「すれ違い」を恋のきっかけに。ユーザーを飽きさせないCROSSMEのCX戦略とは
マッチングアプリの中で後発のサービスながら、多くのユーザーを集め特に20代の男女から評価を得ている「CROSSME(クロスミー)」。
マッチングアプリの特性上、カスタマーサクセスを実現すると解約率が上昇する中、どのような戦略を取り入れているのでしょうか。
そこにはエンタメ性を取り入れたCX向上がありました。
インタビュイー
株式会社プレイモーション 代表取締役社長平松繁和氏
インフォコム株式会社にてゲーム開発事業に携わったのち、2013年2月株式会社サーバーエージェント入社。
同年12月に株式会社プレイモーションを設立し、代表取締役社長に就任。マッチングアプリ「CROSSME(クロスミー)」を開発・運営。
まず初めに、「CROSSME」の概要についてお聞かせください。
「CROSSME」は、「すれ違いを恋のきっかけに」というコンセプトのマッチングアプリです。
街中ですれ違ったアプリユーザーと、いつ、どの街で、何回すれ違ったかが表示されるようになっており、お互いの了承が得られるとメッセージのやりとりが可能になります。
現在ご利用いただいてるユーザー総数は70万人ほどで、渋谷や新宿など人口密度が高い首都圏を中心にすれ違いが発生している傾向があります。
マッチングアプリというと、趣味や年齢、住んでいる地域などで検索し、絞り込みをかけるデータベース型を思い浮かべる方が多いと思いますが、「CROSSME」はすれ違いという偶然の出会いをきっかけにしている点が最大の特徴です。
婚活向けサービスというよりもライトな恋愛をテーマにしていることもあり、一般的なマッチングアプリと比較して若い方にご利用いただいており、男女ともに20代前半の年齢層が最も多くなっています。
現在のポジションはどういった経緯で築かれたのでしょうか。
私は前職でゲーム開発の企業に従事していたこともあり、元々当社(株式会社プレイモーション)はゲーム関連事業を行う予定で立ち上がった会社でした。
しかしなかなかゲーム事業では好ましい結果を残せない中、右肩上がりに成長を続けている婚活・恋活市場に着目し、2016年に「CROSSME」を新規事業として立ち上げました。
当時、FacebookなどSNSと連携して本人確認をするといったようなシステムが普及し始めて、マッチングアプリの安全性が確保され何かしらのサービスを利用する人がどんどん増えていっている状況でした。
競合となるマッチングアプリの数もかなりたくさんあったのですが、データベースから好みの相手を検索するという「条件検索型」のサービスが多かったんです。
そこで何かしら遊び心を取り入れ、「面白い体験」としての出会いを提供できないかと考えた結果、「すれ違い機能」が生まれたという流れになります。
元々ゲームを含めてエンタメ系の仕事に関しては長く携わってきたので、その経験を活かしてちょっとでも楽しく利用いただけるように意図しながら開発したのが、今のポジションを取れた要因の一つですね。
また、当社はサイバーエージェントの子会社なのですが、同じグループ内に「タップル誕生」という業界最大級のマッチングアプリを運営する株式会社マッチングエージェントがあります。
マッチングアプリの中で最も重要なポイントである「どんな人にどんな人をアプリ上で結びつけるか」というアルゴリアズムや、ユーザーを魅力的に見せるためのUIなど、かなり参考にしていることが多いです。
失敗事例も含め、タップル誕生が積み重ねてきたノウハウをシェアしながら進めらたことは、「CROSSME」のポジションが確立する上でなくてはならない存在だったと思います。
CXの向上に関して、どんなことに意識しながら取り組まれていますか?
繰り返しになってしまいますが、いかに飽きさせないようにエンタメ性を入れていくか、いかに楽しみながら利用していただくか、ということが最も大事なポイントですね。
ユーザーさんからのアンケートを精査した結果、マッチングアプリを利用し始めてから恋人を見つけるまでに平均で4ヶ月ほどの時間がかかることが分かっています。
サービスを利用しても恋人を見つけられずに退会してしまうケースもゼロではありませんし、すれ違い機能がどれだけ珍しい出会い方だとしても、淡々とマッチングを提示するだけでは飽きられてしまうリスクがあります。
ですので出会いの偶然性を際立たせたり、「なんとなくこの人は気になる」といった期待感を強められるような演出については工夫して取り組んでいますね。
具体的な例を挙げますと、誕生日が同じ人とすれ違いが発生すると少し特殊な演出が出るように設定しています。
普段であれば特別気にならないかもしれなかった人でも、誕生日が同じという条件が一つ入るだけで、運命的な意味合いを感じるケースって多いと思うんですよ。
また例えば同じ場所に住んでいる人が、同じ旅行先でたまたますれ違ったといったケースは、また違った意味合いがあると思います。
あと細かいところですが、「場所と紐付いた出会い」を強調させるためにすれ違いフィードの画像はそれぞれの地域毎に合わせたものを使用するといったアレンジをしています。
当然のことながら、マッチングアプリである以上デリケートな情報を扱っているサービスなので、いかに安心を担保するかについても忘れていません。
24時間体制でサポートを行っているほか、地域を指定しておけばその場所ではすれ違いが発生しない機能を付けるなど「友人や同僚に利用しているのを知られたくない」という方でも気軽に利用いただけるように工夫しています。
今後どのようなことに取り組んでいきたいですか?
2020年で「CROSSME」は4周年を迎えますが、これまでのところは競合サービスとの差別化や独自性という部分に戦略的に注力してきました。
これからは、サービスを通じてお客様がより幸せな恋愛をしていただくために、もっとそれぞれの価値観にぴったりな出会いを提供できればと考えています。
無事カップルになられた方はサービスの利用を中断する、という矛盾を抱えてはいるものの、満足度を高め続け、お客様が友人にも利用を勧めていただけば嬉しいですね。
恋愛に関することなので、指標化するのは困難だとは思いますがご意見やアンケートを参考にし、幸せを感じていただける方が一人でも増えるように粘り強く挑戦していきたいですね。
少し概念的な内容になってしまうのですが、社会全体に目を向けると、これからゆるやかに幸福の形が変わっていくかもしれないと感じています。
コロナの影響もあり、お金をかけた派手なモノやコトよりも、身近でさりげない出来事に幸せを感じるような人も増えてくるかと思います。
そうなると仕事や恋愛などのライフスタイルも変わってきて、一層多様性のある社会になるかもしれません。
なかでも結婚や恋愛というのはやはり人生において大きなウェイトを占めていると思うので、価値観の変遷をクロスミーに反映しながら出来る限りのサポートをしていきたいですね。
編集後記
「マッチングアプリにエンタメ性を持たせる」というポイントが、明確なポジショニングに寄与しているだけでなく、CX向上の根幹でもあると感じました。
Googleの検索エンジンやFacebookのSNSなど、今や世界的な大企業も元々は「遊び心」から生まれたものと言えるでしょう。
強力な競合企業がひしめくなか、プロダクトのUIや機能に遊び心を持たせることは、ロイヤリティユーザーを増やすためのヒントになるケースも多いのかもしれません。
-
前の記事
「自分たちのアイデンティティに貢献したい」「LUCY ALTER DESIGN」が届ける新しい日本茶文化とは 2020.07.19
-
次の記事
学習管理アプリを提供するスタディプラス株式会社の成功要因となったCXとは 2020.07.24