香水のサブスクリプションサービス「SCENTPICK」代表が見据える顧客体験とは

香水のサブスクリプションサービス「SCENTPICK」代表が見据える顧客体験とは

2019年5月のサービス開始以来、驚異的な広がりを見せている、使い切り香水サブスクリプションサービス「SCENTPICK」。その代表を務める川島匠さんにインタビューを行いました。 

90%以上という高い継続率を支えるのが「”理想の自分”のワードローブを提供する」という独自のCXと、それを実現する徹底されたサービス構築です。「SCENTPICK」が目指す世界観はどういったものなのでしょうか。 

顧客体験を向上させる具体的な取り組みに迫りました。

インタビューイーについて

SCENTPICK株式会社 代表取締役:川島匠さん

A.T.カーニー入社 ~BCG(ボストンコンサルティンググループ)~MUSE&Co.取締役を経て、2019年SCENTPICK株式会社創業。AVANCE GROUP代表取締役も同時に務める。

“理想の自分”のワードローブがある生活

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。 

SCENTPICK(センピック)は好きな香りが毎月届く、使い切りのサブスクサービス
https://scentpick.jp

SCENTPICKは好きな香りが毎月届く、日本初のフレグランス・サブスクリプションサービスです。

月額1,680円(税/送料別)から、毎月使い切りサイズの香水をお届けしています。

どういった香水が届くのですか? 

ラグジュアリーブランドからメゾンブランドまで、数百種類のラインナップから好きな香りを選ぶことができます。
 

SCENTPICK(センピック)の取扱ブランド

初心者の方は、かんたんな4つのクイズに答えるだけでSCENTPICKが選定した香水におまかせすることもできます。
 

SCENTPICK(セントピック)の顧客への提供

またSCENTPICKでは、香水を香りの好みだけでなく、その人のライフスタイルやキャラクターから導き出せる独自アルゴリズムによって選定するため、香水初心者の方でも、自分に本当に合った香りを見つけることができます。

どのような方が会員にいらっしゃいますか? 

10,000人の会員のうち88%が女性です。

大都市圏を始めとして、百貨店で試す機会が少なくなりがちな全国地域のお客様にも楽しんでいただけています。

香水を通じて新しい自分を見つけてほしかった

思いを語るSCENTPICK(センピック)川島さん

なぜ現在の取り組みを始められましたか? 

私自身もともと香水が好きで、百貨店に行っては数時間居座ってすべての香りを試したり、自分だけの香水を作りにフランスに旅行したりしていましたが、実際に使ってみるとムエット(試香紙)イメージと異なることも多く、結局家の棚にほぼ未使用の香水が100個くらい眠っていました。

ところがある時、その余った香水を友人に小分けして上げた際、「新しい自分になれる」と感動してくれたことがあり、今のビジネスのきっかけになりました。 

早速、調べて見たところ、日本では化粧品製造業免許を取らずに違法で小分け販売している事業者や個人しかいないことが判明したため、早速許認可を取得し創業に至りました。 

恋人にプレゼントを贈るつもりで取り組む

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。 サービスを通じてどういったCXを提供しようとお考えですか? 

SCENTPICKのミッション

我々の提供価値は、ただ「手頃な価格で使い切れる香水を届ける」ことではなく、「“理想の自分”のワードローブがある生活」を届けることと定義しています。

これまで数々の企業の戦略コンサルティングを行ってきた経験から、人は、未経験のサービスや商品を目の前にしたとき、まず始めにそれを利用した自分を思い浮かべ感情が動くかを判断し、その段階をクリアすると、その価格や機能が合理的と思い込むために自分への説得材料を探す、という行動原理があるように感じていました。

つまり、機能的な「モノの価値」と、感情的な「コトの価値」を、二項対立で捉えず、双方を戦略的に仕込んでおくことが重要だということです。

香水というニッチな事業領域にいる私どもも、安くて・便利であるというモノの価値と、ライフスタイルを変容させるコトの価値を溶け合わせて提供すること、いわば「コト付きのモノ」を提供できるかが重要だと考えています。

具体的には現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか? 

顧客が行うSCENTPICK(セントピック)のサービスに対しての自発的な拡散

我々のサービスは、高級なブランド香水が手軽に試せる、というメリットでご利用を開始頂くことが多いのですが、それだけではただの香水の小分け屋さんでしかなく、お客様の体験価値を向上させられないと考えています。

従って、AIによってお客様が自分では選ばなかった様々な香りをお届けし、「今までにない新しい自分」を発見して頂く。そうすることで、毎朝自分が演じたい理想の自分を、まるでワードローブから選ぶような、新しいライフスタイルを提供できると考えています。 

そのため、例えば同封する商品カードには、その香りが醸し出すキャラクターや、適したオケージョンを記載し、カードケースで持ち運べるサイズにしたり、専用のボトルケースは化粧ポーチの隙間に入るサイズまで小型化させたり、といった細かい工夫もなされています。

こうした地道な積み重ねの結果、現在有料プランの継続率は90%以上を維持できており、多くのお客様に満足いただけているのではないかと考えております。


 

それを実現するためにチームで心がけていることはありますか?

SCENTPICK(センピック)の届けられるケース

チーム全員が「恋人にプレゼントを贈る」気持ちで、全ての業務を行うことを徹底しています

商品の製造から梱包・配送まで、効率を優先したくなることがあっても、「大切な人にプレゼントを贈るときに絶対にしないことはしない。」というルールで、時間がかかっても工程を止めるなど、常に正しい仕事をすることをチームの唯一のルールにしています。

おまかせの香水を選定するアルゴリズムでも、利益率や在庫という経営観点は一切排除し、そのお客様に一番似合う香りや、大切な人と会うときに付けてほしい香りが選ばれるようにモデリングされています。

また、商品にチラシを同封したり、プロモーションのメールを送りつけることも行いません。こうした、一見非合理的な行動も、全てはお客様に届けたい世界観を崩さないためのものです。

香水に関する偏見をなくしたい

今後の展望に関してお伺いしたく思います現状、日本の香水にまつわる課題にはどんなものがあるとお考えですか? 

日本ではまだ香水が身だしなみのアイテムとして市民権を得られていないことが課題だと思っています。そもそも人口密度が高いことや、清潔観に対する文化的国民性が原因として上げられるかもしれません。

日本人の香水に対する意識

一方で、本来日本人は香りに対する感度は非常に高く、ものづくりの技術は非常に高いのですが、うまくその魅力を伝えられていないケースもあります。

課題解決のために今後どのような取り組みをしていきたいですか? 

SCENTPICK(センピック)に今後の展望を語る川島さん

市民権を得られてないことに関しては、社会的な受容性を高める取り組みをしたいと考えています。

まずはあらゆる業態のパートナー様とアライアンスを組み、香りをつけるべき適切なタイミングと機会を世の中に醸成していきたいです。最近の取り組みとしては、不動産ベンチャーのOYO様とパートナー契約を結び、新しいライフスタイルを志向する方々に向けたフレグランスサービスを展開しています。

今後はさらにフィットネスやビューティーサロンのような、自分を磨く感度の高い方々に、香りの可能性を知って頂く機会を展開していきます。

また、ニッチフレグランスの取り扱いによる国内文化へも貢献していきたいと考えております。現在取り扱っている有名ブランドの香水だけでなく、日本のニッチパフューマリー(調香師:香粧品の香料を調合する職業)を取り扱う事で、日本人ならではの繊細な調香カルチャーや職人の皆様の発展を後押しできるプラットフォーム化を目指しています。

これらの取り組みを行っていくうえでも、サービスの提供価値に、機能的価値(モノ)と感動価値(コト)の双方を両立させていきたいと考えています。

 

編集後記 

 日本初のフレグランス・サブスクリプションサービスを提供する「SCENTPICK」代表の川島様にお話を伺いました。

単に香水を届けるのではなく、「“理想の自分”のワードローブがある生活」という感情価値と「手頃な価格で色々な香水を使い切れる」という機能価値を提供するというCXがサービスの根底にあることが伺えました。

だからこそ共感を呼び実績を残せたのかもしれません。今後も現在以上に日本の香りに対する意識を変えていくことでしょう。
 

 

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