
その後は、「ONE」で取得しているデータの提供を主軸に、一部アプリでの広告配信も行っています。
日々の生活に根付いたデータにより、正確なターゲティングができるということと、画像を登録してお金をもらったあとなので広告をタップされやすい状態であることからも、先ほどお話しした通り30%という高いCTRを維持できています。
これまでユーザー数を増やすための活動は特に行っていませんが、おかげさまで順調にユーザー数が増えてきているので、ある程度の満足度は得られているのではと考えています。

欲しかったけど、手に入れられなかった情報を提供する
それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?
現在のところ、アプリユーザーはレシートなど何かしらのデータが紐づいた画像をお金に変えるということが唯一とも言えるメリットでしたが、近日中に新たにお買い物アプリとしての機能を強化する予定で動いています。
事業提携する企業さんが増えてきたこともあり、「ONE」経由で特定の商品を購入するとお得に買えるという、新しい購買行動の形を実現できればいいなと考えています。
また、クライアント企業側へのCXのポイントは、「今までは到底収集できるはずがなかったデータを提供し続ける」ということですね。
当サービスが集めるデータはオフラインでの動きに基づいたものが中心なので、これまで見えてこなかった情報まで確認できることが、クライアント企業にとっての最大の魅力です。
これからも、いつどこで誰がどんな購買行動をしているのか、あらゆる領域のデータを集めることが企業側へのCXに繋がると思います。
さらに細かいところでは、毎週水曜日に企業さんに向けてONE独自の情報をレポートにして統計データをまとめ、閲覧・利用しやすいようにし発信を行っております。

様々な施設とリンクした事業展開で理想空間を創出したい。
今後どのような取り組みをしていきたいですか?
アプリ内で溜めてもらったお金は、クーポンとして使っていただくことが可能なのですが、それ以外の使い道が十分揃っているとはいえないと感じています。
システム開発企業と連携をとって、「ONE」内にチャージをしたり、もっといろいろな用途で利用できるようにしたりできればもっと利便性が上がると思うので進めていきたいですね。
あとは、現在はコロナの影響もあり中断していますが、特定の業種に絞った情報収集キャンペーンなども随時展開して、ニッチな業界のデータ収集も進めていきます。
「ONE」とリンクできるような新規のプロダクトもどんどん生み出していく予定です。
あくまで最終的なゴールとしてですが「一つの街をWED株式会社で作りたいね」という話を社内ですることがあります。
私たちのサービスに関わっていただけるユーザーさんには少しでも幸せになって欲しいという思いから、いつかはいろいろな施設を面白い形で事業展開してWEDらしい理想的な空間を作ってみたいですね。

それでは最後に、山口様が事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。
繰り返しになりますが、一人ひとりの生活から得られる情報やデータが私たちが最も価値を提供できる分野です。
天気など位置情報に関連したものから、毎日の健康状態とリンクさせたヘルスケア用途、普段使用しているSNSと連携したインフルエンサーマーケティングなど、まだまだ手を付けられていないものはたくさんあるので、「ONE」の機能改善はもちろん、その他のプロダクトも含めてより大きな価値を生み出していきたいですね。
編集後記
お話しを伺い、常に改革を続けて事業を軌道に載せたエネルギーと、ユーザーの幸福度を高めていきたいという強い思いが伝わりました。
価値の非対称性という観点がとても面白く、まだまだ同社の中に眠っているアイディアがたくさんありそうです。
山口様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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