リテンションとは?人材採用やマーケティングにおける重要性

リテンションとは?人材採用やマーケティングにおける重要性

人事、そしてマーケティング領域でも近年注目されている「リテンション」について名前は聞いたことはあっても内容まで詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。本記事では、リテンションの意味や、注目されている背景、そして具体的なリテンション施策まで紹介します。

優秀な人材を会社に留め、獲得した優良顧客を離さないための施策は収益に直結します。ぜひ具体的な施策を確認してみてください。

リテンションの意味とは

まずは「リテンション」の意味を確認しましょう。リテンションは、本来「retention:維持・保存」との意味があります。マネジメントやマーケティング領域ではどのような意味で使われるのでしょうか。

マネジメントにおけるリテンションの意味

人材マネジメント領域におけるリテンションとは、「社員の定着率の向上(離職率の減少)」です。優秀なメンバーや、時間をかけて教育をした社員が抜けてしまうことは、会社にとって大きな損失です。従業員が転職することなく継続的に自社で仕事をできるような環境を作ること。また、人材維持のために行うための活動を人材マネジメント領域におけるリテンション施策と呼びます。

マーケティングにおけるリテンションの意味

マーケティング領域におけるリテンションとは、「既存顧客の維持」。商品・サービスを購入した顧客と継続的に関係を作り、友好な関係を築くこと。また、継続的に商品・サービスを購入してもらうために行う活動のことをリテンション施策と呼びます。

リテンションが注目されている背景

「社員や顧客の維持ができるのは確かにいいことだけれど、なぜ今注目されているんだろう。」と不思議に思う方もいらっしゃるかもしれません。実は近年リテンションが注目されているには、市場や環境の変化が大きく影響しています。

市場・環境の変化

まずは、人材マネジメント領域における環境の変化を確認してみましょう。

これまでの雇用体系は終身雇用制度が前提にあり、新卒入社した会社で定年退職までキャリアを積んでいく考え方がほとんどでした。しかし、グローバル化や少子高齢化にともなう人口減少などにより、経営環境は変わってきています。「定年退職するまで一社で勤めあげる」との考え方はもはや古い考えとなっています。

政府も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を提示し、2019年は「副業元年」ともいわれました。

参考:厚生労働省 副業・兼業

「副業」とは、勤めている会社の業務時間外に別の業務をすることですが、最近では様々な仕事をかけもちして働く「複業」と呼ばれる働き方をする人も増えています。

このような環境の変化や、転職をポジティブなものとして捉えるようになったことにより、人材の流動は激しくなっています。

会社としては、時間も費用もかけて教育した優秀な社員が、育ってきたところで会社を離れることになるのは大きな損失です。そのため、社内に優秀な人材を維持するためのリテンションが注目されているのです。

一部のビジネスモデルでは収益に直結する重要指標

次に、マーケティング領域でリテンションが注目されている背景を確認してみましょう。

近年急増しているSaaSやサブスクリプションモデルの継続課金制のビジネスでは、顧客のサービス継続率がビジネスの成長に直結する重要な指標です。

参考:SaaS事業計画はどう取り組む?作り方と評価方法を解説

参考:サブスクリプションモデルにおける重要なKPI!経営にどう活かすのか?

「1:5の法則」ともいわれるように、新規顧客にサービスを販売するためには、既存顧客に販売するの5倍のコストがかかります。

また、「5:25の法則」では、5%解約率を減らせると利益が最低でも25%上がるともいわれています。

これらの法則からわかるように、顧客を維持することは、収益へのインパクトが大きいため、リテンションがビジネスの重要な指標としても注目されています。

リテンションを行う目的・施策を導入するメリット

リテンションとは?人材採用やマーケティングにおける重要性_メリット

リテンショが注目されている背景は、市場やビジネスモデルの変化によることがわかりました。

これまでの説明で、リテンションを行う目的についてなんとなくイメージできた方も多いのではないでしょうか。では、次にリテンション施策を行う目的やメリットを詳しく掘り下げましょう。

マネジメントにおけるリテンション

人材マネジメントにおいてリテンションを行う目的は、優秀な人材を会社に留めることです。リテンション施策をすることでの具体的なメリットは以下です。

  • 採用に関わるコストを削減できる
  • 社内のスキル管理や、ノウハウ蓄積率が向上する
  • 働きやすい環境を整えることで、従業員のモチベーションが向上する
  • 顧客や・企業機密の流出を防止できる
  • 十分な人材が確保できていることで、安定的に長期的事業戦略を遂行できる

採用コストを抑えながら、優秀な人材やナレッジを社内にためておき、長期的に事業を遂行していけるのは大きな価値があるといえるでしょう。

マーケティングにおけるリテンション

マーケティングにおいてリテンションを行う目的は「売上の向上」です。リテンション施策をすることで、以下のようなメリットがあります。

  • 継続率が高くなることで売上が向上する
  • 既存顧客の口コミや評判の広がりが期待できるため、広告コストが下がる
  • 優良顧客からのフィードバックやデータを分析することで、商品・サービスの質向上に繋がる

リテンションすることで、単純に継続率向上による売上増加だけでなく、ロイヤリティの高い顧客による口コミ効果や、データ分析によるサービスの品質向上まで幅広い効果が期待できます。

リテンション施策の具体例

リテンションをするメリットについて把握したところで、実際にどのような施策をしたらいいのか頭を悩ませる方も多いでしょう。次に、リテンション施策の具体例を紹介します。

マネジメントにおけるリテンション

まずは、人材マネジメントにおけるリテンション施策です。社員の退職率を下げるためには、「金銭的報酬」「非金銭的報酬」の2種類を充実させることが効果的です。

金銭的報酬とは、給料や福利厚生などの待遇です。「同業他社よりも待遇が悪い」「転職したほうが報酬が上がる」となると、社員の流動は避けられません。

金銭的報酬を充実させるためには「能力を正しく評価して、報酬に還元されるシステムを作ること」がポイントです。能力があり会社の売上にも貢献している社員に対しては「会社もあなたを評価している」ということを示し、報酬にも反映させることで「正当に評価されている」「この会社で報酬が上がるチャンスがある」と思わせることができます。

しかし、いくら待遇を良くしたいと思っていても、ストックオプションには限界があるのが事実でしょう。そのため「非金銭的報酬」を充実させることも重要です。

非金銭的報酬を充実させるためには、以下のような施策が効果的です。

  • 社員の裁量範囲を拡充させる
  • スキルアップ・キャリア向上のための支援を行う
  • ワークライフバランスが実現できるような社内制度作り
  • 社内でのコミュニケーションを促す環境やイベントの開催
  • 経営層との対話やビジョンの共有
  • 心理的安全性を担保する
  • 選考段階で会社に合った人材を選定する

特に、ワークライフバランスが実現できるような制度を整えたり、社員が会社へのエンゲージメントを向上できるような環境を作っていくことが重要です。

マーケティングにおけるリテンション

顧客維持のためのリテンション施策としては、商品やサービスのブラッシュアップをするだけでなく、顧客とのコミュニケーションを取ることがポイントです。

商品やサービスの質は年々向上しており、単に「機能が良い」というだけでなく、「その商品を利用したいと思わせる意味」が重要になっています。ブランドの理念に共感した、商品開発のストーリーが魅力的だった、感動的な接客を受けた、など利用する意味を作るポイントは多々あります。

以下のような施策を試すことで、継続率をあげていきましょう。

  • 購入後のアフターフォローをいれる
  • 顧客データを管理し、運用する仕組みを作る(CRM)
  • 顧客一人ひとりにあわせたOne to Oneマーケティングを行う
  • 定期的に既存顧客と接触できるよう、情報発信やコミュニケーションをとれる場をつくる
  • ロイヤルカスタマーに対して特別な待遇を用意する
  • 顧客に寄り添ったカスタマーサービスを行う
  • 商品やサービスそのものを改善していく

マーケティングにおけるリテンションには「カスタマーサクセス」や「カスタマーディライト」の考え方も参考になるでしょう。

意味を理解してリテンションの施策実施を

リテンションは現在の時代背景にあった考え方であり、リテンション率を改善することは収益に直結しやすいため重要なKPIになりえます。

社員や顧客の維持に課題を感じている場合や、リテンション施策を実施していない場合は、ぜひ本記事で紹介した施策を試してみてはいかがでしょうか。

 

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