ブランドバッグのサブスクリプションサービス「Laxus」スタートアップならではのCX(顧客体験)戦略

以前、インタビューを実施したOYO LIFE様からご紹介を受けたのはラクサス・テクノロジーズ株式会社。
*以前のOYO LIFE様のインタビューはこちら
ラクサス・テクノロジーズ株式会社は、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「Laxus」や、CtoCシェアリングサービス「Laxus X」を提供しています。会員数36万人と大規模サービスになり継続率も高く維持されているのが伺えます。今回は、重視するCXやニーズに合わせた顧客体験最適化などについて幅広く伺いました。
ラクサス・テクノロジーズ株式会社は、ブランドバッグのサブスクリプションサービス「Laxus」や、顧客自身が持っているバッグをシェアリングしてお小遣いを稼ぐことが出来るサービス「Laxus X」を提供している企業です。
会員数36万人と大規模サービスになり継続率も高く維持されているのが伺えます。
今回は、重視するCXやニーズに合わせた顧客体験最適化などについて幅広く伺いました。
インタビュイーのご説明
ラクサス・テクノロジーズ株式会社 CGO(Chief Global Officer/最高海外事業責任者) Kayさん
自身も洋服のシェアリングサービスをよく使っていて、取材時の服もお借りしたものだそうです。
ブランドバッグを身近に感じるきっかけに。
まず、貴社のサービスの概要や特徴について教えてください。

「Laxus」は、57ブランドのバッグが毎月6,800円の定額で使い放題になるという、ブランドバッグ使い放題サブスクリプションサービスです。
ありがたいことに、シェアサービスの利用率No.1、経済産業省による経産大臣賞最優秀賞を受賞するなど、市場から高い評価を得るサービスとして成長することができ、この度ダウンロード数は100万件、会員数は36万人を突破致しました。
また、「Laxus X」というC2Cシェアリングプラットフォームも展開しています。
Laxusにバッグを預けることによって簡単にお小遣い稼ぎができるサービスで、ユーザーにとっては大切なバッグが無料でメンテナンスされ、お小遣いも稼げるメリットがあり、他方、Laxusでシェアリングいただけるバッグを増やせるメリットがあります。
ブランドバッグを複数利用してファッションを楽しみたい人だけでなく、購入を躊躇している層に対しても、ブランドデザイナーの想いや作品を提供することができるのは、シェアリングサービスならではの特徴だと感じています。
今、ファッション業界の持続可能性が問われている。
なぜ現在の取り組みを始められたのでしょうか。
ファストファッションによる「安さ」の追求と、「大量生産、大量消費、大量廃棄」という市場サイクルに疑問を抱いたのがきっかけでした。
オーバープロダクションは、ブランドやメーカーによる在庫破棄や、消費者による安易な買い替えを招きます。
以前Burberryが売れ残りを大量廃棄していることが明らかになった際、フランスを中心に大きなバッシングが起こりました。
そのニュースも影響して、今はファッション業界全体にサステイナビリティが問われるようになっているんだと痛感しましたね。
Laxusは職人たちの作品を大切にメンテナンスしてシェアリングする、つまり、消費ではなく循環させるサービスです。
顧客がバッグを1つシェアすれば、燃やされるバッグが一つ減ります。
シェアリングサービスであれば、環境問題対策にもなり、生産者にとっても消費者にとってもメリットのある価値観を提供できると思っています。
安価に手に入るファストファッションが必ずしも悪いわけではありません。
ただし、モノを安く買いすぎることは時に技術の衰退に繋がります。
偉大なブランドデザイナーや技術者に敬意を払い、1つの品をメンテナンスしながら大切に使っていく、という方法があってもいいんじゃないか?という気持ちが根幹にありますね。
その気持ちが、Laxusというサービスにも表れています。
ファッションを楽しみながら、環境への貢献も。
それでは、当メディアの特徴であるCXについてお伺いします。現在CXを上げるためにどのような取り組みをされていますか?
弊社が提供できる最大のCXは、約4万点のブランドラインナップの中から使いたいものを自由に選択できるという、「選ぶ楽しみ」であると理解しています。
自分ではなかなか購入できない価格帯のブランド商品であっても気軽に手に取ることができ、季節、流行、自分の気分によって好きなだけ取り替えながら使えるというのは、ファッションを楽しむ上での需要なファクターだと思いますね。
そういったCXを高めるために、すべての分野においてスタートアップならではのスピード感は大切にしています。
弊社ではサービス展開に当たって、仕入れ、クリーニング、リペア、アプリ開発、デザイン制作など、配送以外の全てを内製化しています。
そのため、人気のバッグをバイヤーリストに反映させたり、ユーザーの希望をアプリに反映させたり、あらゆる分野でユーザーのCXニーズに答えやすく、スタートアップ企業ならではのスピード感を提供することができていると感じています。
また、Laxusのコミュニティ内で、ファッションやバッグが好きなユーザーが相互に投稿し、リアクションを送り合える機能を充実させています。
コーディネートを褒めてもらったり、他の人のファッションを参考にしたりすることでユーザー同士の交流が図れ、同時にLaxusとユーザーの結びつきも固めやすくなりました。
他にも、アプリ内のお気に入りボックスに追加でオリジナルのメモができる機能。預けた、コメントした、長く使った、たくさん交換した、という使用実績に応じてバッジを貯められるバッジコレクション…
など、楽しんでいただくための様々な取り組みが、日々増えるのでご説明しきれないです。(笑)
当初、「貸す/借りる」と目的としているLaxusは、「売る/買う」を目的としているファッションブランドからマイナスのイメージを抱かれないかという懸念もありましたが、Laxusを利用してブランドバッグの素晴らしさを体験したユーザーがそのブランドのファンになったり、後日実際に購入したりというケースが増えてきたことで、不安は解消されました。
- 「いろんなブランドを試したいけど価格がネック」
- 「いつもと違うブランドで冒険したいけど失敗が怖い」
- 「どんなブランドが自分に合っているか分からない」
Laxusはこのようなニーズを掘り起こし、ブランドと消費者の橋渡しをする効果もあると期待しています。
自分が今まで選択してこなかったようなジャンルのファッションを楽しんだり、憧れのブランド商品を手にできたりという体験は、シェアリングサービスならではですね。
海外へサービスを展開をして、シェアリングファッションの楽しさを世界へ広げたい。
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

今後はニューヨークを皮切りに、パリ、ロンドン、シンガポール、香港などへ海外展開を進めていきます。
以前ニューヨークでテストマーケティングを行った際、Laxusのサービスに対する反応がとてもよかったんです。
世界のシェアリングサービス市場の4割をアメリカが牽引しているというデータの通り、アメリカにおけるファッションシェアリング業界は非常に活性化しています。
私が海外プロジェクト担当だからということもあり、新たなチャンスに挑戦していきたいという気持ちが強いですね。
また、今後CXを更に上げるための取り組みもいくつか考えています。
Laxusで借りた商品を気に入っていただけた場合にそのまま買い取れるサービス。AIを利用して自分の好みにあった商品をリコメンドしてくれる機能。コンセプトが近い企業さんとのコラボキャンペーン、、、
やりたいことはいっぱいありますね。
ユーザーが楽しみながらファッションアイテムを選べるよう、より受け入れられるサービスとして成長させていきます。
「楽しい」と「サステイナブル」の両立をすれば、ファッション業界はもっと盛り上がる。
それでは最後に、Kayさんが事業を通じて実現したい想いについてお聞かせください。
「シェアするという愛し方」というサービスフレーズにもある通り、ブランドファッションをシェアすることによって、関わる方たちと一緒にサステイナブルな社会を作っていきたいという想いが強いです。
モノを所有する時代から共有する時代へ、消費する時代から循環する時代へと切り替えていくことで、「エシカルな消費」という考え方がより広がっていくと思います。
Laxusを使うことはエシカルな選択でサステイナブルな社会をつくるって、もっともっと認識してもらいたい。
まだまだ使えるのに焼却処分されてしまうバッグを1つでも多く減らしたいですね。
併せて、ファッションの楽しさについても追求していきたいです。
デザイナーの最高技術が詰まっている本物のブランドバッグを持つことは、それだけでとても楽しく、幸せな気持ちになれたりするんですよね。
そんな価値観を提供してくれるブランドヒストリーを継承しながら、自分に合ったファッションを模索していくことで、今まで以上にファッション業界は盛り上がっていくと思います。
リユース、リサイクルが社会に与えるポジティブな影響を、もっと後押ししていければと考えています。
編集後記
環境問題が叫ばれるようになって久しく、少しずつ「エコ」の概念が広がってきているものの、このままでは持続可能な社会の構築は厳しいという見方もされています。
シェアリングサービスは、地球環境、ブランド、消費者の3者に対してメリットがあり、テクノロジーの進化とリユースの共存ができる考え方だと感じました。
「とりあえず」の気持ちで適当に商品を選び、要らなくなったら捨てるという消費サイクルを一新し、商品が生まれるに至った背景やデザイナーの願いにまで想いを馳せながらファッションを楽しむことができれば、未来が明るくなっていきそうです。
Kayさん、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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