キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方

但馬東洋珈琲株式会社。1975年に東洋珈琲但馬支店を買収し、但馬東洋珈琲株式会社として創業開始。地域の飲食店、オフィス、家庭用に自家焙煎した珈琲を卸す。顧客ニーズに合わせて冷凍食品なども取り扱い、2019年からはアウトドア事業にも参入。2021年植村直己冒険館に自社直営のカフェイヌークをOPEN。

インタビューイーについて

濵田翔太郎氏
但馬東洋珈琲株式会社 アウトドア事業部

2021年入社、但馬空港キャンプ場事業責任者。現在ではキャンプ場やグランピングの立ち上げを担当。

平日キャンプのサブスクという新しい遊び方

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方_サービス

但馬東洋珈琲株式会社は平日にキャンプ場が月額定額で使えるサブスクリプションサービスCamp Essence(キャンプエッセンス)を提供しています。
当社のグループ会社(株式会社クロスプロジェクトグループ)が、全国で22か所のキャンプ場を運営しており、その中で但馬・播州・京都エリアで計7か所のキャンプ場がサブスクリプションで利用できるようになっています。

Camp Essenceは単月契約と年度契約が選ぶことができ、傾向としては年度契約を選ぶお客様が多く、利用頻度の平均は月2回以上です。これは月2回以上利用すると、お得になる価格設定であることも影響しているかもしれません。利用スタイルは連泊が多く、1日目と2日目で違うキャンプ場をまわりながら楽しむかたちが好評です。年間を通して見ると9〜10月にかけて利用が集中する傾向にあります。

急な天候変化にがっかりせず、平日に思う存分楽しんでもらう

なぜ現在の取り組みを始められましたか?

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方_インタビュー風景1

キャンプ場の抱えていた課題しては利用者が休日に集中すること、そして予測できない天候の変化です。急な雨が降ってきた場合、多くのお客様がキャンセルを選択されます。施設として営業可能な場合にはキャンセル料を頂戴していますが、実際に利用していただいたときに得られる収益には届きません。

急な天候変化によって、お客様はせっかくの楽しみがなくなってしまい、施設側も見込んでいた収益を得られない。この問題を何とかする必要がありました。また、キャンプブームに伴い、キャンセル待ちが発生するほど休日のキャンプ場は賑わいをみせている一方で、平日は休日の1/10程度の利用者数にとどまる日もみられ「平日に思う存分利用していただくことで解決しないか」と模索しました。

そこで平日利用を促進し急な天候変化でお客様をがっかりさせることなく、キャンセル料にまつわる問題も解決する方法として、Camp Essenceを始めました。

「周囲の視線や時間を気にせず過ごす」という顧客体験

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方_インタビュー風景2

我々は平日のキャンプ場だからこそ味わえる顧客体験について考えました。
休日のキャンプ場は、利用者数が多く、様々な価値観をもったお客様が1つの場所に集まることになります。ルールに厳格な方とそうではない方、様々な価値観が存在するなか、互いの行動を一切気にせずに過ごすことは簡単ではありません。

Camp Essenceでは、利用者が少ない平日という利点を最大限活用し、お客様同士が互いの行動を気にすることなく過ごせる時間を提供しています。
その1つがチェックインとチェックアウト時間を自由に選べるサービスです。お客様は好きな時間にチェックインを済ませ、テントを張ったあとに、周辺観光に出かけることもできます。多くのキャンプ場では、チェックアウト時間を過ぎると延長料金が発生する仕組みを採用していますが、Camp Essenceはサブスクリプションなので追加料金も一切発生しません。

このように時間や周囲の視線を気にせずに過ごしていただけるところにこだわりながら、CXを高める仕組みを整えています。ここに新しい体験価値があるのではないかと思っています。

複数のキャンプ場を利用できる中で、濵田さんが大切にしている体験価値とは?

複数のキャンプ場を選べるサブスクリプションサービスを提供するうえで、我々が注力を試みているのはキャンプ場同士の連携強化です。
お客様からキャンプ場に関する問い合わせがあった際、内容によっては各キャンプ場の責任者しか回答できない場合もあります。お客様にとって、疑問に思うことをすぐに解決できない状態ではCXを高めることはできません。

Camp Essenceではサブスクリプション会員様とスムーズなコミュニケーションを実現するために、すべてのキャンプ場の責任者を管理者として設定した公式LINEを導入することで、各キャンプ場がお客様の疑問へすぐに応える体制を整えています。

各キャンプ場の横のつながりが顧客体験を高める

今後どのような取り組みをしていきたいですか?

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方_インタビュー風景3

お客様への現場での対応はこれまでに培ってきたノウハウを活かし、当たり前のことをより丁寧に新しい顧客体験を届けていくことが大切だと思っています。難しいのはキャンプ場同士の連携です。横のつながりをいかにまとめていくかが課題です。

7つのキャンプ場はオープンから約1年と比較的新しい施設もあれば4~5年経っているところもあります。点での集客はできていても、地域間での相互送客はまだ実現していません。サブスクリプションサービスを通じて、地域間の横連携を強化していくための取り組みに注力し、お客様に地域を周遊していただくことで地域全体の観光にもつなげたいと考えています。

1日目に但馬エリアのキャンプ場を、2日目に京都エリアのキャンプ場を利用される事例がありました。1日目の但馬エリアのスタッフは「但馬エリアではどんな美味しいものがありますか?」という質問にお答えすることはできても「明日行く京都エリアのおすすめの観光地はどこですか?」という質問には答えられません。こうしたときに横連携を強化していれば「京都エリアのスタッフに聞いてみますね」という会話が生まれます。

我々は、キャンプ場という施設を提供するだけではなく、その地域だけで味わえる体験価値を生の声としてお届けすることで、より顧客体験を高めていけるのではないかと考えています。

異なる角度から挑戦することで、新たな体験価値を生み出す

それでは最後に、濵田様のキャンプ場のサブスクリプション事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。

キャンプのサブスク「Camp Essence」が模索する新しい顧客体験の在り方_企業ロゴ

Camp Essenceは、まだ成功したと言える段階ではなく、日々、課題が見つかっては修正を繰り返しています。2〜3年継続してようやく結果が見えてくるのではないかと思います。

我々がサブスクリプション事業に挑戦できるのは、各キャンプ場で採算がとれているからです。少し視点を変えると、現場ではこれまでのやり方の改善が中心になりますが、現状の収益に安心することなく、違う角度から挑戦しなければ、新たなサービス、体験価値、そこから生まれる新しい収益のかたちは生まれてこないと私は考えています。

お客様の行動、姿から見えてきたことがあります。それはサブスクリプションサービスを開始してから、従来よりも遠方からの利用が増えたことです。
単発利用の場合、近場のキャンプ場が選択されていたのが、サブスクならいつ行っても良いという意識が醸成され、エリアが広がったのではないかと見ています。これは我々が予測していたことではありません。様々な角度からお客様を見ることで出会えたお客様の姿です。

Camp Essenceは2021年9月にサービス提供を開始しました。我々のように複数のキャンプ場を選べるサブスクリプションサービスは、まだまだ全国的にも少ないように感じています。これはキャンプ場同士の連携の難しさを表しているとも言えます。
これからも横のつながりを強化することに挑戦し続け、そこから生まれる体験価値を高めていきたいと思っています。

編集後記

但馬・播州・京都エリアで計7か所のキャンプ場が月額定額で平日利用できるCamp Essence。
サブスクリプションサービスをスタートした背景には、急な天候変化でお客様をがっかりさせることなく、さらにお客様に地域を周遊していただくことで地域全体の観光にもつなげたいという想いがありました。濵田氏のお話によるとCamp Essenceは、公共機関が主催するスタンプラリーの賞品になるなど、地域での注目も増しているようです。

各キャンプ場の横のつながりによって、顧客体験を高めていこうとする濵田氏の挑戦はこれからも続きます。キャンプのサブスクCamp Essenceが模索する新しい顧客体験の在り方から目が離せません。

濵田様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

 

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