腕時計のサブスクリプションサービスKARITOKE。3年で顧客数10倍のCX(顧客体験)戦略

「KARITOKE」は、ユーザーが月額料金を支払いブランド腕時計をレンタルするサブスクリプションサービスです。高いプランほど会員数が多いという特徴から、アップセルやLTV向上のためのポイントを探ります。また、どのように顧客ニーズを分析し、CX(顧客体験)向上に取り組まれているかについてお伺いしました。
「KARITOKE」は、ユーザーが月額料金を支払いブランド腕時計をレンタルするサブスクリプションサービスです。
3年間でユーザー数が10倍に増加するなど、驚異的なスピードで成長しています。
さらに注目するべきポイントとして、プラン料金が高いほど利用者数も多くなっており、最も高価格のエグゼクティブプランの利用者が全体の4割以上を占めているとのこと。
高いプランほど会員数が多いという特徴から、アップセルやLTV向上のためのポイントを探ります。
また、「ブランド時計×サブスクリプションサービス」という革新的なビジネスにおいて、どのように顧客ニーズを分析し、CX向上に取り組まれているかについてお伺いしました。
インタビューイーについて

ななし株式会社 小川紀暁取締役
証券会社の投資銀行部門にて10年間従事したのち、クローバーラボ株式会社にジョイン。
同社よりスピンアウトする形で誕生した、ブランド腕時計レンタルサービス「KARITOKE」を運営する、ななし株式会社の取締役を務める。
まず、貴社のサービスの概要を教えてください。
「KARITOKE」は、ブランド腕時計のレンタルサービスです。
44ブランド1,100種類の腕時計を揃えており、各プラングレードに合わせたラインナップの中からお好きな腕時計を1本ご利用可能で、月に1回交換するこができます。
料金プランはカジュアルプラン(3,980円)スタンダードプラン(6,800円)プレミアムプラン(9,800円)エグゼクティブプラン(19,800円)となっており、それぞれ月額料金以外に追加料金はなく、返済期限もございません。
交換料金1,000円(税抜)をお支払いいただくことで、月2回目以降の交換も可能です。

サービス提供を開始した2017年6月時点での会員者数は2,000人ほどでしたが、現在では10倍以上の24,000人を超える方にご利用いただいており、順調に推移しております。
なぜ現在の取り組みを始められましたか?
当ななし株式会社は、クローバーラボ株式会社から「KARITOKE」とメンズファッションレンタルサービス「leeap」(グループ会社である株式会社キーザンキーザンが運営)がスピンアウトした形で立ち上がった会社です。
この「leeap」というサービスが、「KARITOKE」よりも1年ほど早くサービスを開始しており、それに関連した事業が何かないか、というアイディアを出していったのがきっかけですね。
※参考:クローバーラボ株式会社
:株式会社キーザンキーザン
「初期投資が数十万円単位でかかるモノ」を、「レンタルで提供することで安価に抑えてコスト競争力を持たせる」という発想で、女性向け高級バックや男性向け高級スーツなど様々な候補を出していきましたが、管理が煩雑であったり、既に他社が類似サービスを提供していたりというネックがありました。
それらを除外していった結果、小さいため場所も取らず管理しやすく、相場がはっきりしているため価格設定もわかりやすい腕時計に行き着いたという流れです。
腕時計市場は安定した規模を持っているにも関わらず、イニシャルコストがかかる上にメンテナンス費用も安くない、という課題を抱えていたという状況も後押しして、「ブランド腕時計に気軽に触れてもらうきっかけ」をサブスクサービスにすることで提供しようと考えました。

実際にお客様の声やご意見を聞いていると、「価格がネックとなって購入できなかったブランド時計を色々楽しむことができる」点に魅力を感じていただけているようですね。
「購入を検討している時計を、まずはお試しで使ってみたい」というケースも少なくありません。
またご利用価格が高ければ高いほど会員数も多くなっており、最もハイグレードなエグゼクティブプランが全体の42%ほどを占めています。
このことからも、元々腕時計に強い興味があり、ウブロやロレックスといった高級ブランドに対して憧れを持っているものの、購入までは至らなかった方が多いと分析できます。
このようなニーズをうまく捉えることができているのは、当サービスの強みの一つと言えそうですね。

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?
CXの向上に関しても、「腕時計と触れるきっかけ」を増やすことを念頭において取り組んでいます。
例えば、ネットでレンタル申込みに対応していることに加え、リアル店舗を出店してお客様との接点が多くなるように工夫しています。
サービス開始直後からマルイさんと連携してポップアップ店舗を出展してきたほか、2017年11月に有楽町マルイ、2018年4月になんばマルイ、2020年3月には新宿マルイ本館にて常設店「KARITOKE STORE」がオープンしました。
当然試着をして商品選びの参考にしていただくこともできますし、在庫がある商品をその場で受け取ったり、既にレンタル使用中の商品をその場で返却したりすることも可能なので、スピーディーな対応ができるという点でCX向上に役立っていると思います。
また、モバイル端末等と連携して、ARでご自宅にいながらご自分の腕に合わせていただくという試みも開始しています。

腕の太さや服装などと合わせることで、よりリアルな試着体験が可能になることで商品到着後のミスマッチが抑えられるのではないかと期待しています。
あとは、「時計を借りたい」というニーズを持つお客様が増えてきたのはありがたいことなのですが、商品調達が追いつかなくなるというケースも増えてきたことを受け、「KASHITOKE」というサービスの提供を開始しました。

※参考:https://karitoke.jp/kashitoke
レンタル商品として貸し出しいただいたお客様に対しては、ご利用料金の一部をキャッシュバックするサービスです。
元々時計好きの方が多いという傾向から、「所有しているもののあまり使用はしていないという時計」も多く、それらが活用できればより多くの方に腕時計と触れるチャンスを与えられると考えました。
さきほどのリアル店舗の方でも、お預かりをしています。
今後どのような取り組みをしていきたいですか?
サービス開始当初より、セキュリティーリスクの観点から、お客様1人につき、同時に1本のレンタルとしてきました。
こだわっていましたが、やはり時計が好きな方にとってはその日の服装や気分に合わせて腕時計を使い分けたいというニーズは持っていると思うので、つい先日に2本レンタルできる機能を実装しました。
さらに「もっと金額が高くていいので、もっと高級な商品を仕入れて欲しい」というお声も多くいただくようになってきました。
現状はエグゼクティブプランが最もハイグレードとなっていますが、今後はさらに上のプランも用意するかもしれません。

また、スマートウォッチへのニーズが年々高まっています。
「KARITOKE」においても、AppleWatchのお取り扱いを開始して以降、常に貸し出し中という状況が続いています。
今後もスマートウォッチに対するニーズはさらに高まると予想しているので、在庫本数を増やしていきたいと考えています。
また、iPhoneユーザー以外でも利用できるように、AppleWatch以外のスマートウォッチを仕入れていきたいです。
引き続きニーズをうまくキャッチして、より多くの方に腕時計を楽しんでもらえる、腕時計が好きな方にはもっと腕時計が好きになってもらえる、そんな環境を生み出せたらと思います。
「KARITOKE」は3年間でお客様の数が増えたことに加え、マルイの販売店に関わっている方、時計を専業で販売している企業さん、時計メーカーさんなど、お付き合いがかなり広まりつつあります。
コロナウィルスによる消費意欲の減少が、腕時計業界にどのように現れるかは未知数ですが、日頃関わっていただいているみなさまとともに業界全体を元気にしていきたいです。
編集後記
高級ブランド時計をサブスクモデルで安価に提供することで、顧客の物理的・心理的ハードルをダブルでクリアにできている点が、ビジネスとして非常に大きな強みだと感じました。
またコスト競争力を維持しながらも、リアル店舗でタイムリーな顧客対応を行える仕組みを持っている点もCX向上に効果を発揮していると思います。
どちらに関しても、顧客の潜在的なニーズを丁寧に分析して一つ一つ対応するというシンプルな施策が最も大きな効果を産むと改めて気付かされました。
エグゼクティブプランのさらにハイグレードなプラン、複数レンタルに対応するプランなど、今後の取り組みに注目していきたいです。
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