素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。

小ロット生産で丁寧にこだわりの食品を製造するクラフト化の流れが加速しています。このような状況のもと、クラフトアイスクリームの開発・製造・販売を行っているのが株式会社HiOLIです。

今回は、その株式会社HiOLIの代表取締役社長兼CEOである西尾修平様に、クラフトアイスクリームを事業として起ち上げた経緯やCX向上に対する考え、今後の展開などをインタビューしました。

インタビューイーについて

株式会社HiOLI 代表取締役社長兼CEO:西尾修平 様。

1980年生まれ。

2003年に大手人材情報サービス企業に入社し、人材採用コンサルティングや子会社経営企画等を担当。その後、東証マザーズ上場IT企業の取締役等を経て、2016年に製菓のスタートアップ企業に参画。副社長・社長として新ブランドの立ち上げ、海外展開等を推進。

2018年8月、株式会社HiOLIを創業し、2019年4月、クラフトアイスクリームブランド「HiO ICE CREAM」を起ち上げる。

1つひとつの作業工程に適した最新テクノロジーの機械を使いつつ、手間がかかる繊細な作業は職人の手仕込みで仕上げたクラフトスイーツ

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。_サービス

株式会社HiOLIはクラフトスイーツカンパニーです。「次の世代につなげるものづくりをしていこう」という大きなビジョンのもと、東京・自由が丘の閑静な住宅街に小さな工房を構え、2019年4月からクラフトアイスクリームの「HiO ICE CREAM」をスタートしました。

2020年4月には、「HiO ICE CREAM」が大切にしている価値観を共にする姉妹ブランドとして、世界各地のこだわりのバターを使ったクラフトバタースイーツブランド「Butters」をスタートしています。

「HiO ICE CREAM」はメインの売り場としましては通販となっています。また、工房の一角には小さな販売所を設けていまして、週末のみの営業にとなりますがアイスクリームの店頭販売を行っています。

また、「Butters」については、新宿駅南口改札内や横浜高島屋(2020年12月11日オープン予定)に常設の店舗を構えています。

「HiO ICE CREAM」は、素材本来の良さを引き出したアイスクリームをお届けするために、日本各地から魅力あふれたより良い素材を探し求め、少量ずつ丁寧に心を込めて作っています。

量よりも質を優先しており、ひとつひとつの作業工程に適した最新テクノロジーの機械を使いつつ、手間がかかる繊細な作業は職人の手仕込みで仕上げていくことに価値を見いだしています。

また、「Butters」については、お菓子づくりに欠かせないバターを作る上で生まれる無脂肪乳などの副産物であるバターの仲間たち(脱脂乳やバターミルク)も大切に使用しています。このような試みにより、次の世代に向けて豊かな自然の恵みをつなげていきたいと考えています。

「クラフトアイスクリーム」とは、どんなアイスクリームでしょう?

今、食品の世界では、ビールやウイスキー、コーヒー、チョコレートなど、さまざまなジャンルでクラフト化の流れが起きています。

このクラフト文化は、大量生産に最適化したものづくりではなく、美味しさを最優先に小ロット生産で製造し、テクノロジーを活用して少しずつ量産させようとする動きだと考えています。

小ロット生産であれば、まとまった量の確保が困難な素材を使うことができますし、産地の特徴を最大限に活かしたプロダクトを作ることが可能になります。

自らが生産者のもとへ足を運び、自らの舌で感じ、選んだ素材を独自に仕入れ、自分たちの工房でアイスクリームを作る。このような流れはクラフトのものづくりの面白さであり、お客様にとっても特別な体験となると考えています。

子どもに胸を張れるものを作りたい

現在の取り組みを始められたきっかけを教えてください。

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。_農園

大きな理由としては、私自身、子どもの頃からアイスクリームが大好きだったことです。子どもの頃、私の父は忙しい人で会話できる時間が限られていました。そんな父と毎週末にアイスクリームを買いに行き、ワイワイしながら家族みんなで取り分けて食べる時間が至福のときだったのです。

その後、仕事をするようになってからは「現役引退した後は小さなお菓子屋でも開ければいいな」くらいに考えていたのですが、61歳の若さで父が亡くなってしまったことで「この先、どうなるのかわからない」という思いが湧き上がりました。それでクラフトアイスクリームブランドを起業するに至ったわけです。

「なぜクラフトアイスクリームなのか?」という問いに対しては、私自身に子どもができたことが理由かもしれません。子どもに胸を張れるものを作っていきたいと考えたとき、「生産背景がわかる、合成添加物などに頼らない、素材本来の良さを生かした商品を」という思いが湧き上がったのです。そこから、クラフトアイスクリームが生まれました。

スタッフを介して生産者の思い・背景をお客様にお伝えしていく

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようなCXを上げる取り組みをされていますか?

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。_アイスクリーム

正直言いまして、「売上げを上げるためにCXを改善させるべきだ」ということは考えていません。

アイスクリームであれば、作り上げたアイスクリームをお客様に美味しく召し上がっていただくために、素材本来の良さを生かし少ロット生産の強みを生かし一手間を惜しまずに作っていくこと。

生産者の思いに沿って、生産者や私たち加工者がどういったテーマでアイスクリームを作り上げているのかをお客様にお伝えしていくこと。

このような思いを大切にしています。それがCX向上につながっているのであれば、そういうことなのかもしれません。

「HiO ICE CREAM」の工房で働いているスタッフは、平日はアイスクリームの製造に携わっており土日は製造を行いながら併設の店舗で販売も行っています。そのため、「生産者からどういうフルーツが届いて、それをどのように下処理をして、アイスクリームにどう仕上げていったのか」という加工者としての背景や工程をお客様にお伝えすることができます。

また、「HiO ICE CREAM」で使われている食材の生産者については、私からスタッフ全体に対して「こういう農園と縁ができ、そこからフルーツを購入することになりました。この農園ではこのような手間をかけてフルーツを育てています」と詳細に伝えるようにしています。

例えば、ブドウであれば「こういう育て方をしているから、これだけパンパンに張ったブドウの粒になっています」、レモンであれば「こういう育て方をしているから、他の農園に比べて強い酸味があります」というように、「何故このフルーツがこのように育ったのか」という背景をスタッフ全員に伝えていますので、スタッフを介してお客様にお伝えしています。

このように私たちが作っているスイーツの背景をお客様にお伝えしていくことも、CX向上につながっているのではないでしょうか。

美味しいといわれるスイーツを、丁寧に、愚直に、作り続けていきたい

今後はどのような取り組みをしていきたいですか?

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。_商品

「HiO ICE CREAM」の具体的な展開ということで言いますと、健康志向の商品を扱うコンビニエンスストア「ナチュラルローソン」などにおいて販売を開始しています。私たちと価値観が合致する流通チャネルとパートナーシップを組むようにしており、商品をお届けできる幅を広げるようにしています。

ただ、私たちが目指しているのは短期的な成長というよりは「次の世代につなげるものづくりをしていく」こと。それが何よりも大事にしている価値観です。そこで、今後も急拡大や急成長に軸足を置くのではなく、美味しいと言われるスイーツを丁寧に愚直に作り続けお客様に届けていこうと考えています。

このような試みを行っていくことで結果的に届けられる幅が広がり、少しずつ私たちのスイーツを楽しんでいただけるお客様の数が少しずつでも増えていったらうれしいと思っています。

私たちが目指すのは「中量生産/中量消費」という新たな価値観

それでは最後に、西尾様がHiOLIの事業を通じて実現したい想いを、お聞かせください。

素材本来の良さを生かし一手間を惜しまないこと。それが結果的にCX向上につながる。_生産者

私たちが広げていきたい大きなテーマは、選択肢の豊さという意味合いにおける「クラフト」という価値観です。

世の中には、街に根ざしてストイックにものづくりをされている個人店がある一方、高品質な製品を安く広く提供していく大手企業もあります。

私たちはそのどちらでもない第三極として、より素材と製法に集中しながら丁寧なものづくりを行う少量生産を複数重ねて中量生産化していきたいと思っています。これが、私たちが目指している「中量生産/中量消費」の形です。少量生産を束ねた中量生産化が私たちの大きなテーマになりますし、クラフト文化がより豊かになっていくのではないでしょうか。

私たちはスイーツをクラフト化していますが、クラフト製品にはさまざまなものがありますので、クラフトの輪がさらに広がっていけばと考えています。クラフト文化が世の中に浸透していけば選択肢も増えていくことになります。そうなることで、金銭的な生活の豊かさではない、「自分の好きなものを選べる」「自分の価値観と合う」という「選べる豊かさ」を広げていけるのではないかと思っています。

編集後記

クラフトスイーツの開発・製造・販売を手がける株式会社HiOLI代表取締役社長兼CEOの西尾様にお話しを伺いました。

HiOLIではあえてCX向上を目指すような取り組みはしていません。しかし、素材本来の良さを生かし一手間を惜しまずにアイスクリームを作っていくこと。生産者の思いに沿って、生産者や私たち加工者がどういったテーマでアイスクリームを作り上げているのかをお客様にお伝えしていくこと。これらが結果的にCX向上につながっていると感じさせてくれました。

西尾様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

 

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