日本のコーヒー文化が持つCX(顧客体験)とは?コーヒー豆サブスクリプションを展開する「Kurasu」

「Kurasu Kyoto」は、サブスクリプションでのコーヒー豆販売やメイドインジャパンのコーヒー器具を展示販売する拠点として、海外の愛好家からも強い注目を集めています。177か国を相手に高い継続率を実現するため、どのようにCX(顧客体験)向上を図っているのか、創業者である大槻洋三さんにお話を伺いました。
「Kurasu Kyoto」は、サブスクリプションでのコーヒー豆販売やメイドインジャパンのコーヒー器具を展示販売する拠点として、海外の愛好家からも強い注目を集めています。
なかでも2015年に開始した、スペシャルティコーヒーのサブスクリプションサービスも海外から人気を集め、今や170ヵ国以上の地域から注文を受けるグローバルなサービスに成長。
177か国を相手に高い継続率を実現するため、どのように顧客との接点を創出し、CX(顧客体験)の向上を図っているのか、創業者である大槻洋三さんにお話を伺いました。
インタビューイーについて

Kurasu Kyoto代表 大槻洋三(おおつき ようぞう)さん
オーストラリアに滞在していた2013年、日本の家庭用品を販売するオンラインショップ「Kurasu」をスタート。
帰国後に実店舗である「Kurasu Kyoto」をオープンし、日本のコーヒー文化を日々世界に発信する。
Kurasu URL:https://jp.kurasu.kyoto/products/coffee-subscription
国内で焙煎したスペシャルティコーヒーを毎月お届けする定期販売を実施

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。
私共は、サービスの一つにコーヒーを毎月お届けする定期購買のサービスを提供しています。
「Kurasu」が提携している国内のロースターさんが焙煎したスペシャルティコーヒーをお届けしています。
日本国内の方はもちろん、海外の方にも「日本のこだわりと独自の喫茶文化が詰まった最高のコーヒー」を味わってもらいたいという思いがあるので、国内配送プランと海外配送プランをそれぞれご用意しています。
ただ豆をお送りするだけでなく、それぞれのロースターさんのこだわりや職人技をイメージできるようなストーリーを付けることで、より深くコーヒーを楽しんでいただけるように工夫しています。
ユーザーさんはどのような方が多いのでしょうか?
ユーザーのうち80%以上が海外の方で、東南アジア諸国からの注文が増えつつある状況です。
年齢は25~35歳ぐらいまでの若い方が多い傾向にあります。
日本では昔ながらの喫茶店に代表されるように、「コーヒー=一杯ずつハンドドリップで丁寧に煎れるもの」という印象が強いですが、実は海外ではハンドドリップコーヒーの歴史は長くありません。
比較的年齢層が低めなのは、こういった新しい文化をよく知る方からの注文が多いことも影響していそうです。
ユーザーの総数はおよそ500人ほどで、そのうちほとんどが長期間ご利用いただいている方で、1~2ヶ月で解約というケースは滅多にないですね。
特に海外配送となると送料もかかるためコーヒーとしては高価格帯になることもあり、本当にコーヒーが好きな方がしっかり検討された上で、利用を決断されているのではないかと感じております。
参考:https://jp.kurasu.kyoto/products/coffee-subscription
きっかけはオーストラリアで始めたオンラインストア
なぜ現在の事業を始められたのでしょうか?
前職はゴールドマンサックスでサラリーマンだったのですが、特別熱い気持ちがあって入社したわけではなく、また苦難を乗り越えた末勝ち取ったポジションということもありませんでした。
両親を含めて、芸術家やアーティストといった自分の個性や強みをフルに活かす職が多い家系に生まれたことも影響して、何となく「これでいいのかな」という思いがあり、退職を決断しました。
元々コーヒーは大好きだったのですが、辞めた直後も「コーヒー器具に関連するEC事業をやる」という明確な決意はまだ持っておらず、自分が本当にやりたいことは何かを考える時間が続きました。
そんな中、当時住んでいたオーストラリアでメイドインジャパンの家庭用品を販売するネットショップを立ち上げて運営を開始しました。
しばらく運営を続け、ユーザーとやりとりを繰り返していくうちに、日本の職人技の素晴らしさや、海外の方が日本製品に対して強い興味やニーズを持っていることに気付かされたんです。
特にコーヒー器具に関してはオーストラリアだけでなく、何回か他の国からも引き合いが来たこともあり、幼い頃からアメリカやカナダで住んでいた経験も、コーヒーが好きだという気持ちも、どちらも活かせるビジネスになるのではと思いコーヒー器具専門店に方針を定めたという流れです。

そこから日本に帰国し、世界中に向けてメイドインジャパンを発信するための準備を進めるうちに、日本のコーヒー文化や喫茶文化、コーヒーの焙煎をするロースターさんのこだわりなどに改めて触れました。
数キログラム、数百グラムという小ロットでも、各お店が一つ一つ拘って焙煎するという商習慣は世界でも類を見ないもので、素晴らしいこだわりと技術があるからこその文化だということを感じ、これも世界に広めることができればと思って、コーヒー豆のサブスクサービスの提供も開始しました。
「役立つ情報を発信すること」が共感を生み出す
それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?
繰り返しになりますが、当サービスは海外のユーザーが多いので、どうしても接触方法はインターネットやソーシャルメディアを介したものが中心になります。
具体的には、Instagramとメールマガジンの二つがメインですね。
Instagramはビジネスを開始した当初から、認知向上のために利用していました。
しかし当時は知名度もなく、また他に従業員がいる状態でもなかったので、私が撮影と投稿を繰り返して、どうすれば反応がよくなるかを試行錯誤していました。
そんな経緯からわかったことは、綺麗な写真を撮ることが重要なのではなく、「本当にためになる情報を提供すること」です。
例えば、コーヒーの美味しい煎れ方を検証し、豆は何グラムで、何秒の間蒸らして、という情報を発信し始めたところ、共感が生まれてフォロワーが増加し始めました。
またロースターさんのバックグラウンドやストーリーといった部分は、こだわりの強いコーヒー好きユーザーにとっては興味を引く内容になるので、その辺りも意識して発信しています。

ソーシャルメディアの大きなメリットは、一方的な発信に止まらず、対話ができるのでコミュニティやプラットフォームとしての役割を果たせるところですね。
この一年間で177ヵ国から注文をいただけたのは、間違いなくソーシャルメディアがあったからだと感じています。
これからも引き続き力を入れて取り組みます。
一方メルマガは、感覚的にソーシャルメディアより一段階ユーザーに踏み込んだコミュニケーションだと思うので、より濃い情報を提供するように心掛けています。
メルマガであればクリックやCVなどの計測もできるので、マーケティングツールとしても今後より一層活かしていければと考えています。
将来的には海外に出店を増やすことも考えています
今後どのような取り組みをしていきたいですか?

サブスクリプションサービスについて、ありがたいことにじわじわとユーザー数が増えていっています。
引き続きロースターさんとの連携をしっかり取りながら、顧客満足度を維持していきたいと考えています。
実店舗の方はいいパートナーさんが見つかれば、海外への出店を増やしていくたいと考えており、可能性を模索しています。
そして何より、日本のコーヒー文化の素晴らしさを、もっと海外の方にも知ってもらえるように架け橋として活躍できれば嬉しいです。
編集後記
インタビューを通じ、大槻さんが本当にコーヒーを愛し、またコーヒーにまつわる日本特有の古き良き文化を海外へ伝えたいというまっすぐな思いが伝わってきました。
SNSを通じて、ユーザーとの信頼関係構築を大事にすることで、170ヵ国にのぼる世界中の地域から高い評価を生み出しているのでしょう。
大槻様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
-
前の記事
業界の常識を覆した顧客体験とは?アップセルがCXの向上、継続率の改善につながる 2020.08.04
-
次の記事
「100万人に好かれるより100人に愛されるプロダクトを」OYA’sが思うCX向上のヒント 2020.08.05