業界の常識を覆した顧客体験とは?アップセルがCXの向上、継続率の改善につながる

2012年よりサービスを開始したクラウド収納サービス「minikura」。サブスクリプションの宅配型トランクルームです。CXへの取り組みから、顧客体験の向上を図るためのオプションを用意することで継続率を改善し、アップセルも行えるという今後の展望をお聞きしました。
2012年よりサービスを開始したクラウド収納サービス「minikura」。
サブスクリプションの宅配型トランクルームです。
寺田倉庫株式会社のMINIKURAグループに所属する今成真之介さんに、CXへの取り組みから、顧客体験の向上を図るためのオプションを用意することで継続率を改善し、アップセルも行えるという今後の展望をお聞きしました。
インタビューイーについて

寺田倉庫株式会社 MINIKURAグループ:今成真之介さん
顧客視点で業界のタブーを変革
まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

月額250円から利用できるクラウド収納サービス「minikura」です(宅配型トランクルーム)。
トランクルームよりちょうどいいをコンセプトにしています。
今まで倉庫業でタブーとされてきた、「箱を開けて撮影する」「個人の荷物を預かる」「提案から契約まで対面、紙面で」を変革した外部収納サービスです。
月額300円のプランでは、お預けいただいたアイテムをスタッフが箱から取り出して一点ずつ撮影し、お客様がPCやスマホから預けているものを写真で確認できるようになっています。
どういったものを預けているユーザーさんが多いですか?

衣類系の割合が多く、続いて本やCD・ゲームなどメディア系のアイテム、あとはフィギュアや趣味のモノなどコレクション性の高いものも多いです。
コレクション性のものは、今はいらないが残しておきたいと思うもの。
衣類は、衣替えで冬物などの季節物を預ける人が多いです。
中にはお子さんの作品を思い出のためにとっておくという方もいらっしゃいます。
どういった年代のユーザーが多いでしょうか?

男女比はほぼ同じで、年齢層は30代後半〜40代前半の方が多いです。
月額250円という低価格ですが、その理由はあるのでしょうか?
2:8の法則で、長期的に預ける方で利益が出るビジネスモデルで考えています。
どうして値段が安いのかということはよく聞かれます。
キットを発送して、お客様が詰めて、宅配業者が回収する料金まで、すべて寺田倉庫が負担しています。
倉庫に着いて、撮影して、入庫まで無料です。
それを月々の保管量で回収していくというモデルになっています。
そのため、お客様の使い方によっては、薄利になることもあります。
次世代のトランクルームが必要だった
なぜ現在の取り組みを始められましたか?

minikura立ち上げ時、弊社内で「次世代トランクルームの企画」というテーマがあったそうです。
弊社事業にはトランクルームもありますが、基本は我々が荷物をあらためることのないスペース貸しタイプです。
次世代をテーマに考えたとき、個人のモノであっても中身を1品1品管理し、ゆくゆくはそのアイテムにまつわる周辺オプションを揃えれば、単なる「部屋貸し」ではなく、所有者にとって重宝される存在となるのでは、ということが始まりです。
サービス立ち上げの少し前に、震災で個人の大切なものがたくさん流されてしまい、大切に保管するのは自宅ではなく外部でもいいのではという意識の高まりもあったと思います。
ただ、そこでトランクルームでは利用者のハードルが高いということで、ハードルを下げたものをやろうということになったという感じです。
常識からの脱却
それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。CXを上げるために意識されていることはありますか?

minikura自体が、従来のトランクルームからの脱却を掲げてCXから商品設計されたものと考えております。
トランクルームの利用では、契約のために出向かなければならない、書面で契約しなければならないために面倒を感じたり、何を預けていたのかわからなくなるという不満、ハードルの高さがありました。
ハードルを低くするために、webで契約、預けるのはすべて郵送、預けているものをwebで確認という仕組みにしています。
また、ユーザーニーズに応じた商品やオプションを開発することも重要だと考えています。
CS満足度調査等の実施やユーザーボイスを反映したUI改善なども日々行っているところです。
具体的にどのような施策を行われていますか?
ハードルを下げるという意味で、季節性のあるキャンペーンを行っています。
引越しに合わせたものや、4、5月の衣類系のキャンペーン、クリーニングの10%OFFなど、外部に預けるきっかけ、理由作りを行いました。
ユーザーの利用動機はさまざまなので、いろいろな角度からマーケティング戦略を打っています。
例えば、minikuLOVEという施策を打ったことがあります。
カップルが別れたあとの思い出の品を預かる、デジタル化してしまおうというものですが、SNS上でバズが起こり、知名度の向上には一役買いました。
現在、課題を感じている部分はありますか?
早期出庫をなくすことができないかという課題があります。
一ヶ月で出庫されると2000円ほど赤字になってしまいます。
ただ、お客様が求めているのは、「預けたい時に預けて、取り出したい時に取り出す」というものであるため、早期出庫に対する改善策というのはまだ見出せていません。
収益を追い求めるとお客様の体験を害してしまうことにもなります。
ものを預けて感動体験を
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

物理的、精神的な安心を提供していきたいと思っています。
スペースを開けてお部屋すっきりという物理的な部分と、minikuraに預けていたらこの体験が受けられるという精神的な部分の2軸で提供していきたいです。
施策の部分でいうと、ユーザーインタビューや座談会の開催を経て、アンバサダー制度やプレミアム会員制度など、ロイヤリティの向上に努めたいです。
オウンドメディアの運営も考えています。
今後、増やしていきたいサービスなどはありますか?
今は、大事なものを預けるストックと、そこに付随するオプションに注力しています。
増やしていく部分でいうと、モノにまつわるオプションを調整しています。
今は個品に対してのクリーニング、ヤフーショッピングの二つしかないが、他にもオプションを増やしていきたいです。
これまでは感動するものの優先順位が高くなかったけれど、ライフスタイルのひとつにするならばそういった部分も優先順位を上げていく必要があると考えています。
例えば、思い出の品、お子さんの作品や賞状をスキャンしてアルバムにするですとか、ぬいぐるみにするような感動体験を届けるサービスはあり得ます。
そのように付加価値をつけることで、長く預けてくれるということにも繋がるのではと考えています。
利用者の豊かな暮らしを実現するインフラに
それでは最後に、今成様のminikuraの事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。

所有するすべてのものを預けられるサービスになりたいというのがビジョンです。
トランクルーム事業もあるため、minikuraとしては、個人の外部収納に関する要望すべて応えられるようになることが最大の目標です。
ライフスタイルの一部になりたいというのがあるので、衣食住の次のインフラになって利用者の豊かな暮らしを実現したいと考えています。
編集後記
従来のトランクルームの常識を変革したクラウド収納サービス「minikura」の今成さんにお話を伺いました。
ものを預けるという側面だけでなく、オプションによる機能的価値の拡充、預けた先の体験という情緒的価値を提供するCXが素敵でした。
今後、さらにオプションの充実を図るということで、どのような感動体験が生み出されるのか楽しみです。
今成様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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