サブスクリプションモデルにおける重要なKPI!  経営にどう活かすのか?

サブスクリプションモデルにおける重要なKPI!  経営にどう活かすのか?

サブスクリプションモデルを成功させるために重要なKPIは何かご存知でしょうか。サブスクリプションモデルの事業をスタートさせたが、何をKPIに設定すればいいのかお悩みの方に、重要なKPIについて紹介します。

適切なKPIを設定することで収益に直結した改善を行うことが可能です。サブスクリプションにおけるKPIの重要性についても紹介します。

なぜKPIが重要なのか

設定したKPIを組織として業務へと落とし込むためには、KPIの重要性を理解していることが大切です。

重要な経営指標である

KPIは経営を行う上で重要な指標です。KPIはKey Performance Indicatorの頭文字を取ったもので、日本語では「重要業績評価指標」と訳されます。KPIは、プロジェクト成功のために重要な指標を数値化したものです。数値化することで定性的な情報から現場のどこに問題があるのかを特定することができます。適切なKPIを設定して管理することで、経営状況の判断や新たな意思決定が可能です。

選定するKPIによって事業のアプトプットが左右される

KPIはただ設定すればいいわけではありません。目標達成に直結するKPIを設定しなければ、KPIが達成されたとしても期待したアウトプットが実現しない可能性があります。そのため、KPIを何に設定するのかはとても重要です。KPIとして設定すべきは、業績に最も影響を与える重要な指標です。

サブスクリプションにおけるKPIの重要性

ここではサブスクリプションモデルにおいてKPIの持つ重要性を紹介します。

収支のシュミレーションがしやすい

サブスクリプションはユーザーが継続的に課金するため、収支シュミレーションが立てやすいことが特徴です。深く体系化されたKPIがあるため、経営の成功と失敗の判断もしやすくなっています。収支シュミレーションが立てやすいことにより、投資を加速するタイミングの判断もしやすいです。

従来の売り切り型モデルとの違いを把握しておく必要がある

サブスクリプションモデルには、従来型の売り切りモデルにはない独自のKPIがあります。なぜなら、ユーザーに継続課金してもらうモデルだからです。例えば、売り切り型であれば、売上は顧客数と単価で計算できます。一方、サブスクリプションでは、継続率や解約率などが売上に影響を与えます。

どの観点からKPIを設定するのか

KPIは様々な観点から設定することができます。そのため、どの観点からKPIを設定するのかが重要です。経営陣や事業の現場責任者など、立場によって重要なKPIは変わります。経営陣のKPIは現場担当者のKGIになり、さらに細かなKPI設定が必要になるからです。ここではサブスクリプションモデルのKPI設定を行うにあたり、重要な2つの視点を紹介します。

財務観点から重要なKPI

経営者は事業の成功と失敗を判断するために財務状況を見る必要があります。サブスクリプションモデルはKPIを元にした収支シュミレーションがしやすく、未来の財務状況の予測が可能です。事業の投資判断に欠かせないKPIや収支を決定づけるKPIは最低限チェックしておく必要があります。

カスタマーサクセスの観点から重要なKPI

カスタマーサクセスとは、顧客の成功です。サブスクリプションでは、顧客に継続課金をしてもらうためにカスタマーサクセスを実現する必要があります。カスタマーサクセスを担当する部署が置かれているかどうかに関わらず、カスタマーサクセスが実現できているかを測ることはサブスクリプションの成長にとって欠かせません。

カスタマーサクセスの観点からは、既存顧客へプロダクトが刺さっているか、適切に利用されているかを判断するKPI設定が必要です。

財務面で重要なKPI

経営の健全性や事業の加速を判断するためには、以下の4つが重要なKPIになります。

MRR(月次経常収益)とARR(年間経常収益)

MRR(Monthly Recurring Revenue)は、ある月の収益のことです。ARRは1年間の収益で、MRRを12倍したものです。これらは毎月発生する売上のみを指し、初期費用など1回だけの売上は除いて計算します。

MRRは積み重ねが期待できる売上であり、予測の立てやすい数値です。月次で比較することにより成長性を判断できます。ARRが馴染むのは、年間契約のプロダクトを提供している場合や年間収支計画を立てるときです。企業価値評価のベースになる数値のため、最重要KPIと言えます。

MRR=顧客数×ARPU(ユーザー平均単価)

RPM(定期利益率)

RPM(Recurring Profit Margin)は、定期利益率のことです。MRRやARRから定期費用と解約によって失われる売上を引き、売上に占める利益の割合を算出します。売上に対して利益がどれだけ残るかで、年間の投資可能額や年間利益をいくら計上するかを決定できる重要なKPIです。RPMは以下のように計算します。

RPM= ( ARR – ( Churn + 売上原価 + 一般管理費 + 研究開発費 )) / ARR

売り切り型のビジネスでは、売上に連動するものを変動費(商品原価など)、連動しないものを固定費(賃料や管理部門の人件費など)として区別します。しかし、サブスクリプションでは顧客からの売上は毎月の定期利益のため、これらは定期費用扱いです。研究開発費も既存顧客の維持のために使われるため定期費用として扱います。

GEI(成長効率性指標)

GEI(Growth Efficiency Index)は、新規売上獲得のためのマーケティング費と営業費に対して、MRRやARRがどれだけ増加するかを表すKPIです。事業を成長させるためには売上の向上が不可欠です。GEIは1.0を基準とし、投下した費用に対して増加した売上の方が大きければ1.0を超えます。GEIがわかっていれば、費用をどれだけ投下すればどれだけ売上が増加するかの予測が可能です。GEIの計算ではNet New ARR(新規獲得ARR)が使われます。

GEI=営業・マーケティング費/Net New ARR

注意したいのが、GEIでは、最長でも年間売上の成長しか加味されません。事業投資を加速させるかの判断としてCACとLTVについても知っておくといいでしょう。

CACとLTV

CAC(Customer Acquisition Cost)は、顧客獲得費用のことです。顧客一人を獲得するのにマーケティング費・営業費がいくらかかったかを表しています。LTV(Life Time Value)は顧客生涯価値のことです。詳しくは後ほど紹介します。簡単に説明すると、一人の顧客がサービスを契約してから解約するまでにどれだけの利益をもたらすかを表した指標です。

LTVがCACを超えなければ顧客獲得費用が顧客からの収益を下回るため、事業を加速するタイミングではありません。LTVがCACの3倍以上が目安として使われます。

カスタマーサクセスで重要なKPI

カスタマーサクセスは財務面のKPIを達成するために重要な役割を果たします。財務面のKPIを達成するために、カスタマーサクセスの観点で重要なKPIは以下の3つです。これらは顧客との関係性も表しています。

カスタマーサクセスの最重要のKPIはLTV(顧客生涯価値)

LTVはカスタマーサクセスの最重要KPIです。LTVと顧客数の掛け算が事業の価値になります。LTVが高いほど顧客がプロダクトに対して見出している価値が高いと言えます。サブスクリプションは継続課金型のため、LTVを向上させることが事業拡大に繋がります。

LTV=(ARPU×粗利率)/解約率

LTVに影響を与えるのが、これから紹介する解約率とARPUです。

Churn Rate(解約率)

Charn Rate(解約率)は顧客の継続性を測るKPIです。顧客の維持を重要とするサブスクリプションモデルのKPIの中でも特に重要とされます。長期的視点で見たときには、解約率の改善が収益の改善に一番影響を与えます。Charn Rateが高いということは、顧客がサービスを活用できていない、サービスの価値が伝わっていない状態です。

Charn RateにはカスタマーCharn RateとレベニューCharn Rateの2つがあります。カスタマーCharn Rateは、期間中にどれだけ割合の顧客が解約するかを表した指標です。レベニューCharn Rateは、期間中にどれだけの割合の売上が解約またはダウングレードされたかを表した指標です。毎月計測することが基本です。

カスタマーCharn Rate=月間の解約顧客数/月初の顧客数

レベニューCharn Rate=(月間Charn MRR+月間Downgrade MRR)/月初のMRR

NPSと活用度

Charn Rate改善のためには、NPSや活用度などをKPIとして設定することがあります。NPSは顧客ロイヤルティを測る指標です。企業やサービスを友人や同僚に薦める可能性を点数化して評価してもらいます。個人向けのサービスや活用データの取りにくい非デジタルなサービスに向いています。

活用度はサービス導入後にどれだけ活用できているかを測る指標です。活用度はサービスによっていくつかの段階分けをして設定する必要があります。業務システムなど、法人向けサービスに向いています。

ARPU(ユーザー平均単価)

ARPUは、顧客一人あたりの平均収益です。アップセルやクロスセルによって向上させることが可能です。そのため、料金プランが複数設けられている場合やクロスセルで提供できるサービスがある場合に重要になります。ARPUを向上させることでCACの回収期間を短縮することも可能です。

ARPU=月間または年間総収益/顧客数

こちらの指標、Saasとニアイコールである部分も多くあります。KPIついてさらに詳しく解説した記事はこちらになります。ぜひご参考に。

SaaSにおいて経営を左右するKPI その理由と最適なKPIの選定方法は?

計算式や図解などで説明しています。

適切にKPIを設定し経営判断に活かす

サブスクリプションには独自のKPIがあります。適切にKPIを設定することでカスタマーサクセスの推進や事業拡大の判断が可能です。財務面のKPIとカスタマーサクセスのKPIを設定することで、経営と現場での改善が繋がります。知らないKPIがあればぜひ取り入れてみてください。

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