「自分らしい人生を食から実現する」食産業の変革を目指すMiLが届ける顧客体験

2019年4月、日本初のベビーフードのサブスクリプションサービスをスタートさせた株式会社MiL。
Meal、I、Lifeの頭文字をとっており、”食” “自分” ”人生”をテーマにしたサービス開発をしています。
今回は、株式会社MiLの主幹事業である「the kindest」の事業部長である築嶋宏宜さんにインタビューをしました。
「やさしさで、世界を変えていく」というメッセージの元、ヘルスケアとエシカルに配慮したサブスクリプションのベビーフードをはじめとしたフードブランドを展開するthe kindest。
どのようにサービスと顧客体験を作り込んでいるのでしょうか。
インタビュイーについて

株式会社MiL 執行役員 the kindest事業部長:築嶋宏宜さん
大学卒業とともに起業。3年事業を推進し、売却。その後、MiLの世界観と代表杉岡に惹かれジョイン。
事業の執行全般を担当。
やさしさで、世界を変えていく。

まず、貴社のサービスの概要を教えてください
MiLには二つのサービスがあります。
1つはヘルスケア創作レストラン「倭 西麻布」。
そして、もう1つがヘルスケアとエシカル消費に配慮したフードブランドである「the kindest(カインデスト)」。
倭 西麻布では約30年のキャリアをもつフレンチシェフが食材本来の味を生かす調理を手がけています。
立ち上げ当初クラウドファンディングを行い、当時日本6位のプロジェクトになりました。
the kindestでは離乳食である「the kindest babyfood」を中心に、乳幼児期の安心安全でヘルシーな食事を提供しています。
ベビーフードを始めた時は2019年 4月でしたが、当時日本で初めてのサブスクリプション型のベビーフードでした。
カインデストはどのようなブランドですか?

the kindestはヘルスケアとエシカル消費に配慮したフードブランドです。
エシカル消費とは、思想に応じた消費のことを指します。
例えば、地球環境を考慮したサスティナブルな商品であったり、宗教思想を反映させたハラル、コーシャの商品、動物愛護などの思想を持っている人はビーガンやベジタリア向けの商品などを好んで購買したりします。
日本ではヘルスケアとエシカルにフォーカスをしたEコマースはないので、私たちは次世代の消費のあり方に沿ってブランドの展開をしております。
元々はMi+ミタスというベビーフードブランドをやっていたのですが、2020年5月にthe kindestにリブランディングをしました。
なぜカインデストにリブランディングされたんですか?
Mi+ミタスというブランドは、ベビーフードというだけあり、赤ちゃん向けにクリエイティブやブランドを作ってしまっていたからです。
the kindestは、それよりもより全体的で包括的な概念を持っています。
「ユーザーの皆様によりwellbeingな生活を届けること」
「より持続可能な世の中を作ること」
この概念の下には、色々なこだわりや想いが詰まっています。
- 土壌を保全するオーガニックにこだわった商品を作ること
- 全国の生産者さんの良い商品をきちんとクローズアップすること
- より環境に優しい包材やボックスにこだわること
- 透明化を推し進めること
- 使うことで心と体にゆとりを持てる商品設計であること
などです。
そしてそれを世界的に推し進めたいと考えた時に、ブランドを転換する必要性が出てきました。
赤ちゃんとパパママの心も体も満たしたい
なぜベビーフードのサブスクリプションを始められましたか?

一言でいうと、子供が生まれた時から離乳期のママさんって激動なんですよね。
一人目の場合、全てが初めてのことですし、二人目であっても、大変なことに変わりはありません。
特に離乳期は大変です。
何が正解かわからない中、必死に正しい情報を探し出して、気が狂いそうなほど大変だけど、愛する我が子のためになんとか離乳食を作る。
だけど食べてくれない。何がいいのかわからない。どうしてなの。
こうして、こころに余裕をなくし、結果として赤ちゃんと、家族といる素晴らしい時間を十分に楽しめないことがよくあります。
こうした状況を解決しようと思って事業をやっております。
具体的には離乳期ごと、もっというとその子の成長にしたがって大きさや硬さが変わる商品をお届けさせていただいております。

なぜベビーフードから始めたかというと、一番習慣が変わりやすい転換点だからです。
その小さくも、一生懸命に生きる我が子のために、習慣を変える方が非常に多いです。
今まで健康とかヘルスケアに興味、関心がなかった人でも、子どものためにいいものを選択しようとするタイミングだと思っています。
親身に寄り添ったサービスを届ける
サービスを通してどのようなCXを届けようと考えていますか?

一言で言うと、期待値を超えることだと思っています。
UXやCXと言う言葉はすごく広範囲な言葉ですが、突き詰めるとコストパフォーマンスだと思っています。
コストは商品を手に入れるための、金銭的対価と時間、手間。
パフォーマンスは商品スペックはもちろん、ブランドやストーリーなどの情緒的な価値。
商品とは別のところにあるサービスの価値の総和だと思っています。
the kindestの商品は、市場に出ている商品と比べて価格にプレミアムがつく商品です。
だからこそ、ブランディングやクリエイティブ、ストーリーやその他のサービス全てをユーザーの求めるものにアジャストし、かつ期待値を超えるように日々体験づくりをブラッシュアップしております。
具体的に現在はどのような取り組みをされていますか?

基本的にカテゴリーのトップシェアの価格ラインから30%を上振れると価格の弾力性により、商品購買されずらくなります。
特にthe kindest babyfoodはかなりいい食材を使っていますし、調味料も添加物も全て使っていません。
また透明性の高い工場で安心安全位配慮して作っているので、価格は市場ラインの30%どころか4倍です。
こうなると、いかにファンになってくれる方を増やすかと言うことが重要になってきます。
商品自体であるコンテンツはもちろん、社会へのメッセージ性だったり、かわいいキャラクター、コンテンツ、パッケージ。
こういうものがまずユーザーを引き止めるひとつの大事なポイントになると考え、力を入れて作りました。
心理学のハロー効果で、ぱっと見で判断してもらえることを意識しています。
サービスであっても使いやすいUXやサービスになるように日々修正を加えています。
商品に関して言うと、品質向上のために、全ての工場の製造工程の一貫化やHACCP体制の構築。事故時の水平展開などに力を入れています。
またサービス面で言うと、オンラインショップの使い心地が非常に悪かったので、月間で100~200ほど改善点をあげ、修正を行なっています。
体験で特に重要なのが、大前提、赤ちゃんが食べるかどうかです。
さらに、いかにママが味見をして美味しいと感じるか。
赤ちゃんは、匂いがダメとか、初めてでびっくりして口から出すとか、いろんな要因で食べないことがあります。
アウトソースしてもらうためには、食べてもらわないとダメです。
だからこそ、アレンジレシピの開発や商品ラインナップの増加、そもそもの商品品質の向上に力を入れています。
また、個人にパーソナライズされるという商品の特徴なので、LINEで1件ずつ丁寧に対応し、お子さんに合う商品を配送することを徹底しています。
CXを考えるうえで大切にしていることはありますか?
これはUXやCXだけではないですが、優先順位が一番大切だと思っています。
我々には、時間や工数、お金を含めて有限なリソースしかありません。
いかにそれを配分するかが重要だと思っています。
特にUXやCXにはマイナスからゼロになるゾーン(ユーザビリティ)とマイナスからプラスになるとゾーンがあると考えています。
マイナスからゼロになるゾーンは、問い合わせしたのに問い合わせの返信が来ないとか、異物が入っていたとか、サービスとしてそもそも欠けている部分です。
ユーザビリティのない商品やサービスは、別のプラスのことをしたとしても、全く意味はありません。
「プラスに投資するよりも、まずマイナスを無くせよ。」とユーザーは思うわけです。
なので、このマイナスを消す作業に全力を注いでいます。
また、ゼロからプラスになるゾーンに関しては、短期では、相談サービスの拡充や、コンテンツの拡充、消費ラインアップの大幅な拡充に注力しています。
また中長期に関しては機能の抜本的な改善と開発に力を入れています。
美味しいものを食べていたら健康に

今後の展望についてお聞かせください。食の領域についての課題や注目していることはありますか?
注目していることは、個別化と多様化。そしてヘルスケア消費とエシカル消費の伸長です。
世の中の経済を支えているものは個人の欲望だと思っています。
前世紀は、ないものを一旦揃えることに重きが置かれていたと思います。
今世紀、人々の欲望はより多彩になってきているのではないでしょうか。
そうした個人の欲望が目に見える形で現れてきたのが、エシカル消費だと思っています。
私はこの流れが今後も強まっていくと思いますし、食の分野でそれを拡充させていくことがとても重要だとおもっています。
またヘルスケアの消費増大も今後の一大トレンドだと思っています。
“健康”というと青汁のような、ちょっと無理して摂取するものが広まり、一方で”食”は、添加物や調味料を使って美味しさに全振りする、ある種のエンタメ的要素が強くなっているのではないでしょうか。
時代は不可逆で、人間は一度手にした便益を決して離さないと思っています。
だからこそ、美味しさと健康を両立した食品を展開することが今後のフードブランドの使命ではないでしょうか。
編集後記
日本で初めてベビーフードのサブスクリプションを始めたMiLの築嶋様にお話を伺いました。
ベビーフードによるCXだけでなく、利用者となる母親が直面する問題についても一緒に解決を図るというプロダクトの枠を超えたコンテンツを用意していることが驚きでした。
顧客に寄り添うことでライフステージにあった商品を継続的に利用してもらえる、開発にリアルな声を取り入れられるのかもしれません。
今後も食を通してヘルスケアとエシカルに対する意識の変革を起こしていくでしょう。
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