SaaSにおいて経営を左右するKPI その理由と最適なKPIの選定方法は?

SaaSにおいて経営を左右するKPI その理由と最適なKPIの選定方法は?

SaaSでは、緻密に科学されたKPIが存在します。他のビジネスモデル以上に、適切なKPIを設定・観測し、PDCAを回すことが収益効果に直結しやすいモデルなのです。

本記事では、SaaSビジネスを行っている方に向け、SaaSでKPIが重要な理由から、KPIの選定方法について解説します。

そもそもKPIとはなぜ重要なのか

ビジネスシーンでよく使われる「KPI」。KPIとは、そもそもなぜ重要だと言われているのでしょうか。

●キーとなる重要な経営指標である

KPIとは、「Key Performance Indicator」の略。日本語にすると「重要業績評価指標」と言われます。つまりKPIとは、ビジネスにおいてキーとなる重要な経営指標のことです。

ちなみに、KPIとセットで使われる言葉にKGIがあります。KGIは「Key Goal Indicator」の略で、日本語では「重要目標達成指標」のこと。KGIはゴールや目標、KPIはゴールに到達するまでの中間目標として使われます。

●適切なものの選定と改善で大きく変わってくる事業のアウトプット

適切なKPIを設定し、KPIを元にプランや施策を改善していくことで事業のアウトプットは大きく変わります。

KPIは業績を評価する軸、道標となるものです。道標が間違っていると、正しい目的地に到着しないように、KPIの選定が間違っていると、ゴールに向かえているのかプロセスを正しく評価できないだけでなく、KPIを元に間違ったビジネスプランを作成してしまうことになってしまいます。KPIの選定が、ビジネスプランや施策の質を決める際に影響することを覚えておきましょう。

●キーであるKPIの選定を間違った場合は事業のグロースがなされない場合もある

KPIの選定を間違った場合、事業がグロースに影響する場合もあります。そのため、KPIは十分に時間をかけて検討することがおすすめです。

KPIを選定するときには、KGIを決めた後、CSF(critical success factor)、もしくはKSF(Key success factor)と呼ばれる「成功要因」をピックアップすることから始めましょう。成功要因となる点を洗い出した後は、それらを定量的に評価するための指標をKPIとして定めます。

ゴールから逆算してKPIを設定することで、間違った選定をしてしまうことを防げます。

SaaSにおいてなぜKPIが重要視されるか

KPIは事業の方向性が正しいのか確認するための重要な指標だとわかりました。どのビジネスモデルでも当然KPIの設定は重要ですが、SaaSにおいて、なぜKPIが特に重視されるのでしょうか。

●収益のシュミレーションが立てやすい

SaaSにおいてKPIが重視される理由は「収益のシミュレーションが立てやすくなる」ことです。SaaSはKPIがブラッシュアップされている事業です。

Saasは特に、KPIを観測することで事業がどの程度成功に向かっているのか、経営が成功・失敗しているのか判断しやすくなります。

ベンチャーキャピタルにとってもKPIは重視している項目です。ベンチャーキャピタルが出資先を判断するときには、KPIを見て、どの程度の収益が見込めるのか、何をしたら経営加速できそうなのか判断しています。

●経営の加速/減衰に直結

よって、他の事業よりも収益のシュミレーションが立てやすくあり、資金調達側から見ても投資の対象となりやすくなります。

グロースアップに必要なKPIとして有名なものや、観測するべきKPIは後ほど紹介するので参考にしてください。

【指標を選定する前に】把握するべき選定軸

「KPIを設定して、事業のPDCAを回していきたい」と思ったあなた。成功につながるKPIを選定するためには、まずは選定軸を把握することが重要です。選択軸は「事業フェーズ」と「事業内容」の2つから判断します。

●事業フェーズ軸:自身のフェーズ?

KPIを選定する前には、「事業フェーズ」の検討が必要です。SaaSを経営するにあたり、フェーズによって重視すべきKPIは異なります。まずは、自分の事業フェーズを確認し、必要なKPIを設定しましょう。

●事業内容とKPIの親和性

KPIは万能な指標のようにも思えますが、事業内容によっては親和性のあるKPIと、そうではないKPIが存在します。事業内容によっても重要なものは変わると認識し、自分の事業内容に合ったKPIを選定しましょう。

事業フェーズ軸ごとで考えるべきKPI

では、事業フェーズ軸ごとに、設定するべきKPIはどのような違いがあるのでしょうか。

●全期間共通として考えるべきもの

まず、全期間共通して検討するべきメジャーな3つのKPIを紹介します。

1.MRR(Monthly Recurring Revenue:月次収益)

MRR/ARR計算式

月ごとの収益(売上)と、その成長率はSaaSビジネスにおいて最も重視する指標の1つです。売上を把握することで、売上目標・コスト計画を立てることが可能です。

MRRとARRは一緒に見られることが多いです。一般的なベンチマークなどは上記の画像を参考に。

2.解約率(Churn Rate)

チャーンレートの計算式
チャーンレートの計算式(弊社セミナー資料より)

SaaSビジネスにおいて、解約率を下げることが持続的な成長に繋がります。解約率を下げないことには、いくらマーケティング費用・広告費用を費やしても成長速度は鈍化するからです。

一般的なビジネスモデルでは、「Gross Revenue Churn Rate」を考えますが、既存客のアップセルが見込める場合は既存顧客の解約率である「Net Revenue Churn Rate」を検討しましょう。

解約率と企業成長の関連性
解約率と成長率の関係性
*参考:ami.SaaS:解約率は成長の上限を決める より作成

事業の持続的な成長のためには、年間の解約率は10%以下になる必要があると言われています。

解約率10%以下を達成するまでは、マーケティング費用を割くだけでなく、カスタマーサクセスを上げることに注力し、解約率を下げることに努めましょう。

3.NRR(Net Retention Rate)

NRRの計算式(弊社セミナー資料より)
NRRの計算式(弊社セミナー資料より)

SaaSにおいて、既存顧客の継続率やファン化、アップセル率はとても重要です。既存顧客が一定期間に追加して支払った金額を測るためのKPIが「NRR」です。

NRRは、「月初の合計収益(MRR)」+「アップセルによる収益(Expansion MRR)」−「解約により減った収益(Churn MRR)」−「ダウングレードによって減った収益(Downgrade MRR)」を月初の合計MRRで割ることで計算できます。一般的にNRRは100〜115%が適切とされています。

以上3つの指標は、事業の成長や減退に大きく関わるので、随時観測し、対策を検討することがおすすめです。

●利益早出前

次に、利益早出前のフェーズで検討するべきKPIを3つ紹介します。利益早出前は、むやみにマーケティング費用をかけるのではなく、以下のKPIを観測することが有効です。

1.プロダクト・エンゲージメント

SaaSビジネスをグロースするためには、ユーザーにプロダクトを積極的に利用してもらう必要があります。どの程度のアクションを取っているのか「プロダクト・エンゲージメント」を利用して判断しましょう。

プロダクト・エンゲージメントは、あなたが運営しているサービスによって変わります。アクティビティのリストを作り、それぞれのアクティビティのエンゲージメントをスコアリングしましょう。そして、ユーザーの行動を追跡し、スコアを出すことにより、どの段階のアクションが低いのか把握可能になります。アクションが低い部分を対策していきましょう。

2.ユニットエコノミクス

事業がデフォルトで死んでいるか、生きているかを測る指標です。CACとLTV二つの観点で測ることがおすすめです。

ユニットエコノミクス、LTVとCACの計算式
ユニットエコノミクス、LTVとCACの計算式

2-1.CAC(Customer Acquisition Cost:顧客獲得単価)

マーケティング戦略を考える上で、CAC(顧客獲得単価)を把握することは必須です。

CACは、広告費用やマーケティング活動にかかった金額や、マーケティング人材の給与などすべての金額を、獲得した顧客数で割ったものです。

2-2.LTV(ライフタイムバリュー)

先ほど紹介したCACと、LTV(顧客生涯価値)を考えることで、広告費の適正値がわかります。指標なくドライブをかけると、単に収益を圧迫することに。

ユーザー1人の獲得コストと、どの程度回収できるのかを判断することで、事業をドライブする経営判断が可能となります。

LTVをCACで割ったものUnit Economicsが3以上になることが目安です。

2-3.Payback periods

Payback periodsの計算方法
Payback periodsの計算方法

上記のCACとMRRが算出できればいつ損益分岐点に至るかが算出可能です。

参考:CAC Payback periods

つまりはマーケティングにおいて、いつ、どれくらいの金額を投下しても顧客獲得で費用回収できるかが算出できます。

お金がないベンチャーのシードやシリーズAくらいであると、むやみやたらに広報費を投下できないので、こちらの観測は筆者含め、マーケッターに重要なKPIだったりします。

SaaS特性/事業内容におけるKPIの個別最適化

次に、事業特性によって異なるKPIを確認しましょう。

●例1)意思決定レベルが高いSaaSなどのビジネス

ERPやSFA/CRMなど企業の中でも部長や執行役員レイヤーなどが導入判断する意思決定レベルが高いビジネスの場合、依存率に関わる指標が重要です。サービスへの依存率、依存率は、一社に対してどの程度依存しているのか表したもの。

合わせて、アクティブ率や、リピート率などもKPIとして観測しておきましょう。

●例2)個人でも導入可能なもの

一方、ビジネスチャットなど個人でも気軽に複数のツールを導入可能なものは、NPSなど個人への拡散に変わる指標の効果が大きくなります。

NPS(ネットプロモータースコア)もポイントとなります。NPSは企業やブランドに対しての愛着や信頼のことです。

補足:NPSとは?

0〜10の11段階でスコアリングして、ユーザーを3つの段階に分類します。0〜6はサービスに対して満足していない「批判者」、7〜8は満足しているがファン化していない「中立者」、9〜10は熱狂的なファンで他の人にもサービスを推奨してくれる「推奨者」とします。

こちらのKPI最近流行ってますが、ビジネス特性において、「合う/合わない」があるので「流行っているからうちも」という前にきちんと吟味することも大事だったりします。(筆者経験則)

適切なKPIを見出し、設計し事業推進と成長を

このように、事業内容によりどのようなKPIが必要なのか判断し、最適化していきましょう。

SaaSビジネスの成功は、適切なKPI設定が鍵となります。マーケティング手法や、ビジネストレンドは日々変化していますが、流行りに乗り途中でプランを変更することは悪手になりがちです。

それよりも、最初に定めたKPIを継続して観測することが事業推進・成長への近道となるでしょう。

始めに設定するKPIがすべてを決めると言っても過言ではありません。まずは、ゴールを定め、自社の成功要因は何となるのか十分に検討して、KPIを定めてください。

 

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