CXMとは?CS / CRMとの違い・メリット・成功させる5つのポイント・成功事例を紹介

近年注目を高めるCXM(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)。本記事では、CXMの意味、CS・CRMとの違いといった基本知識から、企業がCXMに取り組むメリット・ポイント・具体的な施策・事例まで紹介します。
顧客満足度をより高めるための施策を検討している企業はぜひ参考にしてみてください。
CXM(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)とは?

CXMとは、顧客体験を管理・改善することを指します。Customer Experience Management(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)の頭文字を取った言葉。カスタマーエクスペリエンスは顧客体験を、マネジメントは管理を意味しています。
CXMとCS・CRMとの違いとは?

「顧客体験」と聞くと、CSやCRMという言葉が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。
次からは、CXMと混同されがちなCSとCRMについて、CXMとの違いを解説していきます。
CXMとCSとの違い
CXMと一緒に語られることの多い考え方に、「CS」があります。CSとは、Customer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)の略で、顧客満足を意味する言葉です。
CSとCXMの違いは、「顧客体験のどの部分に焦点を当てるか」にあります。CSで焦点を当てるのは、顧客体験の一連の流れを分解した「一つひとつの顧客体験」です。一方、CXMは一連の顧客体験を俯瞰します。
例えば店舗で商品を購入する体験をする場合、CSでは「入店時のあいさつ」「お店の品揃えの良さ」「購入時の対応」など、一つひとつの顧客体験の向上を目指します。一方、CXMでは一連の顧客体験をより良いものにするために、全体に目を向け、改善できる部分を探っていきます。
CSの積み重ねが、CXMの向上に繋がるイメージをするとよいでしょう。
CXMとCRMとの違い
CXMと似た言葉に「CRM」があります。CRMとはCustomer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネジメント)の略で、顧客との関係を管理することです。
CRMでは、住所や年齢・性別などの「顧客の基本情報」はもちろん、顧客との接点履歴やこれまでの取引実績などを管理します。どの顧客と、どんな関係を構築してきたのかに焦点を当てることで、一人ひとりの顧客とより良い関係を築いていこうという考え方です。
CRMもCXMも「顧客とより良い関係を築くこと」を目的とするものの、「どこに焦点を当てるか」に違いがあります。CRMで焦点を当てるのは、接点履歴や過去の取引実績などの「事実」。CXMで焦点を当てるのは、顧客がどんな体験をして、どう感じたかという「感情」に焦点を当てています。
関連記事:CRMとは?データを活用してカスタマーサクセスを効率的に推進する方法
CXMはなぜ注目されているの?企業が取り組むメリット

CXMが注目されているのは、企業として取り組むメリットが多いからです。具体的には、次のようなメリットがあります。
- 自社にどんな顧客がいるのかを俯瞰できる
- 顧客が、どのようなことに心を動かされるのかがわかる
- 顧客を深く知ることで、顧客体験を効率よく改善できる
CXMに取り組むことで、企業は自社の顧客について深く理解し、一人ひとりの感情に沿った顧客体験を提供できるようになります。顧客のことを理解したうえでアプローチできるので、失敗や成功の理由も深掘りしやすいです。
企業はCXMにより、スピーディーに顧客体験を改善し、効率よく顧客のロイヤリティを高められるでしょう。
CXMを成功させる5つのポイント

CXMにはじめて取り組む場合、「何から手を付けていいかわからない」と困ってしまう企業も多いでしょう。次からは、CXMを効率よく進め、成功させるための5つのポイントをお伝えします。
ポイント1.KGI・KPIを設定する
CXMを成功させるポイントの1つ目は、KGI・KPIを設定することです。
KGIもKPIも、目標達成の度合いを測るための評価指標です。KGIは「Key Goal Indicator」の略で最終目標に対する達成指標、KPIは「Key Performance Indicators」の略で最終目標達成に向けた中間的な指標を指します。
CXMにおけるKPIには、顧客のロイヤルティを示す指標である「NPS」や、ユーザーのリピート率などが重視されます。
関連記事:NPSはどう計測する?計測におすすめのツール5選と計算方法
ポイント2.顧客理解を深め、可視化する
CXMを成功させるポイントの2つ目は、顧客理解を深め、可視化することです。
CXMで顧客とより良い関係を築く目的は、ロイヤルカスタマーを育て、自社の製品やサービスをより長く使ってもらうことにあります。そのためには、顧客がどんなことに価値を感じ、何に心を動かされたのかを理解しなければなりません。
顧客のことを理解するためには、集めた顧客の声を数値として可視化しましょう。可視化したものをKGIやKPIと照らし合わせることで、どこをどう改善すべきかも見えてきます。
ポイント3.顧客のセグメントごとに顧客体験を最大化させるアプローチを行う
CXMを成功させるポイントの3つ目は、顧客のセグメントごとに、顧客体験を最大化させるアプローチを行うことです。
セグメンテーションとは、顧客を属性ごとにグループ(セグメント)分けすることです。例えば男性と女性、若年層と高齢者層、初回購入者とリピート顧客では、それぞれ求めているものも価値観も異なるでしょう。
顧客という大きな1つのまとまりを属性ごとに分け、それぞれのセグメントに合った顧客体験を提供しましょう。
ポイント4.現場で運用できる設計を行う
CXMを成功させるポイントの4つ目は、現場で運用できる設計を行うことです。
どんなに深く顧客を理解し、セグメントごとに最高のアプローチを考えついたとしても、実行できなければ意味がありません。KGI・KPIを設定し、セグメントごとにどんなアプローチをするのか決めたら、現場で運用できる設計を行いましょう。
例えばセグメントごとにメルマガを配信できるような仕組みを作ったり、顧客の声を収集・分析できるツールを使ったりといった方法があります。
ポイント5.ABテストやKPIを振り返り、効果測定をする
CXMを成功させる5つ目のポイントは、ABテストやKPIを振り返り、効果測定することです。
ABテストとは、同じ内容のWebページやLP、広告を異なるデザインで数パターン作り、どのパターンへの反応が最も良いのか比較することです。KPIと実際の数値を照らし合わせながら、ABテストを繰り返し、コンテンツをブラッシュアップしていきましょう。
CXMの実現のために何を行う?具体的な3つの取り組み方法

CXMへの取り組みは、ただ漫然と取り組んでも結果を出すのは難しいものです。次からは、CXM実現のための具体的な取り組み方法を、3つ紹介します。
1.顧客データから顧客のセグメントを分類する
CXMを実現するための1つ目の方法は、顧客データから顧客のセグメントを分類することです。
すでにCRMやSFAなどのツールを使っているの場合、ツール内に顧客の性別や年齢、職業などの「属性データ」が保存されているはずです。まずは「自社にはどんな顧客がいるのか」を洗い出し、属性ごとに分類していきましょう。
顧客のセグメント分類は、顧客分析のための専門ツールを使うと効率的です。近年では一括購入が必要なCRMのようなツールだけでなく、KiZUKAIのようなサブスクリプション制のツールも増えています。自社の顧客を可視化するために、必要に応じてツールを活用してみることもおすすめです。
2.カスタマージャーニーマップを作成する
CXMを実現するための2つ目の方法は、カスタマージャーニーマップを作成することです。
カスタマージャーニーマップとは、顧客が商品やサービスとどのように関わるのか、一連のプロセスで表したものです。顧客はどんなときに商品やサービスの存在を知り、どんなときに購入や利用を検討するのか。一連のプロセスを、セグメントごとに可視化しましょう。
関連記事:カスタマージャーニーとは?マップの作成方法、活用方法など全体像をまとめて解説
3.セグメントごとに顧客体験を最大化させる施策を検討する
CXMを実現するための3つ目の方法は、セグメントごとに顧客体験を最大化させる施策を検討することです。
顧客体験を最大化させる施策は、セグメントごとに異なります。広告を見て購入をすぐに決める顧客もいれば、購入前に問い合わせをしたり、商品やサービスの公式サイトを隅々までチェックしたりする顧客もいるでしょう。
商品やサービスの認知から購入まで、セグメントごとにどんなプロセス(カスタマージャーニーマップ)を辿っているのかを深く分析することで、セグメントごとに最大化された顧客体験を提供できます。
CXMの成功事例3選

CXMの実現のために、どのような手順で取り組み、各プロセスで何をすればいいのか、イメージできたでしょうか。
最後に、CXMの具体的な成功事例を3つ紹介します。CXMに取り組むとどんな成果が得られるのか、他社はどのように取り組んでいるのかを確認することで、自社の取り組みイメージもハッキリしてくるでしょう。
通信事業での成功事例

携帯電話の通信回線を提供する企業では、CXMに取り組むことで、解約率を下げることに成功しました。
まずはツールを使って契約期間ごとの解約率を可視化し、解約した元顧客のセグメント分けを実施。セグメントごとに解約理由を分析すると、「通信量が増えるほど通信環境が悪くなること」に原因があるとわかってきました。
通信量が多い顧客に対しより良い通信環境を提供するプランを提案することで、解約率の3%低下、そしてアップセル率の15%向上を実現しました。
物品・サービスのサブスク事業での成功事例

物品・サービスのサブスク事業を行う企業では、契約期間と担当者ごとの解約率を分析することで、解約率を2%下げることに成功しました。
契約期間ごとの解約率をグラフ化することで、どのタイミングでの解約が多いのかを可視化。さらに、担当者一人ひとりの解約率もグラフ化し、解約率の高い担当者と低い担当者を把握しました。
解約率の高い担当者を再教育し、低い担当者に「解約率の高い初期ユーザー」を担当させることで、解約率の2%低下を実現しました。
オンライン英会話のサブスク事業での成功事例

オンライン英会話のサブスク事業を行う企業では、契約期間ごとの解約率を可視化し、どのような要素が解約に影響を与えているのかを分析しました。
まず、契約期間ごとの解約率をグラフ化することで、契約2ヵ月目と5ヵ月目に解約率が高くなることが判明。さらに、どのような要素が解約に影響を与えているのかを分析し、動画視聴数やレッスン参加数の低いユーザーほど解約していることを明らかにしました。
解約の可能性があるユーザーに対して適切なアクションを行った結果、解約率の5%低下、アップセルの15%向上に成功しました。
CXMを成功に導くためには顧客理解が重要

事例からもわかるように、CXMを成功に導くためには、顧客理解が重要です。顧客のことを理解していなければ、どのような顧客にどのようなアプローチが有効なのか、考えることすら難しいでしょう。
まずは自社にどんな顧客がいるのかを洗い出し、性別や年齢、職業などの属性ごとにセグメンテーションしてみましょう。セグメントごとに購入や解約の理由を分析し、何が理由で購入(解約)に至ったのかを明らかにできれば、KPIも効率よく改善できるでしょう。
CXMに取り組むのがはじめてという企業には、ツールの活用がおすすめです。AIによりセグメントごとの解約傾向を分析するツールを活用することで、顧客の分析だけでなく、解約リスクの高いユーザーを抽出できるように。自社では気がついていなかったポイントに気がつけるかもしれません。
本記事を参考に、CXMに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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