学習管理アプリを提供するスタディプラス株式会社の成功要因となったCXとは

スタディプラス株式会社が提供する「Studyplus for School」は、少子高齢化・人手不足に苦しむ教育機関を支える学習管理プラットフォームSaaSとして注目を集めています。
動画授業やAI教材といった教育方法が一般的になりつつある時代の変化に加え、コロナウィルスの影響で学校や学習塾が休校措置を取らざるを得なくなったことも影響し、アクティブユーザー数は過去最高レベルで増加中とのこと。
今や先生と生徒さん、どちらにとってもなくてはならないツールになりつつありますが、サービスリリース直後はなかなか導入が進まず、苦しんだ時期もあったそうです。
どのようにニーズを掴み顧客ロイヤリティを高めていったのか、カスタマーサクセスへの施策と成功を支えたCXについてお伺いしました。
インタビュイーの紹介
スタティプラス株式会社 ForSchool事業部 CXプランニンググループ リーダー 角田典子さん
2018年より同社に参画。学生時代に学習塾でアルバイトしていた経験を活かし、「Studyplus for School」カスタマーサクセスを担当。
2019年4月より同部門責任者を務める。
まずはじめに、サービスの概要や特徴について教えてください。
「Studyplus for School」は、学校や学習塾などの教育事業者が、生徒さんの学習データを分析したり、オンライン上で相互のコミュニケーションが行える学習管理プラットフォームサービスです。
生徒さんの情報をデジタル化し、オンラインを活用したサポートや管理が可能なことが特徴の一つになります。

弊社は元々、生徒さんがご自身の学習進捗を記録したり参考書の管理をしたりすることができる「Studyplus」という個人向け学習管理アプリを10年ほど提供しており、教育カテゴリーの中では最も多くのユーザー数を抱えるサービスとしてご利用いただいておりました。
2016年頃、ある学習塾さんより「Studyplus」データを元に、生徒さんの学習記録や受験結果の傾向情報などを積み重ねていけば、塾や予備校などの教育事業者にとっても非常に有益なツールになるのではないか、というアイディアをいただいたのがきっかけで「Studyplus for School」が立ち上がったという流れです。
意外にも立ち上げ当初はなかなか導入が進まなかったとお伺いしました。どんなことが原因だったのでしょうか?
「Studyplus for School」リリース当初は、「生徒さんの情報を管理・分析する」という機能にフォーカスし過ぎていたのではないかと分析しています。
もちろん生徒さんの学習実績や進捗の管理ができる機能は現在でも備わっており、重要なポイントの一つです。
しかし、現在の「Studyplus for School」はどちらかといえば先生が生徒さんにアドバイスをしたり、逆に生徒さん側から先生に学習の報告をしたりという双方向のコミュニケーションツールとしての性質も強く持っています。
2017年にリニューアルしたバージョン以降でこういったプラットフォーム機能を追加していったのですが、その辺りから徐々にご利用数も増えてきているので、教育機関の本当のニーズは「情報を管理したい」だけではなく、「的確なタイミングでコミュニケーションをとりたい」ということだったのかもしれません。

またもう一つ要因を挙げるのであれば、時代の背景というのもあると思います。
ここ数年で急速に映像授業や動画教材という学習方法が一般的になってきましたよね。
通信デバイスのテクノロジーが進化したという側面もありますが、根っこにある問題は少子高齢化により大学生アルバイトの講師が減って、多くの塾や予備校が人手不足状態にあることだと思います。
学習塾や予備校の先生の役割が、「わかりやすい授業をすること」ではなく「生徒さんがモチベーションを維持できるように導いてあげる」という風に徐々にシフトしてきた背景もあり、管理からサポートまでワンストップでできるツールとしてご利用いただいているケースが増えてきていると考えています。
CX向上に関して意識されているポイントを教えてください
「Studyplus for School」は、一部の先生や生徒のみが部分的に利用するというものではなく、導入いただくとその教育機関のスタイルを大きくを変えることになります。
生徒さんの学習方法も変わる可能性がありますし、先生やスタッフの働き方が大きく変わるケースも珍しくありません。
しかしその流れは今後も加速していき、少子高齢化・人手不足により自立型学習塾モデルへの対応はますます必要になってくることだと思います。
そういった多くの変化していく教育機関に対して一方的にシステムやアプリの導入を進めるのではなく、きちんと説得力を持ってサポートしていきたいと考えています。
具体的にはとにかく接触機会を増やすという意味でも、導入いただいた学習塾の先生と週に一回は連絡を取り、うまくご利用いただいているかどうかのヒアリングをするように心掛けています。
また定期的に活用方法の勉強会を開催したり、メディアで活用事例を発信したりしてノウハウを共有しています。

参考:オンライン指導情報共有会
特に地方にある学習塾や個人で経営されているような小規模な学習塾などは、あまり同業者でのつながりをお持ちでなかったり、情報を十分に得られないケースも意外と多いんです。
上手にご利用いただいている先生は、生徒さんとZoomなどを利用した面談をしていたり、メッセージ機能を多用されていたりといった共通点があるので、そういった先生たちにスポットライトを当てて同業者同士でのつながりも生み出せていければとも考えています。
より多くの教育機関に、「自分の塾でも使えるんだ、使ってみたい」という風に感じて頂けば嬉しいですね。
現在感じている課題や、取り組んでいきたいことは何ですか?
生徒さんが学習記録をつけてくれないと先生もリアクションをとりようがなく、大幅に使える機能が制限される形になります。
しっかりと真面目に勉強に取り組んでいても、記録をつける意味を感じてくれない、めんどくさがってつけてくれない、というケースも全くないとはいえません。
現在はTwitterのように友達と繋がり、「いいね」」を送れるなどのSNS機能を備えていることもあり、かなり改善されてきてはいるのですが、今後より一層記録をつけてくれるような機能やサービスを考えていきたいですね。
今は生徒さんの自主性によっているので、もっと密接に各学習塾や教室とリンクして生徒さんのモチベーションを維持する仕組みを作っていきたいです。
最後に、仕事に対しての想いをお聞かせください。
先ほどもお話しした通り、「Studyplus for School」は立ち上げ当初より何度もつまずきながら、機能やインターフェースなど改善を繰り返して、ようやく多くの教育機関にご利用いただけるサービスになりつつあるという経緯があります。
これは現在もご利用いただいている先生方からの貴重なフィードバックや、よりよく利用しようという能動的なアクションがなければここまで展開できていなかったでしょうし、日々たくさんのヒントをいただいています。
私たちは教育管理アプリのベンダーという立場なので、実際に生徒さんの前にたって現場で働かれている先生の皆さんとは異なりますが、「教育をよくしていきたい」という思いは同じだと感じています。
あくまでも主役は先生と生徒さんということを忘れずに、カスタマーサクセスで教育業界全体を良くしていけたらと思います。
編集後記
お話しにもありましたが、特に小規模運営の塾や地方にある個人学習塾など、ICT化やITツールなど、便利そうだと感じていてもなかなか導入するのが難しい業界の一つだと思います。
その点について同業者同士でノウハウ共有した上でコミュニティを生み出すという仕組みを作り、不安に対応している点が実に魅力的なポイントだと感じました。
コロナウィルスでなかなか生徒さんを教室に呼べない状況のなか、サービス利用開始に踏み切る学習塾が多いというのも頷けます。
今後は塾だけでなく、学校も含めて教育システムが大きく動く可能性がありますが、教育機関が「Studyplus for School」のようなシステムをうまく利用し、生徒達がより学業に集中できる環境ができることを願っています。
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