2つの事業で組織改善にアプローチする株式会社OKANのCX(顧客体験)戦略。

株式会社OKANは、ぷち社食サービス「オフィスおかん」と、組織改善サービス「ハイジ」を提供している企業です。
「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションとして掲げ、リテンションマネジメントに目を向けたサービス展開を行うことで「望まない離職を防ぎ、働きつづけられる社会の実現」を目指しています。
今回は、代表取締役CEOの沢木恵太さんに、「オフィスおかん」や「ハイジ」が誕生したきっかけや顧客体験(CX)についてどう考えているのかについて、幅広く伺いました。
インタビュイーのご説明
株式会社OKAN 代表取締役CEO 沢木 恵太さん
1985年長野県茅野市生まれ、中央大学商学部卒。
フランチャイズ支援および経営コンサルティングを行う一部上場企業にて新規事業開発、ベンチャー企業でゲームプロデューサー兼事業責任者を経て、EdTech領域のスタートアップに初期メンバーとして参画。
その後、2012年12月に株式会社OKAN(当時CHISAN)を設立し現職。
「働く人のライフスタイルを豊かにする」をミッションに、2014年3月には、ぷち社食サービス「オフィスおかん」をリリースし、多数のメディアで紹介されるなど注目を集めている。
1品100円で買える社食サービス「オフィスおかん」と、組織改善サービス「ハイジ」。
まず、貴社のサービスの概要や特徴について教えてください。

弊社では、「オフィスおかん」と「ハイジ」という2つのサービスを提供しています。
「オフィスおかん」は、オフィスに専用の冷蔵庫や自動販売機を置き、真空包装されたお惣菜を提供する“法人向けのぷち社食サービス”です。
1品100円という低単価で食べられること、管理栄養士が監修した、安全・健康的・美味しい商品であること、朝食やお持ち帰りなど好きな商品を好きなタイミングで利用できることが特にご好評いただいています。
また、導入を判断する担当者に向けては、単なるお惣菜配達サービスではなく、人材定着サービスとしてアプローチをして参りました。
安く食事を提供できる「福利厚生」としての側面はもちろん、従業員の体に気を遣う「健康経営」、育児や介護で忙しい人や単身家庭の生活を支える「従業員支援」としてもお役立ていただいています。
今では累計2,000社以上に導入いただいており、従業員にとっても企業にとってもメリットのあるサービスとして認知いただいています。
「ハイジ」は、従業員が長く働き続けられる組織を作るための“組織改善サービス”です。
働き続けられるかどうかというポイントに着目したアンケートを従業員に実施し、家庭との両立、健康状態、上司部下や同僚との関係性、給料や昇格などの待遇など、12の項目にカテゴライズして企業独自の課題を可視化致します。
改善のための施策選定をサポートし、フィードバックや効果測定も行っています。
離職の原因を探って早期から対策することで、自社組織の安定、人材コスト削減、従業員満足度の向上に寄与しています。
激務による食生活の乱れで離職を検討した経験が、企画立案に繋がった。
なぜ現在の取り組みを始められたのでしょうか。

株式会社OKANが掲げているミッションの通り、「働く人のライフスタイルを豊かにする」ための施策を打つために立案に至りました。
元々新卒で入社した企業がハードワークで、食生活が相当乱れていた時期があったんです。
結果、体調を崩して離職を考えるようになったんですが、同じように食生活の乱れが原因で「望まない離職」を考える人が他にもいるんじゃないか、と思ったのが「オフィスおかん」誕生のきっかけですね。
食事はお惣菜やカップ麺、お菓子やジュースで済ませる時もある、食べる時間もバラバラ、そもそも食べなかったり、飲み会続きで暴飲暴食になりがちだったり、など人によって悩みもさまざまです。
せっかく能力やエンゲージメントが高い社員であったとしても、辞めてしまっては会社にとっても本人にとってもマイナスです。
従業員1人1人の生活まで見つめた人事管理サービスって、やろうと思っても何から手を付けたらいいのか分からないことが多く、いろいろ調べてどうにかやったはいいけど、その後目に見える形での結果測定をきちんと行えていないこともあります。
「ハイジ」も同じような考え方から始めていまして、「オフィスおかん」が課題解決のためのツールであるのに対し、「ハイジ」は課題特定のためのソリューション、という位置づけになっています。
従業員の定着のための施策を定量的に評価すること、PDCAを回すこと、「施策を打つこと」が目的にならないようリードすることに注力し、総合的なリテンションマネジメントを意識したサービス展開を行っています。
エンドユーザーのCXと、導入を検討する経営層のCXを分けて考えることが大切。
それでは、当メディアの特徴であるCXについてお伺いします。現在CXを上げるためにどのような取り組みをされていますか?

「オフィスおかん」は、従業員のCXと導入する企業本体のCXを分けて考えているのが特徴的です。
従業員の方々にとっては、オフィスから出ることなく手軽に食事が買えること、栄養やバランスに気を遣ったメニューを1品100円で購入できることが最大のCXになっています。
導入する企業の経営者や総務部の方にとっては、従業員の利便性、経済性、健康安全性はもちろん、「オフィスおかん」を導入することによる従業員満足度向上をCXとして提供しています。
本来オフィス内で購入する食事は高価になりがちですし、100円で収支のバランスを取るというのは、本来到底できることではありません。
経営者や福利厚生担当の方に「オフィスおかん」の価値をしっかり伝え、会社が負担する意義を見出してもらえれば幸いです。
「ハイジ」のCX向上においては、従来のサーベイよりも分かりやすいような設計にすること、あえて的を絞ったシンプルなフローを採用することを意識しています。
日本全体でみるとリテラシーをしっかり持って組織サーベイを行っている企業って思ったよりも少ないし、従業員満足度調査をやったとしても、振り返りや改善の施策を打たないまま、という企業も多いんです。
このようなリテラシーが少ない企業、レガシーな企業をターゲットにするためには、シンプルで分かりやすい設計にすることが肝心でした。
顧客に合わせた難易度設定を行い、とにかく使いやすく、理解しやすいサービスになるようにしています。
付帯サービスを見直し、幅広い顧客にアプローチをしていきたい。
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

「オフィスおかん」に関しては、「利便性」「経済性」「健康・安全性」の基本構造を担保できるよう、付帯サービスの拡充を検討しています。
顧客分析を入念に行って、ニーズが高いと思われるプロダクトを改善していきたいと思っています。
「ハイジ」は関しては、顧客のフェーズに合わせて付加機能を提供する、あるいは機能を絞るなど、顧客分析に基づき最もニーズの高いプロダクト改善を実施していこうと考えています。
各事業領域において「サービスの導入ハードルが高い」とされている業界に積極的にご利用いただけるようアプローチしていきたいです。
より多くの方々にサービスを利用してもらうことが、めぐりめぐって、多くの人のライフスタイルを豊かにすることに繋がるのかなと考えていますね。
従業員のためにどんな行動をするか?リテンションマネジメント市場を構築する。
それでは最後に、沢木様が事業を通じて実現したい想いについてお聞かせください。

従業員エンゲージメントを上げたいと思う企業はとても多い一方、実際にどんな行動をするか、どんな効果が得られているか、というところまで自社単独で考えるのは、容易ではありません。
でも、働く人のライフスタイルを豊かにしたり、望まない離職を防いだりするには、欠かせない要素でもあるんですよね。
長時間労働や休日出勤の削減、テレワークや福利厚生の充実による「ワークライフバランス」はもちろんのこと、仕事と生活に関わる個人の価値観を高めていく「ワークライフバリュー」に目を向けることも必要になってくるのではないかと感じています。
実際に従業員のために行動してもらう後押しをすること、その上でリテンションマネジメント市場を作っていくことを念頭に、今後もさまざまな取り組みを進めて参ります。
編集後記
リテンションマネジメントを根底にしたサービス展開におけるCXについて、深い考えをお伺いできました。
付帯サービスをたくさんつけるのではなく、あえて絞ってシンプルにすること、分かりやすく使いやすいサービスによるCX施策には驚きを感じると同時に、顧客のことを考えた素晴らしい取り組みであると感じます。
沢木様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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