サブスクリプションの実施理由/必要性は何?〜運営側から見たモデル構築の利点/運営ポイント〜
近年話題のサブスクリプションとは何かご存知でしょうか。これからの時代はサブスクリプションがいいと言われたがよくわからないとお悩みの方に、わかりやすく意味や事例を紹介します。サブスクリプションは物が売れない時代に必要なビジネスモデルです。立ち上げやグロースで大切なメリット、成功のポイントについてもご紹介します。
サブスクリプションとはなにか
サブスクリプションとは継続課金であるビジネスモデルのことです。
料金を払うことで月単位や年単位など、一定期間サービスやソフトウェアを使用できる方式です。買い切り型とは違い、アップデートがあった場合にも利用料金を支払っていれば最新のサービスやソフトウェアを使用できます。一方で、サービスやソフトウェアを使い続ける限りは料金を支払い続ける必要があるのがサブスクリプションです。
なぜ必要になってきたのか
●時代の流れは「所有」から「利用」へ
サブスクリプションが台頭してきた背景には、若者の消費行動の変化があります。以前は、外車や高級腕時計など、高級品を所有することがステータスでした。しかし、現在の若者は所有することにこだわりません。その象徴の一つがシェアリングサービスです。カーシェアやバイクシェア、Airbnb、シェア畑など、さまざまなものがシェアされています。
ユーザーはその奥にある「体験」を求め、世界は動いていく
消費行動の変化は、消費者の価値観の変化でもあります。ユーザーが大切にしているのはステータスではなく、利用によって得られる体験です。例えば、ユーザーが体験にお金を払うライブイベント産業は右肩上がりの傾向にあります。インスタグラムも体験を共有するSNSとして人気です。ユーザーは、大量消費は心が虚しいということを知っており、利用した先にある優れた体験にお金を使う傾向にあります。
サブスクリプションにおける企業側のメリット
サブスクリプションモデルを導入することには大きく4つのメリットがあります。
盤石な経営基盤を作ることができる
まず一番は、サブスクリプションは継続課金のため、収入を安定させることが可能です。
月額課金の場合、「ユーザー数×単価」で毎月の売上が把握できます。ユーザー数は積み上がっていくため、ユーザー数が増えるほど毎月の売上も増加。売り切り型に比べて毎月の売上が変動しにくく、安定した売上が確保できます。
●参入障壁が下がることでユーザーの獲得がしやすくなる
初期費用を下げることで、これまで購入をためらっていたユーザーの獲得がしやすくなります。例えば、購入する場合には10万円必要だったものが、月額1000円なら利用してみたいというユーザーはたくさんいるでしょう。
ユーザーIDを取得することで解析、分析がしやすくなり損益シュミレーションが立てやすい
継続課金のため、ユーザーごとの利用状況などを詳細に把握することが可能です。
例えば、動画配信サービスなどは、ユーザーに人気のある動画の傾向を把握し、人気のあるジャンルに注力することでユーザーの満足度を向上させることができます。また、企業向けのクラウドサービスなどは、利用状況から改善点の把握により、解約の阻止や解約の予測を立てることも可能です。解約率を把握することで、来月の会員数や1年後の会員数が試算しやすく、損益シュミレーションが立てやすくなります。
物を買う必要がないため「良質な体験」が与えやすい
ユーザーにとっては購入する必要がないため、体験価値の向上が容易になります。初期費用が高いものが手頃な価格で利用でき、ユーザーの好きなタイミングで解約可能です。不具合があった場合やバージョンアップにも対応する前提のため、ユーザーは常に快適にサービスを利用できます。
サブスクリプションにおける企業側のデメリット3点
サブスクリプションにはデメリットもあります。事前にデメリットを把握して、対策を講じることが大切です。
長期にわたる販売期間>利益創出の長期化
継続課金の会員数を増やしていくビジネスモデルのため、販売期間が長期に渡って継続します。
また、売り切り型では一度で回収できた利益が、長期で利用してもらうことによって回収するため、損益分岐点を超えるまでに時間がかかります。そのため、創業事業であれば損益分岐点を超えるまでの運転資金を資金調達する必要があり、既存企業の新規事業であれば既存事業の利益から運転資金を捻出する必要があります。
「売り切り」姿勢=サービス定期収益化が難航
サブスクリプションは、継続的に利用してもらえなければ定期の収益化が困難です。
継続的に利用してもらうためには、サブスクリプションならではの価値の創出やユーザーの業務効率化、売上向上などの効果を出すためのサポートが必要になります。
最近のサービス事例|昔からあるサービス事例
サブスクリプションモデルは昔から存在しています。最近の事例や昔からある事例を紹介します。
最近立ち上がってきたサービス(2019年時点)
サブスクリプションモデルは、toB、toCを問わず導入されています。また、物、場所、ソフトウェア、サービスなど、商材もさまざまです。具体的なイメージを持てるように、最近立ち上がってきたサービスを5つ紹介します。
1)車業界:KINTO(トヨタ)
KINTOは、トヨタの定額制車乗り放題サービスです。3年間で1台のトヨタブランド車に乗れるプランと3年間で6種類のレクサスブランド車を乗り継げるプランの2種類が用意されています。レンタカーのような短期間の利用では、使いたいときにレンタルできないことがデメリットです。カーリースでは、利用期間が長いため、途中で新車が出ても乗り換えができないことがデメリットです。KINTOは、その間を埋めるサービスとして期待されています。
参考:https://kinto-jp.com/kinto_select/
2)バイク業界:月極ライダー
月極ライダーは、ヤマハ発動機の月額制バイク貸出サービスです。利用したいバイクの支払総額5%で1ヶ月間、バイク所有を体験することができます。初期費用を抑え、各種税金やメンテナンス費用も含まれることで、バイクに乗るきっかけづくりを狙っています。最長6ヶ月まで利用でき、気に入った場合はそのまま購入することも可能です。
参考:https://tsukigime-rider.com
3)ファッション業界:air-Closet
air-Closetは、国内最大級の月額制ファッションレンタルサービスです。月1回、3着の洋服が届くライトプラン、何度でも洋服の交換ができるレギュラープラン、大きめサイズが借りられるプラスサイズプランの3種類が用意されています。250人以上いるスタイリストがコーディネートしてくれるため洋服選びに困らないのが魅力です。返却時にはクリーニングも不要なため、手軽にいろいろな服を試すことができます。
参考:https://www.air-closet.com/
4)ゲーム業界:PlayStation Now
PlayStation 4およびPlayStation 3の300以上のゲームが月額料金で遊び放題になるサービスです。1ヶ月料金1180円、3ヶ月料金2980円、12ヶ月料金6980円の3つのプランが用意されています。
参考:https://www.jp.playstation.com/psn/playstation-now/
5)通販業界:アマゾンプライム
アマゾンプライムは、便利な配送特典や動画配信、音楽配信などを定額で利用できるサービスです。月額500円のプラント年額4900円のプランが用意されています。通販を便利に利用できるほか、単体で展開されているようなサービスも追加費用なしで利用できることが魅力です。
参考:https://www.amazon.co.jp/prime
実は慣れ親しんでいる身近なサブスクリプション
サブスクリプションは新しいもののように捉えられがちですが、同じビジネスモデルは以前から身近に存在しています。
1)カード会社
ゴールドカードやプラチナカードなど、通常のカードよりもランクの高いカードを使用している方は年会費を払っています。カード会社は、年会費1万円の会員が1万人いれば、年会費収入だけで1億円です。
2)新聞
新聞も定期購読のビジネスモデルです。契約期間を伸ばすために、特典をつけて長期契約を結ぶケースなどがあります。
3)生協
戦後より皆の共同収益より運営する食材サービスです。古くから存在するサブスクリプションモデルの一つです。
4)通信業
電話やインターネットプロバイダなどの通信業もサブスクリプションモデルです。例えば、携帯電話の料金プランは、月額の基本料をベースに、通信量ごとのプランやオプションなどが毎月収入として入るモデルになっています。
呼び名は新しくとも身近に多数存在します。
そして以前からサブスクリプションを続けている会社で共通していることにお気づきでしょうか。
それは盤石な収益体制ということです。
サービスを成功させるための3つポイント
サブスクリプションモデルを採用してサービスを成功させるための3つのポイントをご紹介します。
市場の策定
入り込む余地のある市場への参入が重要です。既存の売り切り型サービスとの差別化要素がどこにあるかを明確にできなければ、ビジネスモデルの違いにしかなりません。
また、他社がサブスクリプションで後追いしてきた際に、自社が潰れない理由がなければ資金力で大手に負ける可能性があります。また、市場の規模から想定ユーザー数を算出するなど、ロジカルに収益規模のシュミレーションを出せることが必要です。
マーケティングのポイント
1)一貫した体験の提供
顧客は一貫した体験を求めています。
認知から成約に至るまでのカスタマーの動きを把握し、お客様に合わせた施策を策定することが重要です。そのためには「所有」と「利用」の中間を選択する人はどういう行動をするのかを考え、仮説を立てる必要があります。
2)CAC(総顧客獲得コスト)とLTV(顧客生涯価値)の観測
LTVとは顧客生涯価値のことです。獲得顧客までの合計コスト(CAC)加味することで、プロモーションでのドライブしていいかどうかの判断基準が算出できます。
ビジネスリリース後はLTV、CACを観測できるようになりますので変動を常に観測して意思決定することがポイントです。またそこから先のチャネルごとのCTAは大幅に変わりますので
契約後/利用中のポイント
契約後は、顧客のフォローアップ体制(カスタマーサクセス)部隊の組織によって成功が分かれます。
1)チャーンレート(解約率)を下げるべし
こちらはユーザーベース佐久間氏が導き出したデータより作成。もしSaasビジネスをやるのであれば、非常に有用なグラフです。
サービスの成長にとって欠かせない指標が解約率です。20年以後も成長を続けるサービスにするためには、解約率を10%未満に抑える必要があります。解約率を改善するためには、顧客のサービスへの健康状態を把握し、事前に対策を講じることが大切です。
顧客の状態を把握することで、アップセルを行って売上向上を測ることもできます。常に顧客の体験を把握し、個別にフォローアップできるかどうかでサービスの拡大が決まります。
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