カスタマージャーニーとは?マップの作成方法、活用方法など全体像をまとめて解説

- 2020.06.02
- CXノウハウ カスタマージャーニー
- カスタマージャーニー, とは, マップ
マーケティング施策を考えるときに、顧客の行動や感情を把握できているでしょうか?
チャネルが多くなった現代では、顧客がどのように情報と触れ、どのような感情を抱くか、どのような行動をするのかを多面的に捉える必要があります。
そこで、顧客理解を深めるのに役立つのがカスタマージャーニーです。
カスタマージャーニーマップの作り方や活用方法まで紹介するので、ぜひ課題解決に活かしてください。
カスタマージャーニーとは何か?

カスタマージャーニーとは、直訳すると“顧客の旅”です。
顧客が商品、サービスを知ってから購入、購入後までの「行動」「思考」「感情」などのプロセスのことを指します。
カスタマージャーニーを図表にマッピングしたものがカスタマージャーニーマップです。
カスタマージャーニーとペルソナの違いは?
ペルソナは“理想の顧客像”のことです。
カスタマージャーニーは、ペルソナが自社商品とどのような接点を持ってサービスを利用するかを把握します。
社内で共通認識を持つために定めた理想の顧客がペルソナ、理想の顧客の動きがカスタマージャーニー、ということになります。
カスタマージャーニーとユーザーシナリオの違いは?
カスタマージャーニーは実際のユーザーの動きです。
それに対してユーザーシナリオは、理想的なカスタマージャーニーのことを指します。
ユーザーシナリオを描いたとしても、実際には顧客が順序よく想定したフェーズを進むとは限らず、同じフェーズに止まり続けることもあります。
ユーザーシナリオとカスタマージャーニーのずれを認識することで、何を改善すべきなのか、何をKPIとして追うべきなのかを明確にすることが可能です。
カスタマージャーニーが注目される理由

現代のマーケターの間で、カスタマージャーニーへの注目が高まっています。
その理由は、接点の多様化とツールの進歩です。
スマホの普及による接点の多様化
総務省の「情報通信白書 平成30年度版」によれば、2017年末時点でのスマホ普及率は、個人で60.9%、世帯で見れば75.1%。
スマホが普及したことにより、顧客の商品との接点が多様になりました。
例えば通勤電車では、スマホがない時代は新聞、雑誌、交通広告を見ていたものが、スマホが普及することにより、Webを通してメディアやSNS、広告を見る機会が増えています。
接点が多くなり複雑化しているため、接点を把握する手法としてカスタマージャーニーが注目されているのです。
複数のSNSの発達による接点の分散化
Facebook、Twitter、Instagramを筆頭に、数多くのSNSが普及しています。
マーケターの方であれば、いくつものSNSを使い分けているのではないでしょうか。
SNSにはそれぞれ特色やユーザー層の違いがあり、年代によっても利用しているSNSが違います。
多くのSNSが普及することにより、ユーザーが分散、接点が多様化したこともカスタマージャーニーが注目される理由です。
デジタルツールの進歩による詳細なデータの取得
デジタルの特徴として、数値をデータとして取れる、という点が挙げられます。
テレビCMなどのマスメディアと違い、Web上での動きや購入はあらゆるデータ把握が可能。
例えば、GoogleAnalyticsは無料ツールながら、Webサイトへの流入数や滞在時間、CVの流れなどを数値で把握できます。
また、有料ツールも数多く開発されており、広告計測や広告閲覧から検索によるWebサイトへの訪問など、複雑な行動の可視化ができるアドエビスのようなツールも提供されています。
さまざまなデータが取れるようになったことも、カスタマージャーニーが注目される理由のひとつなのです。
カスタマージャーニーマップを作成するメリット

カスタマージャーニーを把握するには、カスタマージャーニーマップを作ることが重要です。
マップを作成して明確にしておくことでさまざまなメリットが得られます。
社内で共通認識を持つことができる
カスタマージャーニーマップを作ることで、社内やチーム間での共通認識を持てることは大きなメリットです。
カスタマージャーニーマップを作る過程において、社内でデータ共有、リサーチを行うため、客観的なデータが集まります。
それを図表を用いて視覚化することで直感的に理解できるようになり、マーケティング担当以外にも顧客を理解してもらうことが可能です。
施策の運用がスムーズになる
共通認識があるため、チーム内での役割分担や施策の優先順位づけ、上司や営業担当者への説明などもスムーズに行えるようになります。
マーケティング施策の全体像が把握しやすくなるため、施策の目的やゴールも明確になります。
顧客目線で施策の立案、実行ができる
広告を嫌う消費者が増えているように、企業からの一方的なマーケティング施策は、場合によっては顧客を不快にしてしまう可能性すらあります。
カスタマージャーニーマップがあれば、どのタイミングで何を伝えるべきかが明確にわかります。
ユーザーシナリオとカスタマージャーニーのずれがあれば、現実の顧客行動に即したタッチポイントやメッセージに変更することができます。
カスタマージャーニーマップの作成方法

カスタマージャーニーマップの作り方を5つのステップにして紹介しましょう。
カスタマージャーニーマップを作成するときには、いくつか注意点すべき点があります。
それは、データを活用して顧客視点になること、初めから詳細に作ろうとしないこと、作った後もアップーデートをすることです。
この3つに注意しながら、5つのステップに沿って作成を進めてみてください。
ペルソナの設定
もしペルソナを設定していない場合、ペルソナの設定をします。
誰もがペルソナになり切れるくらい具体的にペルソナを設定することが大切です。
ペルソナの行動を仮説ベースで決定
次に、ペルソナの行動を仮説ベースで設計します。
顧客が自社サービス・商品の契約・購入までに、どのような行動を起こすのかを洗い出します。
顧客情報や商談・受注情報などがあれば活用できるはずです。
可能であれば複数人かつ、マーケティング部以外にも他部署のメンバーを集めて考えることをおすすめします。
仮説の検証
仮説が完成したら、顧客へのヒアリングやアンケートを活用して仮説の検証を行います。
検証に時間をかけていてはマップの完成が遅くなるため、ヒアリングに協力的な顧客へ声をかけたりアンケートを依頼するなど、まずは短期間で検証を行いましょう。
ここで、仮説がずれていれば顧客の声を反映してペルソナの行動を修正します。
フレームの設定
ここまできたら、カスタマージャーニーマップの大枠となるフレームを設定します。
まずはペルソナの行動をフェーズ分けして横軸に置きます。
整理する際には、AIDMAやAISASのような消費者行動モデルを基礎として、「認知」「興味・関心」「比較検討」「購入」などの購買プロセスを置くのが一般的です。
SNSに口コミが出やすいような商材であれば、最近注目されているULSSASなどもいいでしょう。
縦軸には、チャネル、タッチポイント、感情、思考などを置きます。
情報をフレームに当てはめてカスタマージャーニーを描く
最後に、検証した仮説をフレームに当てはめていきます。
図などを活用してできるだけシンプルに整理することで、視覚的に理解しやすいマップが完成します。
カスタマージャーニーマップの活用方法

ボトルネックを発見する
顧客行動が一連の流れとして把握できるため、全体最適の観点からボトルネックを見つけることが可能です。
フェーズとして設定しているのにKPIが設定されていない、タッチポイントに当てはまる施策が行われていないなど、マップ化したからこその発見があります。
顧客行動を一連の流れとして把握することで、KPIの見直しも容易になります。
課題の優先順位をつけて施策を立案する
カスタマージャーニーマップを作成することで、顧客がフェーズを移動するときに何がハードルになっているのかが明確になります。
緊急性や重要性、インパクトの大きさを比較することで、施策の優先順位をつけることが可能です。
カスタマージャーニーマップの事例
中部国際空港セントレア
参考:https://noren.ashisuto.co.jp/seminar/report/1187443_1574.html
Webサイト改善のためにカスタマージャーニーマップを作った事例です。
フェーズを4つにわけたシンプルなものですが、縦軸にインサイトを入れて、ユーザーが本当に求めていることを検討しています。
さらに、フェーズ内でぐるぐると行動を繰り返すこと、フェーズ内で行動の細分化がされています。
株式会社パソナ(就職活動)
参考:https://webtan.impress.co.jp/e/2013/11/27/16409?_fsi=OlwmXDaQ
新規採用のWebサイトリニューアルのためにカスタマージャーニーマップを作成した事例です。
縦軸を行動、思考、感情、問題にわけています。
ペルソナとなる学生に参加をしてもらうことで、その場でカスタマーの実際の行動が洗い出せ、作成時間はたった2時間でした。
自由に位置を変えられるようにふせんを用いている点も参考になります。
海外旅行
参考:https://www.advertimes.com/20160523/article222966/2/
海外旅行の事例です。
横軸を大きく3つに区切りながら、さらに14に細分化して検討されています。
縦軸にステージごとの課題やリスクが入れられるようになっているのが特徴的です。
申し込みをしてもらう、リピートしてもらう部分だけにフォーカスして、旅行体験の向上に関して何も提供していなかったという問題点が明確になっています。
無料で使えるカスタマージャーニーマップのテンプレート
1からマップのフレームを作るのは手間がかかる、1から考えるのが苦手という方もいるかもしれません。
インターネットで検索すれば、カスタマージャーニーマップのテンプレートはたくさんあります。
出てきた中から自分たちに合ったフレームを使用、または修正すれば手間が省けます。
弊社では無料でダウンロードで使えるテンプレートも提供していますので、よろしければご活用ください。

カスタマージャーニーマップの作成・分析に役立つツール
ここでは、カスタマージャーニーマップの作成に役立つツールと分析に役立つツールを紹介します。
カスタマージャーニーマップの作成に役立つツール
ExperienceFellow(エクスペリエンスフェロー)

参考:https://www.experiencefellow.com/
海外のカスタマージャーニーマップ作成ツールです。
実際の顧客にアプリを配布し、購買行動を記録してもらうことでユーザー体験を記録、カスタマージャーニーマップにまとめます。
月額制ですが、手頃な金額で試験的に導入しやすいです。
ただし、日本語に対応していないため、英語の理解力が必要なのがネックになります。
カスタマージャーニーマップの分析に役立つツール
アドエビス

広告効果測定ツールを基軸としたマーケティングプラットフォームです。
個別のユーザーごとに、初回接触がどこで、どのような媒体と接触をして最終的なCVに至ったのか、購入金額はいくらかなどといったデータが管理できます。
Web上で多くのマーケティング施策を打っている場合に、実際のカスタマージャーニーがどうなっているのかを詳細に把握できるため、作成したカスタマージャーニーマップとの整合性を確かめることが可能です。
カスタマージャーニーを学べる本

『はじめてのカスタマージャーニーマップワークショップ』
多数のワークショップで培われた手法が紹介されている本です。
カスタマージャーニーマップの作り方やBtoBとBtoCの違い、有名企業の事例などが紹介されています。
『マーケティングオートメーションに落とせるカスタマージャーニーの書き方』
マーケティングオートメーションを利用している、利用したいという企業のカスタマージャーニー作成に役立つ本です。
マーケティングオートメーションに落とし込めるカスタマージャーニーを作るためのポイントが紹介されています。
『The Customer Journey』
カスタマージャーニーについて、まずは広く学びたいという方におすすめの本です。
カスタマージャーニーについて広く浅く紹介されているため、簡単に全体像を把握するのに向いています。
30社の事例が紹介されているため、自社の業態に近い企業のものを見つけてカスタマージャーニーマップの作成に生かすこともできます。
まとめ:カスタマージャーニーの定期的な改善を

接点の多様化に伴って顧客行動が複雑化した現代において、顧客理解を進めるためにはカスタマージャーニーマップが有用です。
まずは数名でカスタマージャーニーマップを作成し、施策の立案や改善に活かしてみてください。
ただし、カスタマージャーニーマップは作って終わりではありません。
マップに沿って運用しながら、施策の方向性があっているかどうかを常にチームで共有していくことが重要です。
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