カスタマーサクセスの挑戦!継続率を4倍に向上させたバルクオムの顧客体験とは?

カスタマーサクセスの挑戦!継続率を4倍に向上させたバルクオムの顧客体験とは?

2017年に創業した株式会社バルクオムは、野口卓也氏が2013年に事業開始したメンズスキンケアブランド【BULK HOMME】を運営。

「世界のメンズビューティをアップデートする」をビジョンに掲げ、メンズスキンケアのベーシックを確立するべく、男性にとって必要な機能性や、驚き、感動を与えることが出来るプロダクトを生み出しています。

インタビューイーについて

株式会社バルクオム
Domestic SBU/Customer Success Division
上本 隆太氏

業務パートナーのコールセンターのマネジメント及びコール品質向上を担う。

2020年、オペレータのリソースを必要としない定型的問い合わせを自動化させ、オペレータ稼働の9割以上を解約電話対応に集中させることで、解約希望顧客の「真のニーズ」を引き出し、継続率を4倍に向上させる取り組みを実践。オペレータの教育期間短縮やトークスキル向上にも貢献した。

男性のライフルタイルに新しい価値を届けるために

まず、貴社のサービスの概要を教えてください。

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株式会社バルクオムは「世界のメンズビューティをアップデートする」というビジョンを掲げ、「グローバルNo.1ブランドをつくる」ことをミッションに、メンズスキンケアブランド【BULK HOMME】を展開しています。

【BULK HOMME】では「THE BASIC MEN’S SKINCARE」をブランドコンセプトに、化粧水、洗顔料、乳液といったフェイスケア製品から、ボディケア、ヘアケア製品まで、高品質な製品づくりを強みとしています。

主なお客様は、スキンケアリテラシーの高い20~30代前半の男性が中心です。10~20年後に歳を重ねても理想的な自分でいたいという背景からスキンケアを始める方も多く、2020年には、同性からも支持の高い40代の有名俳優を起用したテレビCMを放映しました。販売チャネルは、自社ECサイトでの定期購入をはじめ、Amazon・楽天・Yahoo!などECモールでのオンライン販売を中心に、バラエティショップ・ヘアサロンなどのオフラインでも販売しています。

世界シェアNo.1獲得を目指して生まれたメンズコスメブランド

なぜ現在の取り組みを始められましたか?

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メンズコスメ業界では、これまで単独ブランドとして展開するものは少なく、多くは「レディスコスメが展開するメンズライン」という位置づけでした。そこで創業者が着目したのが「メンズコスメ売上シェア世界一を目指す独自路線のブランド」です。創業当時からメンズ化粧品の市場が少しずつ拡大していたこともあり、2013年にECサイトを開設しました。

2015年のサブスク参入当時は、サブスク業界においてもレディスコスメが主流でした。そんな市場を目の前にしながらも、創業者は「継続して定期購入いただける可能性」を感じていたと言います。なぜなら、男性は基本的に一つのブランドを使い続け、他社ブランドへの乗り換えも少ない傾向があるためです。そして、2017年に現在のビジネスモデルが出来上がりました。

「より良いブランド体験」を提供し、ロイヤリティを高めるために

それでは当メディアの特徴であるCXに関してお伺いします。カスタマ―サクセス部門では、どのような課題がありましたか?

コールセンターには様々な問い合わせが寄せられます。その内訳は、全体の約70%が解約、約20%がプラン変更や配送サイクル変更、約10%が肌に関する悩みや使用感に関する相談です。コスメはお届け期間の変更が頻繁に起こります。なぜなら、しっかりケアする時期もあればそうでない時期もあり、コスメの減り方は常に一定ではないためです。

そこで、配送日や配送サイクル変更をAIによる自動応答にできれば、24時間365日、お客様のご要望にお答えできるようになるのでは?コールセンターでは解約を検討中のお客様とじっくりコミュニケーションを取ることに集中できないものか?と考えていました。

このように課題感はビフォアーコロナから持っており、FAQやマイページなどによる「セルフサービス強化」を進めていました。これにより、各種事務手続きのほとんどは、お客様自身による自己解決ができる仕組みを整えることができたと見ていました。

そんな中、2020年4月、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が発出されると、巣ごもり需要の影響もあり、コールセンターへの入電数が急激に増加。実際には「マイページへのアクセスがわかりにくい」「電話の方が早い」など、様々な理由で電話での問い合わせを選ぶお客様が多かったのです。

どのようなCXを上げる取り組みをされましたか?

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当初はWEBサイトでチャットボットが接客した後に、コールセンターで人が対応することを検討していました。しかし、これを実行するにはWEBサイト運営の仕組みから見直す必要がありました。

WEBサイトはブランディングやマーケティングなど、組織横断型で運営しています。潜在顧客も対象とした様々な戦略の集合体であるため、カスタマーサポート視点でのスピード感をもった改革は難しい状況でした。

そこで、入電を減らすインターフェースは「電話ではないか」という仮説を立て「音声を認識してAIで対応する仕組み」の導入に向けて動き出しました。

【BULK HOMME】のお客様は、20~30代の男性が中心で、世界を代表する大手ECサイトでの体験に慣れています。つまり「24時間自分の好きなタイミングで、各種事務手続きができる」という体験は当たり前になりつつあることを前提に、CX向上に向けた取り組みに着手しました。

具体的な取り組みとしては、問い合わせの30%を占めていた配送日変更などの事務手続きを自動化し、マイページ上で自己解決できるものはページへ誘導。配送日変更の変更手続きはAIオペレータに、解約相談とその他を人が対応にすることで、オペレータは解約を検討している顧客の対応に集中できるように改善。同時にLINEの有人チャットも導入しました。

結果、お客様による自己解決型手続きが進み、全体の入電数は減少し、入電数の90%が解約相談になりました。解約についても、仕組みとしてはオンラインで簡潔させることも可能ですが、お客様のご要望や解約理由に耳を傾けることこそが重要だと考え、解約時にはオペレータが電話でじっくりお話をお伺いするようにしています。

「継続率4倍」は、ブランドとお客様とのつながりが現れた数字

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以前は、あらゆるお問い合わせへの対応力が求められる環境であったため、「どんなお問い合わせにも対応できるオペレータ」が必要でした。音声AIを入れることで、解約に関する電話が90%を超え、オペレータに求めるものも「解約を検討されているお客様の要望にどれだけ寄り添えるか」という1本に絞ることができるようになりました。さらに継続率も4倍に。これはオペレータが解約の電話に集中し、お客様のお悩みを充分聞くことでお悩みを解消し、継続利用につながったもの、つまり「ブランドとお客様とのつながりが現れた数字」ではないかと見ています。

私たちは常に「お客様の体験をいかにストレスないものにするか」をベース一つ一つの取り組みを考えています。例えば、コールセンターの男女比は一般的に女性が多いようですが、バルクオムの男女比は4:6です。

【BULK HOMME】のファンやメンズコスメの知識が豊富なオペレータをはじめ、ユーザーの同性・同世代も採用するなど、お客様に寄り添える体制をつくっています。

顧客満足度を高めていくために、AIと人の役割をうまく融合させる

今後どのような取り組みをしていきたいですか?

自社の基幹システムとしっかり連携させたうえで自動化範囲を広げ、24時間365日、いつでもどこでもストレスなく「リアルタイムでお客様の時間を取らずに希望を叶える体制」に向けた取り組みを進めたいと考えています。

私自身、音声AIの導入よって世界が変わりました。しかしまだ課題も残っています。現在は、自動化できていない部分もあるのです。

例えば、お客様のマイページへの反映は最後の工程で人が対応しているため、1営業日のタイムラグが起こる状態です。これをリアルタイムにできれば、さらに顧客体験は向上するのではないでしょうか。

AIと人の役割をうまく融合することによって、今後は解約受付に関しても、24時間365日対応にできるかもしれません。

【BULK HOMME】でのさらなるCX向上に向けて、今後もAIをうまく取り入れていくことが重要だと捉えています。

家族や恋人のような親密さとあたたかさで、きめ細やかに応対する

それでは最後に、上本様のカスタマ―サクセスを通じて実現したい想いを、お聞かせください。

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【BULK HOMME】はECサイトや店頭などお客様と様々な接点を持っています。その中でもコールセンターは、お客様と初めてしっかりとコミュニケーションする場でもあります。コールセンターの対応次第でブランドへの印象は大きく変わり、ブランド体験を決定づけるものになると考えています。声のトーン、コミュニケーションといった一つ一つの体験が【BULK HOMME】のブランド体験になります。

お客様がどのようなお困りごとに直面し、何を目的にお問い合わせくださったのかを知ることは、私たちカスタマ―サポートにとって最も重要なことです。日々の業務で精一杯になってしまうと、本当は何を求めてコールセンターにお問い合わせくださったのかという「真の課題」には辿り着けません。

私たちは「家族や恋人のような親密さとあたたかさで、きめ細やかに応対する」ことを目指しています。「これは大切な家族や友人にも自信をもって届けられるだろうか」という視点で考えることで、顧客体験のヒントやアイデアはどんどん出てきます。

サブスクを続けていると「やめようかな」となるときは必ず来るでしょう。一度ストップしたあとも、また再開したくなるような顧客体験を届け、お客様と長いお付き合いができれば嬉しいですね。

編集後記

オンラインだけで解約を完結できる仕組みをあえて使わず、お客様のご要望や解約の理由を直接お伺いするため、解約時こそオペレータが電話でじっくりお話を聞くというバルクオム。そこで得られたリアルな声を、製品開発やプロモーションにもつなげる。バルクオムのコールセンターは、マーケティング活動における、CRMの重要なポジションとなっています。

今後も、バルクオムの顧客体験から目が離せません。

上本様、お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。

 

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