おうちで世界を旅しよう!オンライン旅行から生まれる顧客体験(CX)

「Travel At Home」のサービス開始と共に2020年6月設立。
企業ミッションは「たいまつのように光を当て埋もれている価値を見出す」。
今回は、株式会社Torchの創業メンバー・嶋頼彦さんにインタビューをしました。
どのようにサービスと顧客体験を作り込んでいるのでしょうか。
インタビューイーについて
「Travel At Home」の運営会社である株式会社Torchの創業メンバー・嶋頼彦氏
戦略コンサルティングファーム等を経て、現職。
世界中の今を思い通りに見る
まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

「Travel At Home」は、現地に行けない人(視聴者)と現地にいる人(撮影者)をZOOM、Skypeなどのビデオ通話で繋ぎ、家にいながら旅行気分を味わえるサービスです。
視聴者は自分の見たいように「右に行って」「もっと近づいて」など、リクエストを出すことができます。
撮影者は、視聴者のリクエストに応じて動き、撮影することで、まさに現地を旅しているような体験を生み出すことを可能にしました。
現在の利用者数や他社サービスとの違いついて教えてください。

オンライン旅行を提供する他社サービスは、過去に撮影した映像やPowerPoint資料で観光地を案内するものが多いですが「Travel At Home」では、撮影者がまさに今を撮っている「リアルタイムの映像」で旅行を体験することができます。
テレビやYouTubeも、撮影された映像を受動的に見るだけですが「Travel At Home」では、自分の見たいように撮影者にリクエストを出し、撮影者に質問する等、能動的なコミュニケーションを楽しむことができます。
撮影者はプロのガイドだけでなく、学生や主婦などたくさんの方が登録しています。
現地の撮影者だけが知っている秘密の景色、料理体験等、現地でないと味わえない経験を一緒に体験することができます。

「Travel At Home」では、現地で仕事・収入の機会のない方に対し、スマホひとつで仕事ができるチャンスを生み出すことも目指しています。
現在、アフリカでは若者の60%が失業しており、仕事のない途上国にとっても新たな収入を得る機会になると見ています。
「Travel At Home」では30分900円からサービスを体験できます。現地ガイド(撮影者)にとっては、この900円も貴重な収入となります。
実際に現地ガイドからは「数回のガイドで平均月収の半分ぐらい稼ぐことができました、もっと頑張ります!」というお声を頂いています。
サービス料金は当社ではなく現地ガイドが決め、当社は手数料を頂くビジネスモデルで運営しています。
2020年4月にβ版として現在のサイトを立ち上げたばかりで、本格的な広報活動はまだはじめていない状態ですが、テレビ・新聞に取り上げられ、利用者数は、対前月比2-10倍ペースで増えています。
2020年9月にリリースを予定しているマッチングサイトの立ち上げ以降は、広告費もしっかりかけながら、さらに幅広い方々に周知いただけるように活動していきたいと思っています。
有名な観光地ではない場所へ
なぜオンライントラベル事業を始められましたか?

私自身、旅行業界での経験はありませんが、学生時代からバックパッカーで、社会人になってからも約一年間の世界一周旅行をする等、もともと旅がとても好きでした。
旅をする中で、アジアやアフリカ等の途上国に行くと、子どもからお金をせがまれたり、日中から路上にただ座っている若者にも出会いました。
途上国には産業が少なく「働きたくても働けない方」が大勢いることを目の当たりにしたのです。
旅から帰ったあとも、そのような方に対して、より簡単に仕事ができる方法はないかと模索していました。
一方、先進国で老後の楽しみについてのアンケート結果を見ると、旅行・レジャーが一番に挙げられることが多いです。
しかし「体が動かない・遠くに行く気力もない」等を理由に、海外旅行に出かける人は少ないのです。
「行きたいけど行けない」という課題に対し、良い解決方法はないかと考えていました。
そんな中、途上国にもサファリ等の観光地があり、現地の人にとっては「当たり前の景色」であるその風景を見たい方もいるのでは?両者をビデオ電話で繋いで、景色を見せること喜ばれるのでは?とアイデアが生まれました。
今の景色を自分の思い通りに見れるサービス。有名な観光地ではなく、自分だけの思い入れのある景色の今をリアルタイムに見れるサービス。「Travel At Home」が生まれた瞬間です。
「Travel At Home」を立ち上げるにあたり、最大の課題は「撮影者をどう集めるか?」でした。
当社の代表取締役の木村駿介は、アフリカのウガンダで会社を経営しており、アフリカに様々な知人のネットワークを持っていました。
希少性のあるガイドを集められそうな目処が立ち、2人でスタートすることにしました。
ウィズコロナの状況をどう見ていますか?

実は、世界的な感染拡大が起こる前から「Travel At Home」の準備を進めていました。
計画では2020年後半にリリースする予定だったのですが、世の中の状況を見て「これはできるだけ早くこのサービスを届けたほうがいい」と確信し、β版のサイトを急いで立ち上げました。
登録しているガイドには、現地でリアルの旅行ガイドをしていた人もいますが、コロナの影響により仕事がなくなったと聞いています。
各国の旅行代理店の方も仕事が激減したため「Travel At Home」のサービスを知り、ぜひ登録したいとお声を頂いています。
少しでもこのような方々のお役に立てればと考えております。
コロナ後もオンライン旅行が一つのサービス・余暇のコンテンツとして確立できればと思っています。
日本だけでなく、世界中でオーバーツーリズムが問題となっていたので、オンライン旅行が広まることで「見たいものはオンライン旅行・食べる泊まるはリアル旅行」とすみ分けることで、問題解決に繋がればと考えています。
オンライン旅行が「暮らしの質」をあげる
現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?

約50名の登録ガイドに対し「どうすればお客様に喜んでもらえるか?」という視点で、撮影テクニックやビジネスマナーを指導しています。
約8割のガイドには、何等かのトレーニングが必要です。
彼らは、日本人ならではのビジネスマナーを知りません。「約束の5分前には現地に到着して準備しておく」等の基本マナーから教える必要があります。
また、ガイドは撮影のプロではないため、撮影方法も教える必要があります。
撮影した映像を当社がひとつずつチェックし、お客様にとってより見やすいものになるよう、教育用動画を作り、指導を重ねています。
この取り組みの甲斐もあり、3ヶ月で20件の現地ガイドをする方も出てきました。
この短期間で、カンボジア、モンゴル、エジプトと3回利用された方も。同じ国の同じガイドへのリピートもあります。
言語に関しては、日本語を話せるガイドを中心に集めています。
もちろん、日本語が話せないガイドもいますが「Go right」など簡単な英語やジェスチャーで通じるので、充分楽しめます。
景色ではなく、ガイドとのコミュニケーションが楽しかったというお客様もいらっしゃいます。
オンライン旅行から生まれる顧客体験とは?

リアルな海外旅行は「お金をためて」「一週間仕事の休みをとって」とまさに一大イベントです。
「Travel At Home」では『仕事終わりの平日夜10時から、エジプトに行こう!』が実現します。
オンライン旅行でリフレッシュすることで、また明日から仕事をがんばれる。このような好循環を多くの人たちの中で生み出すことができればと考えています。
さらに、海外に関心のない世代や「アフリカって怖いよね、行くの大変だよね」というイメージをもっている方に向けて、オンライン旅行は家にいるので「安心安全・ノーリスク」で世界を知るきっかけを作ることができれば嬉しいです。
海外旅行に対してハードルが高いと思っている方に、気軽に海外旅行の良さを感じてもらって、それがリアル旅行に繋がればと思っています。
昔は毎年旅行に行っていたけれども、体力的にも精神的にも現地に行くことが大変になった高齢者の方々にも、若い頃のような体験をいつまでもしてもらいたいですね。
ユーザー同士をつなぎたい
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

2020年秋にマッチングサイトの立ち上げを予定しています。
今は、お申込みいただくと、当社がガイドにお繋ぎする役目をしていますが、マッチングサイトでは、ガイドと利用者が直接やり取りできるようになります。
決済、相互評価などユーザー同士のプラットフォームを目指しています。
ユーザーが自分で気になるプランやガイドを検索し、オンライン旅行を申し込む仕組みを整えるのはもちろん、ユーザーにとって役立つ情報をコラムとして発信していきたいと思っています。
「自分が主役」の体験を
それでは最後に「Travel At Home」を通じて実現したい想いをお聞かせください。

テレビやYouTubeは既に撮影された映像ですが、「Travel At Home」はリアルタイムでリクエストができます。
市場の食べ物ひとつとっても「これは何?」「どうやって食べるの?」などのコミュニケーションが可能です。
旅番組は「見る」という受け身の状態ですが「Travel At Home」では自分自身が主役です。
自分で「見たいこと」「聞きたいこと」を思うがままにやり取りできることをもっと楽しんで欲しいと願っています。
今は「見る」「聞く」「話す」が中心のオンライン旅行ですが、技術がさらに進歩すれば、ガイドが触っている触感・食べ物の匂い、風の気持ちよさなども体験できるようになればなと思っています。
また、オンライン旅行とリアルの旅行をリンクさせ、オンライン旅行中にいいなと思った場所やお店の情報が蓄積され、その情報が現地に行ったときに通知される等、オンライン旅行とリアル旅行を融合させたサービスも実現したいと思っています。

ウガンダのサファリに住む人にとって、キリンやゾウを間近で見れるのは当たり前の風景です。
一方、サファリを見たいけれど、現地に行けない人もたくさんいます。
自分自身ではなかなか気づけないものですが、他人には価値があることが世界中にたくさんあります。
社名(株式会社Torch)の由来でもあるのですが、埋もれている価値に、たいまつ(Torch)のように光を当て、価値を見出し、輝くようにサポートしていきたいと思っています。
編集後記
『仕事終わりの平日夜10時から、エジプトに行こう!』
オンライン旅行でリフレッシュすることで、また明日から仕事をがんばれるという体験はわたしたちの暮らしの質に大きな変化をもたらすことになりそうです。
自分が主役になれる「Travel At Home」から目が離せません。
嶋様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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