サブスクリプションで始めるアートのある暮らし。絵画レンタルサービス「Casie」のCX(顧客体験)
株式会社Casieは、サブスクリプション型定額制絵画レンタルサービス「Casie」を提供している企業です。
「Casie」は「家族ととことん楽しむ暮らし」を届けるをビジョンに、現代アートをお手頃価格で楽しめるという他に類を見ないサービスになります。
今回は、同社CXO(Chief Experience Officer)の河野晃大さんに、「Casie」が誕生したきっかけやCX向上に向けての取り組みなどを伺いました。
インタビューイーについて
株式会社Casie CXO 河野晃大 様
株式会社Casieの代表取締役社長CEOである藤本翔さんの部下として、コンサルティングファームで働いた後、2019年に株式会社Casieへと転職を果たす。
現職では、CXO(Chief Experience Officer)として同社事業に対する体験や世界観を世の中に向けて発信する役割を担う。
現代アートをお手頃価格で楽しめるサブスクリプションサービス「Casie」
まず、貴社のサービスの概要や特徴を教えてください。
「Casie」は、現代アート(絵画)を気軽に楽しめるサブスクリプションサービスです。
ハードルが高いと思われがちなアートを身近な存在として多くの人に楽しんでもらえるよう、一点物の「本物の絵画」をお手頃価格でレンタルすることができます。
「Casie」には現時点で7000点以上の作品が登録されているので、季節や気分に合わせて自由に絵を交換していただけます。
当サービスユーザーのほとんどは、絵を飾る生活に憧れてはいたものの、実際に絵を購入したことがなかったアートビギナーの方です。
「Casie」なら、月額1,980円からという安価でサービス利用できますし、飽きたら交換もできるのでハードルが低いの特徴です。
ユーザーの皆さんは資産という意味のアートではなく、家に飾るインテリアのアートという意味で楽しまれています。
また、レンタルした作品とともに、アーティストのストーリーが書かれた読み物を届けていますので、少しずつアートへの関心を高めてもらおうという狙いもあります。
アートのサブスクリプションサービスとは珍しいですね。
絵画のレンタルサービスを行っている業者さんは他にもありますが、法人需要向けがほとんどです。
弊社のように、一般消費者に向けてアートをサブスクリプションで提供しているという業者となると、競合はないサービスだと言えるかと思います。
「富裕層だけのもの」と考えられていたアートを手が届くものへ
なぜ現在の取り組みを始められたのでしょうか?
弊社代表の藤本が結婚して新生活を始めたとき、自宅に「絵を飾ろう」と思いギャラリーや百貨店や個展に足を運んだときのことです。
藤本は飽き性でインテリアの模様替えも頻繁にするので「同じ1つの絵を部屋に飾り続けるのはなんか違う」「かといって絵を捨てるわけにいかないし…」と悩んでいたそうです。
そんなとき、「さまざまな絵を飾ることができ気に入った作品があれば購入できるサービスがあったら」と考えたのです。
そこから生まれたのが「Casie」です。
また、藤本の父は画家を長いこと続けていました。しかし自分の描きたい絵で生計を立てることが難しく、受託した仕事を受けていました。
このように、子供の頃から“アーティストとして生きていくことの難しさ”を感じていたこともCasieの創業に少なからず影響しています。
日本では一般的に「アートとは手の届かない存在」だと思われがちですが、心の中では求められていると思います。
例えば、文部科学省の統計から見ると、美術館の年間来場者数はプロ野球のセリーグ、パリーグの年間来場者数を合わせた2.4倍(2017年)もの人数になっています。
アートに対しての興味や関心は高いのですがアート市場規模は他の先進国と比較しても極めて低く、「アートは手が届かないもの」という先入観が強くあります。
「日本には富裕層が少ないから」「居住空間が狭いから絵画を飾れない」という理由は日本人が勝手に抱いているだけで、本当はそれには当たらないのではないでしょうか。
美術館への来場者数を見ている限り、日本ではこれからアート市場が伸びると思っています。
「アートを自宅に迎え入れよう」という気持ちになっていただくための診断コンテンツを提供
それでは、当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。現在どのようにCXを上げる取り組みをされていますか?
アートビギナーの方にとって、アートは少し遠い存在です。そこでまずは、アートともっと仲良くなってもらうことが必要だと考えています。
いきなりアートを見せて提案するのではなく、まずは診断コンテンツという形で楽しみながらアートと触れ合ってもらい、最終的に「家の中にアートを迎え入れたい」と言う気持ちになって頂ければと思っています。
アートを自宅に飾ったことがないユーザーさんが初めてアートを飾るとなったとき、どんな絵を選べばいいのか。自分の部屋にはどんなアートが合うのか。このような悩みを抱えることがほとんどです。
この課題を解消するべく、1分でできる簡単な診断を行ってもらうことでユーザーさんの傾向や性質を把握し、好みのアートをご提案させていただいています。
今後はさらに診断の精度を高めることで、よりパーソナライズ化したご提案ができるようなコンテンツの開発をしていこうと考えています。
初めてアートのレンタルサービスを利用されたユーザーの反応を教えてください。
「こんなサービスがあるとは知らなかった!」という反応が一番多いです。
その次に続くのが、「アートというと私には関係ないと思っていた」「『アートは高い』というイメージがあったのに、こんなに安いとは」という反応です。
日本では一般的に「ZOZO社長の前澤友作さんがバスキアを購入した」というニュースに代表されるように、富裕層や有名人が買うものとイメージが強くあります。
「一般家庭とは縁の遠い存在が身近になるなんて」と驚きをもって迎えられたのですね。
これらの声は、カスタマーサポートが電話をして吸い上げたものです。
アンケートフォームに意見を書き込んでもらうよりも、人が直接聞いたほうが本音を話してくれるということがわかりました。
そこで絵画を注文していただいたお客様に対しては、絵画発送時に電話でお知らせをするのと同時に、生の声を聞くようにしています。
「『家族ととことん楽しむ暮らし』を届ける」ために提供サービスの幅を広げていきたい。
今後どのような取り組みをしていきたいですか?
まずは、今のサービスをしっかりとグロースさせたいです。
アートが人々の生活に身近な存在となるようなサービスを提供していくことで、人々の心の充足につながっていけばと思っています。
既に行った取り組みですが、コロナ禍で小中学校の夏休みが短くなり外出もあまりできなくなった中で弊社でもなにかできないかと考え、「Casieキッズアートコンテスト」を開催しました。
参考:https://note.com/casie/n/ne8457613f8e9
子供たちを対象にInstagram上で開催したコンテストですが、何もできなくなっていた夏休み期間中に1つのイベントとしてお届けすることができたと思います。
子供たちが描く絵というのは基本的にお母さんやお父さんが投稿されていますので、親子で楽しめるイベントになったかなと自負しています。
今後は、当社のビジョンである「『家族ととことん楽しむ暮らし』を届ける」に沿って、提供サービスの幅を広げていきたいと思います。
すべての家族に対して、アートをきっかけとした様々な価値を提供していきたい。
それでは最後に、「Casie」を通じて実現したい想いを、お聞かせください。
以前は「アートをもっと民主化していこう」ということを前面に押し出していたのですが、民主化した先を思ったとき、人々のベースとなる拠点である家族のことを考えました。
家族と過ごす空間が豊かになれば「すべてが豊かになるのではないか」「すさんだ心からも抜け出られるのではないか」と考えたわけです。
そこから、「『家族ととことん楽しむ暮らし』を届ける」というビジョンに至ったわけです。
自宅にアートがあることで、家族の中でも会話が増えることを期待しています。
例えば、弊社のユーザーさんに「サッカーの部活に没頭している中高生の息子さんが2人いる」というお母さんがいらっしゃいます。
その2人の息子さんはこれまで、朝早くから部活に行き疲れて帰ってきたらご飯を食べてお風呂に入って寝るという殆ど親子の会話がない生活を送っていました。
しかしレンタルし飾っている絵をきっかけにアートについての会話が始まるようになり、現在では息子さんのほうから「来月は僕の好みで絵を選びたい」と言ってくるほどになったといいます。
小さな子供さんでも絵であれば楽しめますし、子供たちが巣立った年配の夫婦でも月替わりで絵を楽しむなど、世代を超えて楽しめるのがアートだと思っています。
そこで、「家族で楽しめるツール」としてアートは最適なのではないでしょうか。
小さな子供から年配の方まで、幅広い家族に対して、アートをきっかけとして様々な価値を提供していきたいと思っています。
編集後記
日本人にとっては手の届かないと思われたいた存在であったアートを身近なものにする「Casie」。
モノ余りの時代だと言われる現代。心を充足できるコトはまだまだ少ないのですが、音楽や映画などと同様に、アートは人々の心を充足させるツールの1つになると思います。
「Casie」では、新規利用者のみ全プラン初月500円で利用できるキャンペーンも行っています。
一度、自宅にアートがある生活を体験してみるのも良いのではないでしょうか。
河野様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。
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