事業を成長させるカスタマーサクセス戦略の考え方

- 2021.10.23
- CXノウハウ カスタマーサクセス
- カスタマー サクセス, 戦略
市場環境の変化によって、カスタマーサクセスの必要性や重要性の高まりを感じている方も多いでしょう。
しかし実際は、国内においてカスタマーサクセスの導入はまだそれほど進んでいません。
その要因のひとつとして挙げられるのが「ノウハウ不足」です。
これからカスタマーサクセスに取り組む方が、どのように戦略を立て、事業の成長を促進するカスタマーサクセスを作っていけばいいのか、解説します。
カスタマーサクセスの戦略の必要性

カスタマーサクセスが重要だと言われるのは、収益に直結する取り組みだからです。
ただし、他部署との連携が必要とされる部分も多く、導入に際してはチームや部門を動かしていくにも推進力が必要になります。
そのため、ただ新しい部署を作るのではなく、本質的には組織としての変革を必要とされるほど大きな取り組みになり、事業の成功にも大きく影響を与えます。
しかし、国内ではまだ取り組んでいるところがそれほど多くないため、カスタマーサクセスに精通した人材も多くありません。
そのため、組織のトップが目的や方針などの戦略を定めておくことが、成功するかどうかを大きく左右します。
カスタマーサクセスの役割

カスタマーサクセスが担う領域は広いため、事業の中でどのような役割を担うのか、事業に対してどのような効果を期待するのかを定めておくことが重要です。
ここでは、一般的にカスタマーサクセスが担う役割について紹介します。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートや営業の役割の違いなど、全体像を理解したい方はこちらの記事も参考にしてください。
チャーンレート改善
サブスクリプションモデルにおいて、一番避けなければならないのが解約(チャーン)です。
同じような意味で、リテンションレート(継続率)の改善とすることもあります。
解約がなければ顧客が積み上がっていき、複利的に将来の売り上げを大きく伸ばすことができます。
一方、解約が増加すれば事業が成長しないだけでなく、最悪の場合にはLTVがCACを下回って、新規顧客を獲得するほど赤字になる可能性も。
もし、サブスクリプションモデル以外の事業をされているのであれば、リピート率の改善などに置き換えて考えてみるといいでしょう。
アップセル、クロスセル
ひとつのプロダクトを提供している場合にはアップセル、複数プロダクトを扱っている場合にはクロスセルを行なって、顧客あたりの売上を上げていく活動も必要です。
そのため、顧客のシーズを見つけ出し、案件化することが求められます。
カスタマーサクセスの役割として紹介されることが多いですが、企業のフェーズやプロダクトによって分かれます。
詳しくはこの後で扱います。
VOC収集
VOC(Voice of Customer)とは、自社のサービスやプロダクトに対するお客様の声です。
カスタマーサクセス担当者は、顧客の意見や要望を集めて関係部署へフィードバックし、プロダクトやサービスの改善を行います。
もちろん、すべての声を取り入れるわけにはいきません。
顧客の要望をどこまで反映すべきかを判断することも、重要な役割です。
UIやサポート体制などにCXやUXを阻害しているものがないかを検証するには、現場の声が大いに役立ちます。
2nd Order Revenueの仕込み
2nd Order Revenueとは、いい口コミの創出やサービスの評判を上げることによる新規案件獲得のことです。
ある程度の施策は考えられますが、意図的に発生させるのは難しく、あまり意識されないこともあります。
しかし、これが顧客満足度の向上の結果として捉えたときには、戦略の中に取り入れておくべきものです。
一般的なカスタマーサクセスの業務運用

カスタマーサクセスマネージャーが役割を果たすためには、実際の業務に落とし込んでいく必要があります。
カスタマーサクセスの業務は大きく分けて3つです。
それぞれでKPIを設定し、ヘルススコアの管理をしながらアクションを起こしていきます。
カスタマーサクセスのKPIはこちらの記事も参考にしてください。
オンボーディング
顧客に自社サービスの使い方や活用方法を知ってもらい、実際に使えるように支援していくことです。
カスタマーサクセスの業務の中でも、多くの工数をかけるタイミングです。
なにをKPIとするかは、どこまでをオンボーディングのゴールに設定するかによって変わります。
サービスを利用できる状態まで登録や設定を終わらせるなど、設定の完了をKPIとすることもあれば、スムーズに運用が行われていると言えるアクション(ログイン頻度や特定機能の使用回数など)をKPIとすることもあります。
導入から活用までのフローを整理して、顧客と一緒にアクションに落とし込んでいくことが重要です。
トレーニング
導入から活用までのプランやフローが決まれば、利用方法や活用方法をトレーニングしていきます。
オンボーディングと並行して行われ、マニュアルの整備や説明会を実施するのが一般的です。
オンボーディング段階で、興味づけや成功体験のイメージの共有がうまくいっていないと、マニュアルを作っても読まれない、説明会を開催しても参加してもらえないなどという課題が出てきます。
そのため、KPIも説明会参加率やマニュアル閲覧率などに設定することができます。
ポップアップやチャットボットでマニュアルに誘導することも、マニュアルの閲覧率を上げるのに役立ちます。
説明会やマニュアルを準備しただけで終わらず、いかに人を巻き込んでいけるかが重要です。
ファン化(ロイヤルティ構築)
導入がスムーズに進み利活用されている状態が作れたら、顧客ロイヤルティを高めてファンになってもらうためのアクションを起こしていきます。
具体的には、ユーザーコミュニティの運営やイベントの実施など。
利用者同士の交流を生み出したり、活用事例を共有したりするための運営的な役割を担います。
事業がある程度、成長した段階で取り組まれることが多いものの、どこまで収益に直結するかがわかりにくく、カスタマーサクセスの中でもまだまだ浸透していない領域です。
うまく運用できれば、ユーザー同士の交流から成功事例や知見の共有などが生まれ、オンボーディングやトレーニングの役割を担ってくれることもあります。
役割を明確にするための担当領域の設定

カスタマーサクセスの役割で軽く触れましたが、アップセルやクロスセルなど、エクスパンションは誰が担当するのかが会社によって違います。
セールスなのかカスタマーサクセスなのか、誰が担当するかの方針を決めておく必要があります。
顧客と日々、接し、利用状況を把握しているのはカスタマーサクセス担当者です。
そのため、顧客のシーズを見つけるのはカスタマーサクセスの役割であることはまちがいないでしょう。
しかし、セールスとなると、カスタマーサクセスとは別のスキルが求められます。
小規模なチームでそれぞれが複数の役割を担う必要がある場合や、SMB向けプロダクトの場合は、カスタマーサクセスが案件化からセールスまでを担うのが一般的です。
クライアントの規模が大きい場合や、セールスがそれなりの規模のチームになっていれば、商談はフィールドセールスが行うのが効率的にもいいでしょう。
エクスパンション戦略は収益へ直結する重要な部分です。
事業のフェーズやメンバーのスキルセットなどから柔軟に設計していくことが必要です。
カスタマーサクセス運用の注意点

理念の共有、浸透
カスタマーサクセスの理念を社内全体に浸透させることが重要です。
まだまだ新しい分野であるカスタマーサクセスは、根気強く取り組まなければ社内に浸透しません。
セールスやマーケティングとも大きく関連しているため、理念の浸透がセールスやマーケティングにも大きく影響します。
社内全体でカスタマーサクセスの理念が共有できれば、マーケティングのメッセージも変わります。
LTVに貢献しない顧客を避けるようになり、CXも良くなります。
CXの向上、カスタマーサクセスの実現は企業全体で取り組むもの、という理解が何よりも重要です。
適正人材のアサイン
カスタマーサクセス人材はまだ多くありません。
チーム立ち上げにあたって、外部から人材を調達するのは難易度が高いもの。
業務フローの構築が適切にできていれば、自社内から適性のある人材をアサインすることで対応できます。
カスタマーサクセス業務の特徴は、プロアクティブで予測性、分析性が高いことです。
カスタマーサポートよりも、顧客へ自発的に働きかける営業人材や、分析してアクションを起こすことが得意なマーケティング人材などからアサインすると、適性の高い人材が確保しやすいでしょう。
優先順位を明確にする
カスタマーサクセスの業務領域は多岐にわたります。
マーケティングやセールスに関与することもあれば、プロダクトに関しても顧客からのフィードバックを伝える必要があります。
そのため、自社のフェーズに応じた優先順位付けをしなければうまくいかない可能性が高いでしょう。
まず、何よりも大事なのが、チャーンレートの改善と顧客ロイヤルティの構築。
そのための課題の特定、KPIとアクションの設定をすることで、事業は自然と成長へと向かうはずです。
ツールの活用で分析とアクションの効率化と確度向上を
ツールを使うと、顧客分析やヘルススコアの管理を精度高く簡単に行うことができます。
カスタマーサクセス担当者一人あたりの対応クライアント数を増やすためにも、ツールの活用は不可欠です。
弊社では、サブスクリプションサービスのLTVを向上させる顧客分析ツールを提供しています。
顧客ロイヤルティを劇的に向上させ、解約率の低下、LTVの向上を実現します。

トップダウンでカスタマーサクセス戦略を立てて事業成長を実現

何度もお伝えしてきたように、カスタマーサクセスの役割は事業の収益に直結して大きく貢献するものです。
関係部署も多く、業務も多岐にわたるため、トップが責任を持って戦略を立てることが、取り組みを成功させるために重要になります。
カスタマーサクセス担当者にどのような役割を期待し、現在の業務にどのように組み込んでいくのか。
カスタマーサクセスの取り組みを戦略的に取り入れ、事業の成長を確実なものにしてください。
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